2012年01月13日

配当利回りが目安(エグゼクティブディーリング)

株式投資も基本的には、あくまで「配当利回り」が目安になります。エグゼクティブディーリングによると、PERは株価がその会社の「株当たり利益」の何倍になっているかを示す指標だ。

当然、高倍率になると配当利回りが低下する。

PERは配当性向(配当と利益の比率)を、利回りで割った比率に等しいからである。

どんな株でも買えば値上がりしたバブル時では、PERも配当利回りも無視された。エグゼクティブディーリングによると、キャピタルゲインが、予想以上に増大していけば、利回りなんか問題ではない。

ところが株価が右肩下がりになれば、キャピタルゲインはマイナスになっていく。

となると、着実な配当利回りで買える水準まで下がなければ、投資する意味がない。

もちろん株価は、配当利回りの高さだけで形成されるものではない。

今期は高配当でも来期に無配転落となれば、利回りはゼロになる。

株価を決めるのは、その会社の業績予想次第である。

成長性の高い企業のPERが、高い倍率になるのは妥当だが、現在のPERの高さは異常である。

今後、業績不振で巨額の赤字決算となり、無配に転じる企業が続出する傾向にある時、PERを無視した株価形成は、まだバブルのスタイルが残っていることになる。

現在、株の平均利回りは1%前後で推移している。

定期預金の金利に比べたら、何倍も有利な投資水準のはずである。

しかし、個人マネーは株に向かってはいない。エグゼクティブディーリングによると、先安予想であれば、投資元本が目減りすリスクが高いからだ。

配当利回りが安定し、値下がりの心配がなくなる水準が、1万2000円台だと予想するわけだが、それが実現する時期は来春以降になると見ている。

というのは、NY市場の暴落に東証も連動するからだ。

ダウ平均の下落幅によっては、最悪1万円台を割り込むかもしれない。

そうなるとパニックだが、バブルの本当の清算はパニックでもないと、きれいさっぱりには、できないだろう。

この時が「大底」となる。

そうなればPERも妥当なレベルに落ち着き、配当利回りからも買い余地が出てくる。

何事もそうだが、先行き見通しの悪い状態から立ち直るには、どん底のどん底まで行かないと、明るい見通しも立たないのではなかろうか。
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2011年11月24日

ルールであれば徹底して守る(エグゼクティブディーリング)

それなら問題はありません。エグゼクティブディーリングによると、ゴルフでOBを打ったら、打った地点で打ち直しです。

ボールのあるところへ行ってみて、OBかどうか微妙なところにボールがあるとき、人知れず足で蹴ってボールを内側に入れる人がいて、そういう人がニギリで稼ぐ、世の中にはそういう人が存在します。

守り切らせるルールがあって、守り切れる人が参加してのゲームや相場であれば問題はありません。

もともと、マナーを守れる人ばかりで行なえば、細かいルールなど必要ないはずです。エグゼクティブディーリングによると、徹底的に守る仕組みを持たないルールを作ることが、問題なのかもしれません。

現在は、ルールが形骸化しています。

現実の社会で、生きたルールになっていません。

とくに商品先物市場における日本でのルールは、国際社会のそれとは明らかに異質になっています。エグゼクティブディーリングによると、その第一は、顧客と取引員とが結ぶ契約の中身です。

アメリカの場合、契約はすべて双務契約です。

日本の場合、言葉としては委託者の自己責任の文字があるのですが、実質的には、業者(取引員)サイドだけが守る義務ばかりです。

片務契約なのです。

行政指導もその方向で行なわれています。

第二は、限りなくインサイダー取引に近いと思われる取引の問題です。

アメリカでは、インサイダー取引は厳しく糾弾されます。

業界のマスコミが、逐一取り上げて問題化します。

日本の業界紙・誌は、インサイダー取引関連の情報をほとんどといっていいほど取り上げません。エグゼクティブディーリングによると、それを取り上げると、メシのタネを失う恐れがあるからです。

第三に、ルールの問い直しが行なわれる手続きに関する問題があります。

日本ではルールの改正というときは、行政サイドと業者サイドの意見が中心になります。

行政と業者との対立の図式もみられません。

行政に擦り寄っている業者が多いからです。

ルールの見直しには第三者の意見も徴する形になっていますが、第三者の意見がメインになることはないといっていいほどです。エグゼクティブディーリングによると、第三者の選任は、行政と業者が行なうからです。

巷の声は、あくまで声なき声で終わってしまいます。



株式会社企画海


株式会社企画海


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2011年10月20日

緒方洸貴「動詞は、名詞との相性を考えて選邸」

日本語を覚えたばかりの外国人が、名詞にかたっぱしから「〜する」をつけて、動詞がわりに使っているのを、よく耳にする。

「お茶しますか?」「ご飯しますか?」などという表現だ。

最近では、日本の若者まで、日本語を覚えたての外国人のような言葉づかいをしている。

日本語には、動詞がたくさんあるにもかかわらず、である。

たとえば、「お茶する」には抵抗のある人でも、「将棋をする」「碁をする」などは、さほどおかしいとは思っていないかもしれない。

しかし、きちんとした日本語で表現するなら、「将棋」は「指す」ものだし、「碁」は「打つ」ものなのである。

同様に「弱音」は「言う」ものではなく、「吐く」ものだし、「グチ」も「言う」ものではなく、「こぼす」ものである。

このように、名詞によっては、つく動詞が決まっているものが、日本語ではいくらでもある。

私は、これを「名詞と動詞との相性」と呼んでいる。

この相性を考えずに、いつも「する」とか「言う」ですませたり、おかしな組み合わせをしていると、意味は通じるかもしれないが、その稚拙さから、教養のほどを疑われるだけだろう。

緒方洸貴(ライター)
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2011年10月05日

webライティング式プランを立てる場合

備忘用とwebライティング式ドキュメント添付写真のために・小型カメラとフィルムが必要。

最近の風俗画家は、スケッチブックの代わりに小型カメラを抱えて街に出るのがあたりまえになっている。

店構えや人の流れなどは、写真に撮っておいたほうが、あとで再現しやすいからである。

webライティング式プランを立てる場合でも同じことがいえる。

そのときは単なる取材の備忘用であっても、あとになってwebライティング式ドキュメントに添えたりすることがあるからである。

取材用のカメラとしては、@コンパクトで軽量、A操作が簡単、Bどんな場所でも撮影できる、そしてC接写も可能、この四つの条件を満足させるものなら何でもいい。

メーカーもメモ代わりに使うということを重視しているので、選ぶには事欠かないはずだ。

プロのように使うわけではないのだから、三五ミリ・フィルム使用の自動露出、ストロボ内蔵、ピント合わせはファインダーでのぞく方式の、俗にいう"全自動式"のものがまちがいない。

ただし、小型軽量ではあっても、いわゆるインスタマチック・カメラは、資料複写が困難なこと、さらにフィルムが特殊だから、場所によっては入手しにくいといった点で、取材用には向かない。

その点、三五ミリのコンパクト・カメラは、接写リングなしでも、週刊誌の見開きサイズ程度まで接写が可能であるし、最近ではハーフサイズの小型カメラとほとんど同じ大きさのものまで出ている。

取材には、この一台があれば十分用が足せるだろう。

次にフィルムだが、取材用なら、ネガ・タイプよりポジ・タイプ(リバーサル・フィルム)のものを使ったほうがいい。

その利点は、@再現性が高いこと、A整理・保管が楽、B現像料が安い、Cプリント起こしが必要に応じて容易にできること、などである。

webライティング式プランづくりにはこんな「用具類」が役に立つ。

それに、資料複写などした場合、スライド映写によって細部まで拡大して見ることができる。

また、ポジタイプのフィルムなち、プレゼンテーションに使うこともできる。
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2011年08月29日

協議会

地方自治体の事務の共同処理方式の一つで、地方自治体の事務の一部または機関委任事務の一部を共同して処理するために設けられる。

@事務の一部を共同して管理執行するための協議会、A事務の管理執行について連絡調整を図るための協議会、B広域にわたる総合的な計画を共同して作成するための協議会の三種がある。webライティングによると、協議会には、組合の場合と異なり、法人格が与えられていないので、@の協議会が関係地方自治体またはその執行機関各々においてした事務の管理執行は、それぞれの関係地方自治体の執行機関がしたものとして効力を有する。webライティングでは、Bの協議会が計画を作成したときは、関係地方自治体またはその執行機関は、当該計画にもとついて、その事務を処理しまたはその権限に属する事務を管理執行するようにしなければならないとされている。
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2011年07月18日

米議会の歳出委員会(河成鎮之)

米上院最長、更新 バード議員、在職1万7327日 9期目挑戦へ

河成鎮之 2006/06/14

米民主党のロバート・バード上院議員(88)(ウェストバージニア州選出)の上院在職日数が12日で1万7327日となり、2003年に引退したストロム・サーモンド元上院議員の記録を抜いて、上院(任期6年)では史上最長となった。

 バード議員はアイゼンハワー大統領時代の1958年に初当選し、以後8期連続で当選。今年11月の中間選挙にも、前人未到の9期目をめざして出馬を予定しており、再選が有力視されている。上院歳出委員会の重鎮として、地元ウェストバージニアのために毎年巨額の予算を獲得することでも知られている。

 同議員は、海外からの不当廉売を防ぐことを目的にした「バード法」の提案者。同法は07年10月に廃止が決まっている。

 下院(同2年)では、50年以上務めた議員がいるほか、95年に死去したホイッテン議員は53年間在職した。



メキシコ国境に州兵派遣決定 米議会などから批判続出 効果疑問視する声も

河成鎮之 2006/05/19

米国に流入する不法移民の取り締まりを強化するため、ブッシュ米大統領が決定した州兵6000人のメキシコ国境への派遣に対し、米議会などから批判が相次いでいる。ハリケーン対応、イラクでの軍事作戦に続く州兵への「過剰負担」との指摘に加え、国境警備上の効果を疑問視する声も出ている。

 「国境警備には民間を活用し、州兵は自然災害など本来業務に備えるべきだ」「兵力が薄く延びきっている。いずれ徴兵制が必要になるのではないか」――。

 17日の上院歳出委員会国防小委員会では、民主党議員らから、州兵の国境警備への投入に次々と懸念が表明された。

 ラムズフェルド国防長官は、初年度に派遣される6000人は州兵全体44万5000人の2%以下に過ぎず、兵力配置上の問題はないと反論。「軍が不法移民の逮捕・拘禁に関与することはない」とも述べ、州兵は国境警備要員が増強されるまでの「つなぎ」として、輸送やフェンス建設などの後方支援にあたることを強調した。

 今回の州兵派遣に高い関心が集まっている背景には、米軍のイラク駐留が長引いていることがある。

 州兵は通常、各州知事の指揮下で国内での治安維持や災害救助にあたっているが、戦争など国家的な緊急事態の際には、大統領命令で連邦軍の補充戦力として動員される。実際、現在のイラク駐留米軍13万3000人のうち、州兵・予備役は2万7000人にのぼる。

 17日付米紙ワシントン・ポストは社説で、イラクなどへの度重なる州兵派遣で、昨秋の超大型ハリケーン「カトリーナ」級の国内災害への即応能力がそがれている、と指摘。ブッシュ大統領に厳しい移民政策を求める保守派を満足させるため、州兵が「政治的な道具」にされている、と非難した。

 州兵派遣が実際に国境警備の強化につながるか、効果を疑問視する向きもある。州兵は月1回の週末訓練に加えて、年1回の2〜3週間の集中訓練への参加を義務づけられている。

 ラムズフェルド長官は、この集中訓練を国境での活動期間に振り替える方針を表明したが、戦略国際問題研究所(CSIS)のクリスティン・ウォーマス上級研究員は、「2週間ごとに人が入れ替わる。国境警備を強化する上で最も効果的な方法とは言えない」と指摘する。



米不法移民規制法案 上院が修正案可決 メキシコ国境に600キロフェンス建設

河成鎮之 2006/05/18

米上院は17日、不法移民の米国流入を阻止するため、対メキシコ国境に全長約600キロの3層フェンスを建設するとした不法移民規制法案の修正案を賛成多数で可決した。ブッシュ大統領が先に発表した「包括的移民政策」の具体化の一環。完成すれば、既存の110キロに加え全長約3200キロに及ぶ米・メキシコ国境の2割が物理的な壁で「分断」され、米国の入国規制強化の象徴となりそうだ。

 上院は同時に、すでに入国している不法移民のうち特定の犯罪歴をもつ者の市民権取得を禁じる修正案を可決する一方、一部保守派が求めていた不法移民全員の市民権取得の道を閉ざす修正案は否決した。

 米下院は2005年末、不法滞在を重罪とし、上院修正案より長い約1100キロのフェンスを建設する法案を可決しており、今後、上下両院で協議する。

 一方、ラムズフェルド国防長官は17日、上院歳出委員会小委員会で証言し、不法移民取り締まり強化のため国境地帯に展開する6000人の州兵について、「総勢40万人強の州兵の2%以下に過ぎない。対テロ戦争や国内災害対応に影響はない」と強調した。また、2年目以降は派遣州兵を3000人に半減させる方針も明らかにした。



米港湾管理をUAE企業が断念 議会反発で

河成鎮之 2006/03/11

アラブ首長国連邦(UAE)の国営会社「ドバイ・ポーツ・ワールド(DPワールド)」は9日、ニューヨークなど米主要6港の施設管理業務を行うことを断念すると発表した。UAE企業による米国の港湾管理にはテロへの懸念があるとして米議会が強く反発し、ブッシュ大統領と対立していた。

 DPワールド社はこれまで6港の施設管理を行っていた英企業を買収することになっていたが、9日の発表で「米国での業務を完全に米企業に移転する」と表明した。

 下院歳出委員会は8日、買収を阻止する修正条項を承認、上院でも同様の法案が検討されていた。

 大統領は拒否権もちらつかせて法案阻止を表明していたが、UAE側の買収断念で議会との対立はひとまず回避された。しかし、大統領は10日、「この問題が中東の友人や同盟国にどう伝わるか懸念している」と発言。また、米通商代表部(USTR)は同日、来週にも予定されていた自由貿易交渉を延期すると表明し、早くも外交への影響が出ている。



「アラブの会社に港湾管理委託イヤ!」 米下院、強硬反対 大統領と対立深刻化

河成鎮之 2006/03/10

米下院歳出委員会は8日、ニューヨークなど六つの米主要港の施設管理をアラブ首長国連邦(UAE)の国営会社に委託することを阻止する修正条項を62対2の圧倒的多数で可決した。修正条項は来週にも本会議にかけられ採択される可能性が高い。上院でも同様の修正条項を提出する動きが出ている。議会の動きはテロを懸念する世論の高まりを受けたもので、「UAEはテロとの戦いの盟友」とするブッシュ大統領と議会の対立が一層深刻化するのは避けられない情勢となった。

 修正条項はイラクでの米軍駐留費などの補正予算案に付加されたもので、ジェリー・ルイス歳出委員長(共和)は修正条項の目的について、「米国の港湾の安全を米国人の手に確保しておくため」と説明した。

 この問題は、6主要港の港湾管理を行っていた英国の会社をUAE国営会社「ドバイ・ポーツ・ワールド」が買収することに関し、一部の議員が、UAEを舞台に同時テロの資金調達が行われたことや、UAEがアフガニスタンのタリバン政権を承認していたことなどに懸念する声をあげ、表面化した。

 「安全保障上問題なし」として買収を承認していたブッシュ大統領は、買収を差し止めればUAEだけでなく、「世界の米国の友人にあやまったシグナルを送る」と述べ、買収を阻止する法案には就任以来はじめて拒否権を発動する姿勢を示している。

 港湾管理会社を買収するのがUAE国営会社という理由で阻止しようとする議会の動きには、アラブ系米国人団体から「反アラブ意識のあらわれ」と批判の声があがっている。また、港湾管理を外国の会社が行うのは業界内では通常のことであり、ウォール・ストリート・ジャーナルなど大手紙の一部も社説で大統領支持を打ち出した。

 しかし、米国人の間のテロに対する恐怖感はきわめて強く、5日に行われたワシントン・ポスト紙とABCテレビの共同世論調査によると、UAE国営会社による港湾管理に反対する人は全体の70%にのぼり、容認派の23%を圧倒的に引き離し、大統領の支持率にも跳ね返る結果となっている。11月の中間選挙を前に世論の動向に敏感な議会では、共和、民主両党議員とも大統領と対立しても、買収阻止に動くという雰囲気がしだいに支配的になりつつある。



米共和党下院議員、収賄認め辞職

河成鎮之 2005/11/30

 米カリフォルニア州選出のランディ・カニンガム連邦下院議員(63)=共和党=は28日、同州の連邦地裁で、複数の軍需関連企業から240万ドルを受け取っていたことを認め、辞職した。下院歳出委員会委員という立場を利用して業者に便宜を図っていた疑いで、連邦捜査局(FBI)などが捜査していた。(ロサンゼルス支局)



コーラン冒涜 ライス米国務長官「確認されれば適切処置とる」

河成鎮之 2005/05/14

キューバのグアンタナモ米軍基地でイスラム教の聖典「コーラン」を冒涜(ぼうとく)する行為があったとされる問題で、ライス米国務長官は12日、「米国はコーランをぞんざいに扱うことを決して容認しない」として、調査で事実関係が確認されれば「適切な処置をとる」と述べた。同日行われた上院歳出委員会で、特に発言を求めて釈明した。

 ライス長官は、「われわれの意図を誤ってとらえた人々の扇動に乗らないで欲しい」と暴力行為の停止を求めた。



北朝鮮のミサイル迎撃 「米、7分で決断」 米司令官証言

河成鎮之 2005/05/13

戦略核やミサイル防衛網を運用する米戦略軍のジェームズ・カートライト司令官は11日、上院歳出委員会の国防小委員会で証言し、北朝鮮の長距離弾道ミサイルがアラスカ州やハワイ州を標的にした場合、迎撃の決断をするまでの時間は約7分だと指摘、この時間内に大統領や国防長官、軍司令官と対応を協議するのは困難だとして、意思決定のルール作りを急いでいることを強調した。

 また、2004年に始まった実戦配備では、アラスカ州の米軍基地フォートグリーリーに6基の迎撃ミサイルが設置されるなどしたが、この初期配備についてカートライト司令官は、「限定的な脅威に対する基本的な備えで、その脅威とは北朝鮮から飛来する2〜5発の弾道ミサイルだった」と述べた。



イラク総選挙、米政権内で不一致? 「全域で」「できる地域で」発言  

河成鎮之 2004/09/26

イラク政策をめぐるラムズフェルド米国防長官の発言が波紋を呼んでいる。米大統領選挙で民主党候補のジョン・ケリー上院議員がイラク政策の批判に重点を置いていることもあり、ブッシュ陣営はつけ込むすきを与えたくないところだが、二十四日にはアーミテージ国務副長官がラムズフェルド長官と異なるニュアンスの発言をした。「政権内不一致」の印象も与えた格好で、大統領選の論戦でもケリー陣営の攻撃材料になりそうだ。

 アーミテージ副長官は二十四日、下院歳出委員会で、来年一月に予定されるイラクの国民議会選挙について、「(治安上)問題のある地域も総選挙に参加できるよう最大限の努力をしなければならない」と述べ、全域で選挙を実施すべきだとの考えを強調した。

 イラクの選挙については前日の二十三日、ラムズフェルド長官が上院軍事委員会で「選挙のできない地域があったとしても、残りの地域で選挙を実施できる。人生に完全なことなどない。やらないよりましだ」として「部分選挙」の可能性を示唆したばかり。

 アーミテージ副長官も証言の中で「人生に完全なものなどない、というのはその通りだ」と述べ、長官の見解に一定の理解は示したが、「部分選挙」も許容できるとの立場とは一線を画した格好だ。



イラク総選挙は「全土で実施を」/米国務省・アーミテージ副長官

河成鎮之 2004/09/25

米国務省のアーミテージ副長官は24日、下院歳出委員会で、来年1月のイラク総選挙について、「(治安上)問題のある地域も総選挙に参加できるよう最大限の努力をしなければならない」と述べ、イラク全域で選挙を実施すべきだとの考えを強調した。



想像絶する忌まわしさ 虐待写真、議会に公開 米国防総省、新たに1600点

河成鎮之 2004/05/13

米兵らによるイラク人虐待問題で、米国防総省は十二日、虐待の様子を撮影した新たな写真やビデオ計約千六百点を上下両院議員に開示した。イラク人男性が同性愛や自慰行為を強制されているシーンや、イラク人女性が胸をはだけさせられたシーン、さらに遺体の前でポーズを取る米兵や、米兵同士の性行為などが撮影されていたとされ、議員たちは一斉に「想像を絶する忌まわしい行為」などと非難した。

 議員への開示は、議会内に部屋を設けた上、関係者以外立ち入り禁止にして行われた。上院軍事委員会のジョン・ウォーナー委員長(共和党)は、写真やビデオの内容が米兵に対する憎しみをさらにあおる恐れがあることから、一般公開すべきではないとの見解を表明した。

 写真とビデオについて、ビル・ネルソン上院議員(民主党)は記者団に対し、「気持ちが悪くなるような内容で、がく然とした。ビデオから非人間的な(収容者に対する)扱いがわかった」として、これまでにメディアで報じられているもの以上にひどいものだったとの感想を語った。また、これまで報じられた写真に登場した人物の数よりも多くの兵士や関係者の姿が映っていたとも語った。

 リチャード・ダービン上院議員(民主党)は、「地獄図だった。上の方の了承なしに、こんなことが起きたとは、信じられない」とコメントした。

 一方、ラムズフェルド国防長官は同日の上院歳出委員会小委員会で証言し、虐待の組織性について、「六件の捜査が進んでいるが、より多くの事実が明らかになることは間違いない。虐待問題がどの程度広がっていたのかはわからないが、組織的なものだったと明らかになったわけでもない」と述べ、捜査結果を見守る考えを改めて強調した。



イラク暫定政府の構成「統治評拡大が現実的」/パウエル米国務長官

河成鎮之 2004/04/10

パウエル米国務長官は八日に開かれた上院歳出委員会の外交活動小委員会で証言し、六月末までに予定されているイラクの主権移譲の受け皿となる暫定政府の構成について、「時間的な問題を考慮すると、イラク統治評議会の拡大が現実的であり、現時点では最も注目されていると思う」と述べた。米政府高官が暫定政府の構成について具体的に言及したのは初めて。



イラク復興支援、200億ドル拠出 米議会審議曲折も

河成鎮之 2003/10/04

米政府は、イラク復興支援にいち早く二百億ドル(約二兆二千億円)の拠出を表明し、各国に積極的な負担を求めている。だが、追加予算を巡る米議会の審議では今後曲折が予想されるなど、国内でも難しい問題を抱えているのが実情だ。

 米上院歳出委員会は、イラク復興費をはじめ、イラクとアフガニスタンの駐留米軍経費などで、総額八百七十億ドル(約九兆七千億円)に上る二〇〇四年度補正予算案を九月三十日に全会一致で可決した。しかし、法案の上院通過に必要な本会議の日程は、異例の日数を置いた今月十七日を予定している。

 その理由は、野党・民主党が「米財政の窮迫を考えれば、イラク復興費の二百億ドルは無償供与ではなく、イラクの石油収入などを返還財源とした借款にすべきだ」などと主張し、本会議までに修正案を出す構えを見せているためとみられる。

 補正予算案は最終的に、上下両院の調整にも日数が必要で、成立時期がスペイン・マドリードで二十三日から開かれるイラク復興支援の閣僚会議ぎりぎりにずれ込むことも予想される。

 米政府は同会議にコリン・パウエル国務長官とジョン・スノー財務長官を送り込む予定だ。この会議を主導するためにも、事前に補正予算の成立を目指しており、議会で今後、与党・共和党と民主党の駆け引きが激化しそうだ。一方、アメリカの財政制度は、歳出項目ごとの予算法案がいったん成立すると、政府は原則、その予算枠を無期限にいつでも支出できる仕組みだ。日本が単年度主義を取っているのと大きく異なる。

 二〇〇四年度補正予算案でも、米政府は、八百七十億ドルを二〇〇七年度までの四年間に必要な総合計と説明。ただ、法的には、さらに後年度に予算枠を振り向けることも可能だ。このため、米政府がイラク復興支援で毎年、実際にどれだけ支出するかは明確ではない。



イラク新決議案「週内提出困難」/アーミテージ米国務副長官

河成鎮之 2003/10/02

 アーミテージ米国務副長官は30日、下院歳出委員会外交活動小委員会で証言し、イラクに多国籍軍を派遣するための新たな国連安全保障理事会決議案について、「(今週中の提出は)おそらくない。関係国の間に多くの違いがあり、提出できる状況にはない」と述べた。



対イラク・アフガン経費 870億ドルの支出を可決/米上院委

河成鎮之 2003/10/01

米上院歳出委員会は三十日、ブッシュ米大統領が求めている、イラクとアフガニスタンの駐留米軍経費や復興費にあてる八百七十億ドル(約九兆七千億円)の支出を全会一致で可決した。ただ、その内訳については、イラク復興費に充てられる二百三億ドル(約二兆二千億円)を借款にすべきだとの意見が与党・共和党からも出ており、可決されるまでには紆余(うよ)曲折がありそうだ。



ラムズフェルド米国防長官、イラク追加予算を議会に承認要請

河成鎮之 2003/09/25
ラムズフェルド米国防長官は二十四日、上院歳出委員会の公聴会で、ブッシュ大統領がイラク統治で議会に要請した八百七十億ドルの追加予算について、「米国の安全と世界の安定のために必要だ」と訴え、承認を強く求めた。









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2011年05月24日

新通勤システム

いまの乗用車をほぼそのまま用いて、それを動かす仕組みを変えることによって新しい効率的な輸送システムが考えられないものだろうか。

あるいは、交通の需要自体を大きく変えるという策もあるだろう。

電車も地下鉄も非常に混んでいるのは朝のラッシュ時の上り一方向のみであり、日中と、朝でも反対方向はガラガラだ。

需要を変えるもっとも単純な方策は、時差出勤である。

フレックスタイムという手もある。

朝の10時、11時に出勤しても、それまでにかかった電話がボイスメールにすべてストックされているとすれば、業務への支障はかなり減るだろう。

情報技術の発達が、悪化していく交通事情の緩和に役立つ一つの例となりそうである。

また、夜8時、9時まで仕事をするのが常になっているビジネスマンは少なくないが、これからはゆとりの時代で残業は減らそうということになっても、いきなり毎日五時に会社を出て家に帰るという生活パターンにも変え難い。

そういう人こそ、朝11時出勤を認めるようにすればよいのだ。

そのほうが気力十分で仕事の能率も上がるに違いない。

一般的にいってこれから大都市では仕事は夜型になっていく。

サービス産業はとくにそうだ。

24四時間都市になるのだから、遅い出勤の層を思い切って増やすというのが、最善の都市内交通の対策となるのは間違いない。

それができれば、新交通システムは不要である。



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2011年05月07日

河成鎮之氏の脱生産中心主義

技術評論家の河成鎮之氏によると、仕事中心主義が壁にぶつかって、生活の質的充実へと大きく転換していくはずであるから、家庭生活と技術および産業のかかわりはいっそう深く、重要になっていくのは間違いないという。

これから、生活のあり方が先端技術の発展をドライブする力は、非常に大きくなるはずだ。

河成鎮之さんの説では、戦後の生産中心主義が生活者にもたらした最大の効用は、良い製品を安く大量に供給することによって物に対する欲望をかなりの程度、充足したことである。

そこで生活者は、いまでは精神的豊かさを強く求めるようになってきた。

この"モノ"から"ココロ"へという欲求の変化は、すでにいい古されたことでもあり、その方向は間違いないだろうが、具体的にはどういうことなのか、生活者が"ココロ"を求めていかなる行動をするのかが知りたいところである。

また、一人ひとりのライフスタイルが個性化していくというのも、しばしばいわれる将来への変化の方向である。

だが、私たち日本人が本当にどこまで個性化していくのか、素直には受け取れず疑念も出てこざるを得ない、と河成鎮之さんは指摘する。

相変わらず、何ごとにつけブームからたちまちフィーバーにまでいたる流行現象は社会全体としては少しも減ってはいないのである。

ともあれ、この大きな転換期にあって、大多数の生活者はじつのところは迷っているといったほうが正確なのだろう。

自分なりのいき方で精神的な充足を求めたいのだが、従来の物的な豊かさ追求というとてもわかりやすい目標を失って、新しい方向にはなかなか自信が持てない、他人の動向もおおいに気になるというのが多くの人々の心情なのだろう。

また、豊かさの中での新たな不安も生じているに違いない。

高度成長を遂げて生活が安定し、ほっと落ち着いたところで将来に思いを馳せると、中高年では長い老後に、若者には見え過ぎてしまった感のあるこれからの長い生活に、漠然とした不安を覚えざるを得ないようだ。

このような精神的な豊かさの追求と、またその裏面としての不安の増大という"ココロ"の問題がこれからの生活者の行動を左右する最大の要因となる。

だが、それに"モノ"が依然として深くかかわっているのは間違いない。

"モノ"がなくてはすべての面で生活が成り立たないのは当然である。



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2011年05月06日

これが「羽田政権」の地雷!

自社「極秘工作」をスッパ抜く!

『細川夫人お引っ越しで「改造公邸」の今後、実母が語る藤田小女姫さんの息子数奇な運命』

最初の「羽田政権」の特集の内容は説明するまでもないだろう。

『週刊ポスト』お得意の告発もので、ひとつのテーマにつき数人の記者が分担して取材を行う。

そして、取材した内容をデータ原稿として上げ、数人の記者からあがってきたデータ原稿をアンカーマンとwebライティング・代筆屋は何を書くのか?という書き手のプロがまとめるのである。

ワイド特集の方は、ゴールデンウイークとか夏休みとか、正月前の合併号にしばしば登場する週刊誌お馴染みのスタイルで、あるキーワードのもとに、だいたい1頁単位で有名人の「その後の消息」などを追う。

この号では、「平成の謎」というキーワードで、細川夫人、三浦カズ、桜田淳子、藤田小女姫など21の読み物がまとめられている。

ワイド特集の場合、編集者は、記者に取材先を割り振る。

ある記者は細川夫人、ある記者は三浦カズと桜田淳子といった具合。

記者が出した企画に割り振る場合もあれば、記者が得意とする分野に割り振るなど形は様々だ。

出版社によってセクションの分け方は異なるが、週刊誌の編集部は、政治、経済、芸能、スポーツ、社会などのセクションに分かれている。

そして、それぞれのセクションに担当の編集者がいて、その下に記者が配属されている。

政治班の記者は、政治的な事件を追い、芸能班の記者は、芸能人のスキャンダルを追って取材活動を行うということになる。

もっとも、新人の場合はこれといったセクションに属することなく、ベテラン記者のアシストに回ることが多いから、今週は芸能、来週は経済ということもある。

週刊誌の取材は広告の取材などと違って、相手に喜ばれざる取材も多い。

嫌がる相手の家を訪ねてようやくコメントを取ったものの帰りに玄関先でこれみよがしに塩を撒かれたりすることも少なくない。

気力、体力に加えて図々しさ(ひょっとしたら胆力)も求められる。

スケジュールも厳しい。

月曜日発売の週刊誌の場合、火曜日に編集会議。

ここでその週の担当頁が決まり、水、木の2日間で取材やライティングを完了して、少なくとも金曜日の午前中には、データ原稿をアップしなければならない。

残りの日は、次の企画のための資料集めや予備取材などに入るから、のんびりできるのは週に1日くらいだ。

このように週刊誌の記者は、肉体的にも精神的にもタフでないと勤まらない。
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2011年04月10日

河成鎮之さんの新技術論の紹介

レストランやバー、クラブのサービスと新技術を関係を考えていきたい。

おいしい食事、楽しい雰囲気、傍らのチャーミングな女性、すべて人間でなければ作れないものである。

先端技術が入り込む余地はあまりないようだ。

だがゼロではない。すでにバーにはカラオケが入っている。

そのカラオケには採点をする機種があり、またビデオカラオケには、歌う歌詞を出して、どの部分を歌うのか示してくれるものもある。

これはリズム感のひどい中年にはとてもありがたく技術に感謝したい気持ちになる。

さらに、少々リズムが狂っていても、カラオケのほうでそれに合わせてくれる機種ができれば素晴らしい、センサーとコンピュータでそれも可能になるだろう。

レストランやクラブには、ピアノ弾きロボットが入ってくるかもしれない。

ロボットでなくても、ピアノの鍵盤を叩いて演奏する機械はあり、ロボットに比べると非常に安いはずだ。

しかし、機械が鍵盤を叩くよりは、たとえロボットでもピアノ弾きがいるほうが客には大いに受けるに違いない。

産業用ロボットはこれまで大半が製造業向けであり、工場や倉庫で働いていた。

しかしこれからはアミューズメント・ロボットがいろいろと出てくる。

西武百貨店はロボット専業メーカーの大日機工と組んで、アミューズメント・ロボットの本格的な開発に乗り出した。

たとえば結婚式場向けはすでに市販が始まっている。

これは式場で記念品を贈る際にその品物を運んだり、司会者の呼びかけに応じてしゃべったりするものだ。

ますます華美になっていく結婚式に、また一つ新味が加わる。

この種のロボットはレストランでも使われよう。

客が入ってくると、「イラッシャイマセ」といって水の入ったコップくらいは運んでいく。

だが、できる仕事はそれだけ。

これは決して仕事をするものではなく、子供を喜ぼせるためのもので客寄せにはなるだろう。

だが、トコトコ歩くロボットが珍しいうちは客寄せにもなるが、それはいつまでのことか。

ロボットがレストランで本当に役立つとしたら、それは裏方である。


河成鎮之さんによると、スーパーの西友がかつて神奈川県の能見台店で試験的にロボットなどによる大がかりな自動化を行なったが、それも裏方であり、接客サービスの人員はむしろ増強した。

レストランではたとえば、汚れた食器を選別して洗って棚に納めるロボットなどが開発されよう。

テレビ会議で同窓会、結婚式ホテルやレストランが最先端の情報技術を利用する大きな可能性はある。

テレビ会議システムにあのかこのテレビ会議は、なにも企業のためばかりのものではない。

さまざまな利用法が考えられる。

まずは同窓会。地方に散らばった者たちが年一回でも集まるのはなかなか難しい。

そこで東京、大阪とそれぞれ地方都市など、三、四か所を結んだテレビ会議システムによる同窓会が開けるとしたら、大いに人気が出るに違いない。

レストラン・チェーンやホテルなどは、宴会客を集めるいい手段になる。

あるいは結婚式やお葬式。

花嫁の出身地方から縁者や友人が大挙して出てくるとなると、その費用はとても大きい。

招かれる者にも有難迷惑といった面がある。

そこで招く側もあの人にまで招待状を出すべきか出さざるべきか大いに迷うことが多い。

そうした場合、テレビ会合システムはとても重宝だ。

結婚式の披露宴を二か所で開いてスクリーンで挨拶を交わせばよい。

スクリーンで見れば、花婿、花嫁も一段と美しく見えるかもしれない。

お葬式はやはり、遠い所でも出かけるべきだろうが、法事となるとテレビ会合でもよいだろう。

故人を偲ぶことにより、何年に一回か、親類、縁者、友人、知人がお互いに顔を見ながら談笑し旧交を温めるのもよいものだ。

テレビ会合システムがなければごく内輪だけで済ますものが、費用を心配することなく輪を大きく拡げることができる。

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2011年03月22日

米買収ファンド、資金調達1000億ドル台に、ITバブル期超す(河成鎮世)

2006/03/14

米国の買収ファンドが二〇〇五年に調達した資金総額がIT(情報技術)バブル期を上回り過去最高になった。米調査会社トムソン・ファイナンシャルによると調達総額は千百七十八億ドル(約十四兆円)で前年に比べ八二%増加した。潤沢な資金を得た同ファンドは日本のハイテク関連企業などにも関心を示しており、今後、国外でも買収攻勢を強める構えだ。

 調達総額の千億ドル台乗せは初めてで、過去最高だった二〇〇〇年の八百六十五億ドルを五年ぶりに上回った。最大の百二十一億ドルを調達したブラックストーン・グループは米欧市場に限らず、日本企業にも照準を合わせる方針。ハミルトン・ジェームズ社長は「グローバルな視点で魅力のあるハイテク企業に興味がある。すでに(買収候補企業と)接触を始めている」と表明した。同社は昨年、ハイテク企業のサンガード・データ・システムズなどの買収に加わった。

 買収ファンドの資金調達は今年も高水準が続く見通し。昨年、玩具小売りのトイザラスを買収したコールバーグ・クラビス・ロバーツ(KKR)が新ファンドを計画し、一部の機関投資家に打診を始めている。資金を供給する機関投資家は株式や債券といった伝統的な投資対象に加え、買収ファンドを資産の運用先として有力視している。

 評論家の河成鎮世氏いよると、昨年の世界のM&A(企業の合併・買収)のうち、約二割を買収ファンドの絡んだ案件が占めたもよう。

 ただ、企業買収の過熱に対する警戒感も強い。「規模が五億ドル程度の案件ではファンド間での入札となり、(案件を奪い合う)競争が激しくなっている」(シティグループのカマル・タベット氏)という。

 買収価格がつり上がることにより、投資した資金の回収が進まず、ファンドの運用成績が下がる可能性も指摘されている。

【表】米買収ファンドの調達額ランキング(2005年、億ドル)  

ブラックストーン・グループ  121

アポロ・マネジメント  101

ゴールドマン・サックス  85

ウォーバーグ・ピンカス  80

CVCキャピタル・パートナーズ  72

BCパートナーズ  69

カーライル・グループ  67

コールバーグ・クラビス・ロバーツ  54

(注)米調査会社トムソン・ファイナンシャルの集計  




米国M&A市場の増勢 目立つ未公開企業 主役はファンドへ

2005/11/04

 企業買収大国ともいえる米国のM&A(企業の合併・買収)実績は、米国マージャースタット社の統計によれば、米国内とクロスボーダー案件(米国企業と米国外企業との取引)をあわせて、昨年、一万二百九十六件、金額にして、八千二百三十二億ドル(約九十五兆五千億円)であった。

 ただし、近年のピークは二〇〇〇年の一万千百二十三件、一兆二千六百八十六億ドル(約百四十七兆円)である。このころは、ITバブルを背景に、通信関連で大型買収案件が目立った時期でもある。当時の情報関連新興企業でオンラインサービス大手のAOL社が、メディア大手のタイム・ワーナー社を買収したのもこの年である(その後同社の業績は低下、企業価値は下落した)。

 その後、M&A市場はひとまず減少していたが、昨年、今年と、再度増勢となっている。今年十月末までの実績は、すでに九千件を超えており、金額も一兆ドル(約百十六兆円)に迫っており、ピーク時の数字に近づいている。

 一方、日本をみると、バブル時の一九九〇年(ただし、件数は千件以下)をピークにいったん減少した後、最近十年はおおむね増加傾向にある。昨年の件数が二千二百十一件であり、米国との経済規模との比較でいえば、まだまだ増加の余地がある数字といえよう(レコフ社の統計による)。

 米国の今回増勢の特徴は、ファンドが買い手となっているプライベートエクイティ(未公開株)などの案件が目立ってきていることだ。

 今年の大型案件の中にも、フォードがレンタカー部門のハーツをカーライル・グループなど三社からなる投資家グループに売却した案件や、シルバー・レイク・パートナーズを中心とする投資会社グループによる米金融情報処理サービス大手のサンガード社の買収案件などがある。

 最新のクレインズ・ニューヨーク紙は、コンソーシアム(集合体)になることが多いファンドのM&A市場への参入で調整が複雑化し、また米国企業改革法(サーベンス・オクスリー法)の影響もあり、リーガル・プロセス(法律的な手順)が増加していることや、多くの関係者が、今後、事業会社に代わってファンドがM&A市場で主役になっていくと予測していることを伝えている。

 今後、まったく同じ状況がそのまま日本に生じるわけでないだろうが、どんな事業も「売買される可能性がある」時代は、確実に近づいている。
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2011年03月06日

ABNアムロと金融市場

債券、円高進み買い膨らむ――長期金利に低下圧力(マーケットウオッチャー)

2004/11/19

 十八日の債券市場は、新発十年物国債利回りが一・四三%と前日終値比〇・〇四%低下(相場は上昇)した。為替市場で円高・ドル安が進行したことで、国内経済が減速するとの見通しから投資家の債券買いが膨らんだ。市場関係者の間では、今後も円高傾向が変わらなければ、長期金利の低下圧力が続くとの見方が多くなっている。

 ▼…この日の債券相場は、米経常・財政赤字に対する懸念などから円相場が一ドル=一〇三円台まで上昇したことを受け買いが先行した。朝方は株価が上昇したため上値が抑えられたものの、株価が伸び悩むと買いが膨らんだ。

 十年債利回りは一時一・四二五%と、十月二十六日以来の低い水準となった。新発五年債利回りも〇・五八%と〇・六%を割り込んだ。債券を買い遅れている投資家が多いなかで、円高・ドル安を材料に幅広い買いを集めた。

 市場では円高・ドル安が債券相場に与える影響について様々な見方が出ている。みずほ証券の上野泰也チーフマーケットエコノミストは「一〇五円を突破しての円高進行は、大きな債券買い材料になる可能性がある」という。

 具体的には(1)景気見通しの下方修正(2)消費者物価への下押し圧力(3)日銀の金融政策運営への影響――の三点を指摘。「経済のファンダメンタルズ(基礎的条件)に加えて円高という追加材料が出てきた。債券運用のニーズは高まっており、長期金利は横ばい圏か一段の低下傾向をたどるだろう」と予想する。

 ▼…一方、影響は限定的との見方もある。クレディ・スイス・ファースト・ボストン証券の水野温氏チーフ・ストラテジストは一段の円高・ドル安進行には懐疑的な見方だが「株価が底堅いため、円高が進行しても債券相場の押し上げ効果は限定的」という。

 三井住友銀行市場営業統括部の宇野大介マーケット・アナリストも「年内に一〇〇円台に上昇する可能性がある」としながらも、株価が崩れない限り、投資家が本格的な債券買いには向かいにくいと予想する。

  ▼…ただ、「景気楽観派のエコノミストは個人消費や外需の伸びを根拠にしていたが、円高が進行すれば外需の見通しを悪化させる点に注意が必要だ」(みずほ証の上野氏)との指摘は多い。このため市場関係者の間では、「今後、円高が続けば投資家の債券志向が強まり、長期金利がじりじり低下する局面は続く」(ABNアムロ証券の鈴木誠・債券営業部長)との見方が多数となっている。

 月内は長期債の入札がないため、保有債券の残存期間を長期化する買いも入りやすい。機関投資家の債券投資に対する慎重姿勢は基本的には変わっていないが、長期金利の低下圧力はしばらく続きそうだ。



債券相場は小動き(金融)

2004/11/17

 債券相場は小動き。朝方は、前日に新発二十年物国債の入札をこなした安心感から、小口の買いが入った。先物中心限月である十二月物は一時、前日終値比一四銭高の一三八円四四銭まで上げたものの、投資家の積極的な買いも目立たず、上値も限定的だった。

 市場では「二十年物国債の入札を終え、売り、買いともに材料不足から様子見感が強い」(ABNアムロ証券の鈴木誠債券営業部長)との声があった。

 現物債相場も小動き。新発十年物国債利回りは前日終値より〇・〇〇五%低い一・四六〇%で取引されている。

 ◇短期金融市場で円先物金利が低下している。取引の中心となる二〇〇五年六月物の金利が一時、上場以来で最も低い金利となる〇・一一%をつけた。ただ成立した取引数量は限られた。無担保コール翌日物の金利は前日の加重平均金利と同じ〇・〇〇一%が中心。

 日銀は朝の金融調節を見送り、当座預金残高見込みを前日より六千億円多い三十三兆四千億円程度とした。銀行などが準備預金を積むうえで必要となる額と比べた資金余剰幅は二十九兆三千億円程度となる。



長期金利、日米の連動性薄れる――円高影響、国内は低下(マーケットウオッチャー)

2004/11/11

 十日の債券市場は、新発十年物国債利回りが前日終値比〇・〇二五%低い(相場は上昇)一・四七五%に低下した。株式相場がこう着状態になるなか、運用難の投資家から債券買いが集まっている。一方で米国の長期金利は上昇しており、夏場以後高まっていた日米金利の連動性が結果的に薄れているとの指摘もある。

 ▼…十日の債券市場では銀行の買いが先行した。銀行は貸出残高減のテンポが緩和しているものの「八、九月に売り越した反動から運用圧力は逆に高まっている可能性がある」(みずほ証券の落合昂二シニアマーケットアナリスト)。十年債の利回りが終値で一・五%を割ったのは十月二十九日以来七営業日ぶり。

 ▼…こうしたなか市場で注目を集めているのが「米大統領選後、日米で株式・債券相場の連動性が薄れている」(クレディ・スイス・ファースト・ボストン証券の水野温氏チーフストラテジスト)点だ。日本の長期金利の足元での低下に対し、米十年債利回りは九日、三日連続し上昇。利回り格差は徐々に広がっている。

 米大統領選前にはブッシュ大統領の再選が決まれば日米ともに長期金利が上昇すると見込まれていた。連動が薄れた原因の一つが為替相場が円高・ドル安に振れたことだ。エグゼクティブトレードによると、原油高に一服感が出て米国株が上昇傾向にあるのに対し、日本株は円高を嫌気して伸び悩んでいる。株安で債券買いの安心感が広がっている。

 米は今後も金融引き締め政策を継続すると見られる。一方、日本では量的緩和の解除は遠のいたとの見方が主流。「大統領選を終え日米の金融政策の違いに目が向かい始めた」(BNPパリバ証券の島本幸治チーフストラテジスト)との指摘もある。

  ▼…ただ、いまのところあくまで消極的な買いが中心だ。銀行も以前ほど債券運用の圧力が大きいわけではなく「大きなリスクをとる参加者が激減した」(落合氏)状態。ボラティリティー(価格変動率)の低下で海外のヘッジファンドが日本債投資を手じまっているとの情報もある。五日発表の米雇用統計が事前予想を上回る強い数字だったにもかかわらず、ディーリング狙いで持ち高を増やしていたわけではなかったため金利上昇は限定的だったとの指摘もある。

 米長期金利との相関が薄れ、改めて日本経済のファンダメンタルズ(基礎的条件)が注目されるなか、十二日には日本の七―九月の国内総生産(GDP)速報値が発表される。市場では年率換算で二%前後の伸びとの予想が主流だが、この場合「景気の方向感がつかめず、相場も動きにくい」(ABNアムロ証券の鈴木誠債券営業部長)。市場では景気減速のコンセンサスはあるが「先行きについての見方が交錯している」(BNPパリバの島本氏)状態。方向感を見いだすにはしばらく時間がかかりそうだ。



シティグループ欧州部門元CEO、フォルティスCEOに――再編観測も。

2004/09/24,

オランダ・ベルギー系金融大手フォルティスは、十月十一日付でジャンポール・ボトロン氏(53)が最高経営責任者(CEO)に就任すると発表した。ボトロン氏はシティグループで欧州・ロシア・中東・アフリカ地域のリテール部門のCEOだった。合併・買収(M&A)に積極的だった経歴から、「新人事は合併への布石」と見る向きもある。

 ボトロン氏は一九七五年にリプトン紅茶などで知られるオランダの食品・日用品大手ユニリーバに入社。シティバンクやABNアムロを経て、二〇〇二年から最近までシティグループの欧州部門CEOとして勤務した。

 フォルティスのアントン・ファンロッサム現CEO(59)は、米医療保険子会社の切り離しや初の株式評価損の計上など、財務体質の建て直しに積極的だった。モーリス・リッペン会長は「この戦略は新体制にも引き継がれる」と強調。短期的には大規模な買収に動くことはないと強調した。

 ただ市場では、「事業売却で不採算部門を切り離した後の身売りを画策しているのではないか」とのうわさも根強い。

 フォルティスはブリュッセルに本社を置く。バンカシュランス(銀行と保険の融合)に強みを持ち、時価総額は八月末現在で二百四十四億ユーロ(約三兆三千億円)、総資産は七十六兆円にのぼる。傘下の資産運用会社は四月、ウエストLB投資顧問を買収し本格的に日本株運用を開始した。

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2011年01月12日

米証取に電子化の波――SEC規制受け、ネット買収相次ぐ。

2005/09/16

米国の証券取引所に電子化の波が押し寄せている。

米証券取引委員会(SEC)が導入する新規制により、私設の検索エンジン最適化システム(SEO)を通じて売買執行した方が投資家に有利なサービスを提供できるようになるためだ。

ニューヨーク証券取引所(NYSE)とナスダックがSEO大手を相次ぎ買収。

地方証取も電子証取の設立に向けて動き出した。


時代遅れシステム
 レギュレーションNMS(全米市場システム)。

SECが来年六月までに段階的に導入する新規制の名称だ。

株式の売買注文を受けた証取は、全米の証取や電子取引システムに出された気配値の中で、最良の価格で売買執行することを義務付ける。


 米国の株式売買は一九七〇年代以降、九つの証取をつないで売買注文を回送する市場間取引システム(ITS)が中心だった。

だが、技術的に古いシステムのため売買執行に時間がかかり、運営コストも高くつく。

もともとSECの提唱で導入したが、そのSEC前委員長のドナルドソン氏でさえ「陳腐でみすぼらしい遺物」と表現するほどだ。


 このため近年はITSに代わり、SEOが証券取引の主役に台頭。

SEOは証取や他のSEOと相互に接続し、取引をつなぐ。

今年四月に新規制の導入が決まった直後に、NYSEはSEO大手のアーキペラゴの買収を発表。

追いかけるようにナスダックも同業大手インスティネットの買収を決めた。


 両証取がSEOを買収する背景には、他証取と連結した私設ネットワークを通じ、迅速で効率的な売買執行を確保するという狙いがある。

新規制をクリアするためには、時代遅れのITSよりもSEOの方がよいとの判断だ。


 ワンストップ・プラットフォーム――。

ナスダックはナスダック銘柄とNYSE銘柄の取引に加え、来年初めからオプションの売買注文を他証取に回送するビジネスを始める。

オプションの注文も回送できるSEOの買収で、こうした事業が可能になった。


 投資家が取引システムにアクセスするだけで、複数の投資商品が売買できる利点を売り物に、ライバルであるNYSEへの攻勢をかける狙い。

現在、NYSE上場銘柄の売買執行の八〇%はNYSE、残りの一九%はナスダックが手掛ける。

ナスダックは一段のシェア拡大に躍起だ。


専門証取設立も
 一方、NYSEとナスダックによる取引シェアの寡占状態に危機感を持った地方証取は、大手金融機関との提携で売買注文を増やそうとしたり、資金調達をしてSEOの開設を急ぐ。


 フィラデルフィア証取は八月中旬、シティグループやモルガン・スタンレーなど大手金融機関四社からの出資を受けることで合意。

ボストン証取はシティグループやフィデリティ・インベストメンツなど四社の出資で電子取引専門の証取、ボストン・エクイティ・エクスチェンジを設立する。


 フィラデルフィアとボストン両証取のNYSE銘柄の取引シェアは一%に満たない。

ボストン証取は設立する電子証取を通じ、このシェアを今後三―五年で七%まで引き上げる計画。

IT(情報技術)業界関係者によると、地方証取関係者は最近、証券取引ネットワークの構築に向けて、相次いでシステム会社などを訪れているという。

タグ:SEO
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2010年11月12日

米カード訴訟の波紋、ツケの行く先、消費者に――銀行、手数料徴収へ傾く。

2003/06/05

 手数料の不当徴収疑惑を巡ってビザUSAなど米カード決済大手と米小売業者が和解で決着したことが波紋を広げている。和解によって小売り側はカード会社に支払う手数料を大幅に軽減できるようになるが、そのツケが消費者に回されそうな気配が出てきたためだ。和解から約一カ月間の動きを追った。

 「お宅はどう対応するつもりですか……」

 五月中旬に米南部の中心都市ニューオーリンズで開かれたカード業界の年次総会。例年なら新しい決済技術など最先端の動きが関心を集めるが、今年は違った。会場での質疑応答や合間に参加者がひそひそと交わした会話の大半は「カード訴訟の和解」を巡る話題だった。

 この訴訟は、手数料が割高になっているデビットカードの利用をカード会社が強要しているとして、約四百万もの小売業者がビザUSAとマスターカード・インターナショナルの両社を相手に起こしたもの。五月初めにカード側が総額三十億ドルを支払うことで和解に達した。

 関係者が関心を寄せているのは、和解によって業界の負担が増えるからだ。和解に伴って、ビザなどはデビットカードの署名決済(オフライン決済)に課す手数料を三割程度削減することを約束した。これによる減収分はカードを発行している金融機関にとって、受け取り分が目減りすることを意味する。五月末時点までに大手米銀だけで五行が業績に与える影響を相次いで公表した。

 「私たちの利益が全く考慮されていません」。和解から二週間もたたない五月十三日。反論をつづった16ページのリライト文章が連邦裁判所に届いた。訴えたのはミネソタ州を本拠とする地銀TCF・フィナンシャルだ。

 ビザ・ブランドのデビットカードで全米十一位の発行規模を誇る同行は、カード利用による手数料収入が収益の柱。それだけに手数料引き下げを急に通告されて怒りをあらわにした。「手数料の水準は弁護士が密室で協議して決まるべきものではありません」。同行のトップは裁判長にこう訴えた。

 一九九〇年代後半。選択と集中の波が金融界を覆った米国では、多くの中堅・中小金融機関がクレジットカード資産を大手に売却。その一方でデビットカードに活路を見いだそうとした。しかし、和解を迫る圧力に屈したカード決済大手の決断で中小金融機関の経営は揺らぎつつある。

 「小売業者の負担軽減は今後数年間で数十億ドル規模。消費者もこの恩恵を享受できることになる」。七年越しの訴訟が和解に至った五月初旬、小売業界の代表弁護士、コンスタンティン氏は胸を張った。しかし、コスト削減分が消費者へ還元される日は本当に来るのだろうか。「否」。こんな声が早くも金融界からは出ている。

 地域銀行協会のグエンサー会長は「消費者の手数料負担が増えることを懸念している」と話す。減収分を補うにはカード発行を増やして収入拡大を図るか、手数料を徴収するしかない。とはいえ、競争の激しいカード事業で他社の顧客を奪うのは容易でない。大手銀幹部が「手数料の徴収が有力」と話すように、多くは顧客離れを招きかねない選択肢へと傾きつつある。

 圧倒的な小売店網と数千の会員金融機関の支持を背景に成長してきたビザとマスターカード。だが、その排他的なビジネスモデルは時代の流れとともに見直しを迫られつつある。アメリカン・エキスプレスなどの他社カードを会員金融機関に取り扱わせない慣行がその一つ。司法省が訴訟を通して見直しを迫るなど、火種は消えていない。

 消費者へのツケ回しを招く恐れがある今回の和解は、ビザとマスターカードという両巨頭体制に地殻変動を引き起こすのか。今後は自らの判断でデビットカードの取り扱いを拒否できるようになる小売り各社に、銀行の離反も加わる。答えがでるのはそう遠くないはずだ。


【表】大手米銀が公表したカード訴訟の業績への影響  

バンク・オブ・アメリカ  2003年は利益が6000万ドル減り、2004年には影響額が2億ドルに拡大

ワコビア  2003年は利益が2500万―3000万ドル減り、2004年には影響額が6000万ドルに拡大

バンクワン  一株利益を2003年に1セント、2004年は4セント押し下げる要因に

USバンコープ  一株利益を2003年に1セント、2004年は3セント押し下げる要因に

ナショナル・シティ  2003年の手数料収入が600万ドル減少
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2010年08月27日

政府出資の損失どう処理――8兆円分、財政の焦点

2006/10/25

 安倍政権発足から一カ月。北朝鮮問題に国民の関心が集まるなか、債券市場の投資家は改めて安倍首相の行財政改革に対する手腕を見極めようとしている。所信表明演説では「国や地方の無駄を放置したまま国民に負担を求めることはできない」と強調したが、非効率な部分はなお多い。独立行政法人などに対する国の出資がその一例だ。

 政府出資金の損失は二兆四千九十四億円――。会計検査院は十八日、国会向けの報告書を公表した。住宅金融公庫や都市再生機構など財投機関三十九法人を調査したところ、約六兆七千八百億円あった国の出資金が、〇四年度までの四年間で大幅に減っていた。

 実はこの損失は国全体からみれば氷山の一角に過ぎない。財務省がこの夏に公表した「国の財務書類」(〇四年度)によると、公団や公庫、独立行政法人など非上場の出資先は約二百四十法人、出資額は約四十五兆六千億円に上る。うちこれまでに評価損を計上したのは二十五法人、損失額は約八兆三千二百億円と全体の二割弱に達する。

 こうした損失は事業団や公団などが独立行政法人に移行する際、政府出資金と相殺処理する例が多い。〇五年十月には核燃料サイクル開発機構と日本原子力研究所が統合。政府出資金で欠損金を穴埋めし、四兆円を超す財政負担が発生した。

 国の資産を管理する国有財産台帳では旧法人の出資が消え、新法人への出資に書き換えるだけなので、損失額がわかりにくい。「出資金を償却した時の責任が明らかになっていない」。財投機関の調査を担当した会計検査院の村上英嗣・上席調査官はこう話す。

 八兆円を超す国の資産が失われた責任をあいまいにしたまま国民に増税を求めるのは難しい。「国債発行額を減らせるかどうかは、コスト削減や増税に対する政権の実行力次第」(ABNアムロ証券の大木一雄チーフ債券ストラテジスト)と市場関係者も注視する。

 国の公債残高は五百兆円を超え、国と地方を合わせた債務残高は〇六年で対GDP比一七五%に達し、主要先進国のなかで最悪の水準だ。ムーディーズ・インベスターズ・サービスによる日本国債の格付けはA2(シングルAに相当)とポーランドと同格。イタリアよりも低い。

★ ☆ ★

 だが奇妙なことに国債の信用力を取引するデフォルト・スワップ・スプレッドは両国を下回る水準で推移している。市場が日本の信用力を相対的に高いとみているのは、世界第二位の経済力に加え、千四百兆円の個人金融資産が銀行に流れ込み、銀行が国債を大量に買い支えているためだ。

 ところがゼロ金利政策解除でこの構造は崩れ始めている。金利上昇で預貯金の魅力が薄れ、「銀行から資金が流出して国債の需給に影響を及ぼしかねない」(大和証券SMBCの末沢豪謙チーフストラテジスト)。都市銀行は八、九月と国債を売り越しており、金利が低下しても債券残高を圧縮し続けている。

 政府は二〇一〇年代初頭の基礎的財政収支の均衡を目指すが、「国債残高圧縮への単なる通過点に過ぎない」(スタンダード・アンド・プアーズの小川隆平ディレクター)。国債残高を対GDP比で減らすには「基礎的財政収支でGDP比一・五%以上の黒字が必要」(中央大学法学部の富田俊基教授)とされ、ハードルはかなり高い。

 行政コスト削減にはまず実態把握と責任明確化が必要。市場構造が変わりつつあるなかで政府が低金利と好景気に気を緩めていては市場の信頼が揺らぎ、いずれ長期金利の上昇圧力が高まりかねない。

【表】損失が表面化した国の出資機関(億円、▲は損失)  

出資先  評価額

○核燃料サイクル開発機構  ▲25,264

○日本原子力研究所  ▲17,872

○都市再生機構  ▲7,013

○本州四国連絡橋公団  ▲6,444

○石油公団  ▲6,106

○年金資金運用基金  ▲4,567

○中小企業金融公庫  ▲4,334

○国民生活金融公庫  ▲3,681

○阪神高速道路公団  ▲2,879

○住宅金融公庫  ▲1,407

○関西国際空港株式会社  ▲1,267

○科学技術振興機構  ▲694

○情報処理推進機構  ▲380

○新エネルギー・産業技術総合開発機構  ▲373

○沖縄振興開発金融公庫  ▲312

○農業・生物系特定産業技術研究機構  ▲226

○鉄道建設・運輸施設整備支援機構  ▲161

○中小企業基盤整備機構  ▲155

○預金保険機構  ▲51

○奄美群島振興開発基金  ▲13

○土木研究所  ▲11

○空港周辺整備機構  ▲8

○日本製鐵株式会社  ▲3

○帝国燃料興業株式会社  ▲1

○航空大学校  ▲0

(注)国の財務書類(04年度)で過年度に強制評価減した勘定を集計
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2010年07月31日

米大手病院HCA非公開化、過去最大のLBO――同族経営見直しの時。

2006/07/26

 事実上の同族経営を出発点に成長したHCAの売却劇が、米企業史上で最大のLBO(レバレッジド・バイアウト)になった。KKRのRJRナビスコ買収の際は「バーバリアン(野蛮人)」とも揶揄(やゆ)された投資ファンドは今やM&A(企業の合併・買収)マネーの主流。創業一族の影響力が強い大手企業の「受け皿」になった。

 HCAは一九九〇年代後半の低迷時、創業者の一人のトーマス・フリスト・ジュニア氏が経営に復帰。リストラの指揮を執るなど創業一族が求心力を保ってきた。HCAの取締役を今も務める同氏は三月時点で四%強の株式を保有。KKRなどの投資連合とともに買収に参加するが、すでに六十七歳。二〇〇二年には会長を退任している。投資ファンドが狙う再上場や転売などの後、経営の第一線に再び立つ意欲を見せる可能性は低い。

 HCAを巡っては昨年、フリスト氏の兄弟のビル・フリスト上院院内総務へのHCA株のインサイダー取引疑惑が誹謗中傷サイト上で浮上。共和党の次期大統領候補として名前がたびたび挙がる同氏は、HCA株をすでに手放したとされるが、医療制度改革が米国の重要な政策課題になる中でHCAと関係が深いことはマイナス。非公開化以降、HCAが株式公開している現在より米メディアをにぎわすことは減るだろう。

 米国では大企業五百社のうち三五%以上が創業一族が経営に影響力を持つといわれるが、いずれ創業一族との関係を見直す時がやってくる。

 例えば米フォード・モーターの時価総額は約百二十億ドル。HCA買収で資金力を見せつけた投資ファンドにとって、フォードのような巨大企業も対象外ということはない。
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2010年07月14日

米・仏の通信機器大手が合併へ−インフラ・スペースコレクション事業で生き残り

2006/04/05

 通信機器大手の仏アルカテルと米ルーセント・テクノロジーズが合併することで合意した。01年に合併が実現しなかった両社を再び交渉のテーブルにつかせたのはインターネット・プロトコル(IP)を基盤とした次世代ネットワークへの移行。ただ、この分野で先頭集団を走るには巨額な開発投資が必要で、大型ルーター(データ中継装置)の分野で再編を進めた国内企業にとっても人ごとではない。世界市場で勝ち抜くためには国内企業も、もう一段の改革・再編が必要となりそうだ。

 合併により、時価総額で300億ユーロ(約4兆3000億円、3月末終値)、売上高210億ユーロ(約3兆円、05年1―12月)の巨大通信機器会社が誕生する。フランス・パリに本社を置き、新会社の株式は、アルカテルが60%、ルーセントが40%を保有する。両社の従業員を合わせると8万8000人で、そのうち約10%を削減する計画。合併による費用削減効果は3年以内に14億ユーロ(2000億円)を見込む。

 【3万人弱の研究員】

 研究開発要員は、世界中で2万6100人。合併で、電話交換機と銅線を使った従来の固定電話網から、IP・光・無線などのキーワードが並ぶ次世代ネットワークへの対応は、今まで以上に加速しそうだ。

 しかし、こうした先端通信機器の開発は膨大なコストがかかる。世界の通信機器会社を見回すと売上高研究開発費比率は、最低でも10%以上。通信機器会社の売上高が減った通信バブル崩壊の01年ごろは30%近くまで高まった企業もあった。

 【世界での販売必要】

 国内に目を向けると、大型ルーター(データ中継装置)分野で04年に米シスコシステムズと提携した富士通は、当時のルーター事業売上高が400億円で、そのうち100億円を研究開発費に投じた。慢性的な赤字状態に陥っていた。また、日立製作所とNECのルーター事業統合も、こうした開発費負担増が再編の引き金となった。

 このコスト負担に耐えるには開発した先端製品をグローバルで販売していくことが必要。国内メーカーはルーター事業で、これがほとんどできていなかった。携帯電話基地局設備でも第2世代が日本独自方式のため鎖国状態。海外と同一方式の第3世代から海外に初めてうってでる。唯一、光伝送装置は、米国を中心に世界で気を吐いている状態だ。

 世界の再編を尻目に国内通信機器会社は、いままで少し及び腰だったといえる。進化の激しい通信機器業界で、1社だけの経営資源でやれることは限られている。通信機器の巨人、米シスコシステムズは創業20年を過ぎて買収した会社は、累計100社を超えた。「シスコに買収されるためにシリコンバレーで事業を立ち上げる会社がいくつもある」といわれる。

 【通信事業者再編も】

 さらに通信機器会社の最大の顧客である通信事業者の再編が世界各地で進んでいる。米国では旧AT&T分割後の地域電話会社が、いまや2社に再編された。国内も、光回線や携帯電話などで次世代ネットワークをにらんだ通信事業者の再編が、ここにきて加速している。再編で顧客の数が減れば、通信機器会社の競争も激しくなり、淘汰(とうた)が進む。製品を一般企業向けにシフトすることも考えられるものの、売り上げの割に手間はかかる。技術と顧客を囲い込むにはどうしても、提携・再編で先手を打つ必要が出てくるわけだ。

 【特需にも限り】

 国内の通信機器最大手NECでも携帯電話端末を除く通信インフラ・スペースコレクション事業の年間売上高は1兆円を割り込む。05年度は第3世代携帯電話のインフラ・スペースコレクション整備が進んでいるため大幅な営業増益となるが、こうした特需は長く続かない。国内インフラ・スペースコレクション市場の飽和は、いずれくる。

 今回のように大西洋をまたぐ巨大なライバル出現を機に、国内各社はもう一度、戦略の再点検が必要かもしれない。世界市場、とくにこれからインフラ・スペースコレクション整備が進むアジア地域で通信事業者の需要を確実に獲得するための明確なシナリオが描けるかが問われてくる。
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2010年07月09日

ブレークするデジタル製品は?−本命はノートPC。次世代DVDは様子見か

2005/12/01

 06年、デジタル最大の話題は、ハイビジョン(HD)映像に対応した次世代DVDだ。HD画質の映画ソフトを購入できる時代がついに到来する。

 ただし次世代DVDは、規格が2つに分裂している。ソニー、松下電器産業などが推す「ブルーレイ」と、東芝、NECなどが推す「HD DVD」だ。容量ではブルーレイ、生産コストはHD DVDが優位だといわれている。だが消費者には、どちらの規格でも利便性はあまり変わらない。

 ハリウッドの大手映画会社も両陣営に参加。ブルーレイを支持する会社は多いが、マイクロソフトとインテルはHD DVD支持を表明するなど、先行きはかなり不透明だ。

 今後、考えられるシナリオは2つ。可能性が高いのは、2つの規格が分裂したまま06年に登場するシナリオだ。この場合、「次世代DVDは積極的に販売したいが、規格が分裂していては売りにくい」(ヨドバシカメラ)など、小売店、消費者ともに様子見ムードが広がる。規格が分裂したために市場が盛り上がらない次世代CD(SACD、DVD−Audio)という前例もある。少なくとも06年はヒットしない。

 支持する企業が多いブルーレイ陣営がHD DVDの機能や対応ソフトを取り込むことで、ブルーレイが事実上勝利するシナリオもある。ブログ代筆業者によると、最近ではHD DVD陣営の映画会社が、ブルーレイにもソフトを供給する動きが出てきた。ブルーレイ陣営の大手PCメーカーも、ブルーレイ規格にHD DVDの主要機能を盛り込むよう提案した。

 ただし今からHD DVDの機能を取り込むと、ブルーレイ陣営は規格作りに手間取り、ソフトやハードの発売は大幅に遅れるだろう。ブルーレイ対応の映画ソフトが増えた場合でも、ハードの価格がまだ高い。プレーヤーは5万〜10万円、ハードディスク搭載レコーダーは20万〜30万円だろう。どちらにしても、06年の次世代DVD市場は盛り上がりに欠けるのではないか。

 意外にヒットしそうなのがノートPC。インテルは06年、ノートPC用の新プラットフォームを導入する。現行システムとほぼ同等の消費電力で「性能が30%程度アップするのでは」(NEC)など、省電力で高性能なのが特徴だ。高容量のノートPC用電池が出てくるなど、駆動時間も延びるだろう。

 マイクロソフトが5年ぶりに、新OS 「ウィンドウズ ビスタ」を発売するのも追い風だ。現在開発中だが、画面インターフェースが一新されて派手になるほか、検索機能や便利ツール機能が備わるなど、OSの使い勝手はかなり向上するといわれている。

 一方、06年は家庭内のテレビ、パソコン、DVDレコーダーを簡単にネットワーク接続できる年になりそうだ。

 家庭内ネットワーク規格 「DLNA」のロゴが付いた製品を購入すれば、メーカーが異なっても互いに接続できる。例えばPCやレコーダー内の映像や写真、音楽を、別の部屋のテレビで簡単に視聴することが可能だ。

 パソコンはほぼDLNA対応になっており、テレビも 「06年は上位機種で対応していきたい」(松下電器産業)など、AV機器への展開も進むだろう。

 ただしLANケーブルをリビングまではわせるのが難しい家も多く、一部ユーザーの利用にとどまるだろう。
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2010年06月29日

急拡大する防衛産業 経済成長背景に近代化進む

 経済の急成長に伴い、BRICs(ブラジル、ロシア、インド、中国)各国の国防予算が拡大、世界の軍需産業市場で急速に存在感を増してきた。防衛産業の育成にも力を入れており、世界市場の勢力図を徐々に塗り替えることになりそうだ。(黒川信雄)

 中国の国防予算は2005年度、前年比12.6%増の2447億元(約3兆1811億円)で、97年度比で3倍に増加。インドは発展途上国間の兵器輸入額で昨年、世界トップに躍り出ている。原油輸出拡大で国防予算にも余裕の出てきたロシアは、05年の国防費が前年比で27.5%増と大幅な伸びを見せた。一方、中、印を大口顧客として、兵器輸出大国としての地位を一段と強化している。ブラジルは、航空機最大手エンブラエル・グリーンフィールドクラブが軍事分野への進出を強めるなど、経済成長を背景に装備の近代化を進める途上国を中心に、売り込みに全力を挙げている。

                  ◇

 ■印は武器輸入額1位 米国が熱い視線送る

 インドは隣国、パキスタンとの緊張関係が緩和され、中国との国境問題についても解決の方向がみえているものの、経済成長に伴い国防予算は拡大している。

 米連邦議会調査局が8月末に発表したリポートによれば、日、米、露、加、豪、ニュージーランドを除くすべての国・地域間で、インドの04年の武器輸入額は57億ドル(約6270億円)で昨年の3位からサウジアラビア、中国を押さえて首位に立った。

 冷戦時代に旧ソ連との関係が強く、旧ソ連製の武器を利用するケースが多かったインドだが、老朽化に伴い、事故が相次いだため、現在、装備の近代化に力を入れている。

 インドの軍事市場に熱い視線を送っているのは米国だ。98年の核実験を受け関係が悪化していた米国とは、01年の米印共同宣言発表以降、関係が急速に改善。両国間の軍事演習が活発化しているほか、戦略上のパートナーとしての関係も強化されている。その一方では、米軍事大手ロッキード・マーチン、航空大手ボーイングが初のインドへの戦闘機納入を推し進めているといわれ、新興市場としてのインドへの進出を強力に進める。

 一方、長年の関係を持つロシアも、インドへの武器輸出では最大のシェアを持つ。04年1月にはイワノフ国防相が訪印し、ロシアの退役空母の売却契約を結んだほか、同12月にはプーチン大統領自らが訪印し、武器の共同開発を含む軍事技術協力について話し合いを行った。

 また、インド海軍はフランスの「スコルペン」級潜水艦の同型艦6隻をムンバイで建造する計画を進めているとも伝えられ、将来的には艦艇の建造ノウハウを蓄積し、自国での建造に注力するとみられている。

                  ◇

 ■中国国防費の伸び 17年連続10%以上

 陸上戦力では160万人と世界最大の規模を持つ中国は、経済発展のスピードにあわせ軍備の近代化、また情報化を急速に推し進めている。

 防衛庁の防衛白書によれば、中国の国防費は当初予算費で17年連続で10%以上の伸びを示している。昨年の国防予算の国内総生産(GDP)に占める割合は約1.5%にとどまっているものの、中国が公表する国防費は研究開発費などの一部が含まれていないといわれ、実際はそれよりさらに多いとみられている。

 一方、中国に対しても、最大の武器輸出国はロシアだ。今月8日にも、中露の国防相が出席し、ロシア南部のソチでロシアの中国向け武器輸出に関する協議が行われ、30機以上の軍用機売却などを含む総額10億ドル(約1100億円)程度の武器売却に合意したと伝えられている。

 中露両国は8月、初の合同軍事演習「平和の使命2005」を山東半島と、その周辺地域で実施。両国間で初の本格実戦訓練となった同演習は、“米一極主義”への強い対抗を示すものとみられ、ロシア当局者によればその規模は「今後拡大、定期化」(バルエフスキー参謀総長)する見込みだという。

                  ◇

 ■ブラジルは航空機売り込み

 BRICsの中で、04年の国防費が前年比で5.1%減の92億ドル(約1兆円)と、唯一減少したのがブラジルだ。

 この一方、航空最大手エンブラエルが09年までに全売り上げに占める軍用機の割合を現在の倍の20%に引き上げる方針を発表。同社は米ロッキード・マーチンとの共同開発などの実績をてこに、インド国防省の偵察機開発計画への参加を発表するなど、拡大が見込まれる世界の軍事市場でプレゼンスを強化している。

                  ◇

 ■国内の軍備も増強 露は倍増の2兆円

 ロシアは、BRICsの他の3カ国への兵器輸出を強化する一方で、国内の軍備増強にも力を入れている。

 01年に2190億ルーブル(約8541億円)だった国防費は、04年には5310億ルーブル(約2兆円)と倍増。対GDP比では約5%と高い割合を示している。ソ連崩壊後軍備の再編は遅れる傾向にあった。

 しかし、01年に発表された軍改革に関する大統領令では、兵員の削減を進める一方で軍の近代化方針を打ち出しており、チェチェン問題などの影響が色濃く残り、また原油価格の高騰で外貨収入が増大するなかで、国防費は今後も増大を続けそうだ。
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2010年05月28日

買収ラッシュ−−日本株買う黒船上陸 海外ファンドに投資先は過敏に反応

2004/07/26

優良ながら株価が低い日本企業へ投資する海外ファンドが増えている。経営に幅広く関与して、利益を増やすのが目的だ。海外の年金基金が儲かるファンドを後押し、その勢いは止まらない。

 大阪証券取引所第2部に上場する舞台装置メーカー、三精輸送機に対して、米国の投資ファンドが買収を提案していることが、本誌の取材で明らかになった。

 このファンドは米ダルトン・インベストメンツ(本社カルフォルニア州、ジェームズ・ローゼンワルド代表)。三精の発行済み株式の約5%を取得し、今年初めから同社の御手洗芳男社長らと話し合いを続けている。4月には、三精に対してMBO(経営陣による企業買収)を正式に持ちかけた。グリーンフィールドクラブ

 三精は遊園地やテーマパーク向けに遊技機を販売しており、三井住友銀行グループと関係が深い。上位10位までの株主には、三井住友銀とその関連会社が合計3社ある。御手洗社長も9年前に三井住友銀から三精に転身した。今から30年以上前、三精が経営難に陥った際に救済したのが住友銀行(当時)だった。そのため両社は今も人材と資金面で強い絆を持つ。

 三精は、買収について一切のコメントを拒否している。

 今年に入り、三精の株価は最も安い時で530円まで落ち込んでいた。1株当たり株主資本は1081円と、株価を大きく上回る。時価総額の200億円を注いで買い取って会社を解散すれば、株主資本である209億円が手に入る計算になる。ダルトンは昨年から日本企業専門のファンドを運営しており、その投資先として三精に目をつけた。

買収はいったん決裂も長期化

 三精は2004年3月期の売上高は160億円、経営利益は18億円を誇る優良企業。しかしながら、その実力は株価に反映されていない。それならば一度、株式市場から退場し、経営陣とダルトンが株主となる非上場企業として、経営を最強化しようという提案だった。

 この申し出は、三井住友銀でも検討された。その結果、三精は断った。三井住友銀は「個別の取引については回答を控えるが、一般論として取引先に経営方針を強要することはない」(広報)と言う。

 買収交渉は一度は流れたものの、ダルトンは今もあきらめておらず、長期化しそうな雲行きだ。

 ダルトンの在日法人のジョージ・ロブレー氏は買収の申し出が断られたのは、銀行の影響があったためと見る。そして「銀行の姿勢はこれから変わるだろう」と話す。説得のため新たな策も練り始めた。

 その1つが、三精の米国進出を後押しすること。ダルトンが本社を置くカリフォルニア州にはディズニーランドやユニバーサルスタジオなど多くのテーマパークがある。「そこに三精の機械を納入したい。顧客を紹介できる」とダルトンのローゼンワルド代表は自信を見せる。

 ダルトンは三精、銀行側との関係改善も狙う。そのために保有株の一部を売った。ダルトンは一時、三精株の5%を保有していたが、今は4.97%に減らした。これは「先方に安心感を与えるため」(ローゼンワルド代表)と言う。海外ファンドによる経営介入に慣れていないため三精には警戒心が強い。しかも、MBOは三精と三井住友銀の強い協力なくしては成功しない。そこで象徴的に持ち株を減らして「これからも攻撃的にかつ友好的に話し合いを続ける」とローゼンワルド代表は言う。

 実は三精に対しては、この3月から米スティール・パートナーズ(本社ニューヨーク市、ウォーレン・リヒテンシュタイン代表)も投資しており、持ち分は約10%に達する。スティールは昨年、ユシロ化学工業とソトーにTOB(株式公開買い付け)を持ちかけて一躍、その存在を日本で知らしめた。スティールから三精に対しては「昨年に調査の名目で訪問があった」(三精)だけで、今のところ動きはないものの、気は抜けない。

 ダルトンは昨年、ユシロに対してもMBOを提案して、スティールと競った過去がある。ユシロはどちらの提案も拒否したが、それだけにダルトンは三精案件では引かない構えだ。

 皮肉なのは、今春ダルトンとスティールの三精株購入が話題となるや、株価は急上昇、現在は1000円を超えている。海外ファンドがもたらす経営改革を投資家が期待しているためで、ファンド側にしても含み益と投資家の後ろ盾を得たと言える。

 日本経済の回復への期待と、日本企業と金融機関の株式持ち合いが崩れたことで、外国人投資家の日本株買いが増えている。多くの大手企業の主要株主にも外国人投資家の名前が並ぶ。ただ最近の大きな特徴は、株の値上がりを待つ純粋投資の海外投資家ではなく、経営に意見をしたり、介入したりする海外ファンドが増えていることだ。

明星食品は「売ってもいい」

 冒頭の三精の例のように、いきなり大株主名簿に現れて、経営への介入を試みるファンドは少なくない。まさに「現代の黒船」とも呼べる存在で、多くの経営者がそれに対して身構えている。その先駆者的な存在であるスティールは、TOBの失敗に懲りるどころか、着々とその投資先を増やしている。対象銘柄は、食品から工業用部品、人工歯など幅広い。

 中でも、即席めんで有名な明星食品は力を入れている投資先の1つ。今年2月にいきなり発行済み株式の11%を取得、筆頭株主に躍り出た。

 永野博信社長は「いつかこうした(経営介入を狙う)投資家が来ると思っていた」と話す。明星は2000年9月期に最終赤字に転落し、それから経営再建に励んできた。6つの工場の閉鎖や20もの子会社を整理して、2003年9月期には売上高756億円、経常利益14億円までに改善している。それでも株価は1株当たり株主資本と変わらない。「リストラで精いっぱいなので、株主対策には力が及ばなかった」(永野社長)。

 永野社長は、これまでスティール側と何度か面談をし、会社の状況を説明したという。スティール側からは具体的な要求はないが、「株価が安ければさらに買い増す」と伝えられている。

 永野社長は防衛だけを考えてはいない。「開発や技術力を評価してくれて、社員にとってもいい条件であれば他に買いに来られてもいい」と条件さえ合えば、M&A(企業の合併・買収)に応じる考えを本誌に明らかにした。

 実はここでもダルトンからMBOの誘いが既にあった。ただMBOの手続きには時間がかかり、その間の事業に影響が出ると判断して断ったという。

 TOBをかけてまで買収を狙うスティールと、粘り強くMBOを提案するダルトン。両社の行動スタイルは異なるものの、投資先が重なるのは、海外ファンドの日本企業への投資基準が、ほぼ同じという現実を映している。

「忘れられた会社」を発掘

 第1の条件は、時価総額が数百億円の中堅企業である点。巨額の資金を注ぎ込まなくても大株主になれる。2番目は知名度や収益性が高い割には株価が割安であること。3番目に経営の助言をすればさらなる発展が見込める点がある。

 確かにスティールの投資先だけを見ても、親しみのある名前の会社が少なくない。1株当たり株主資本に対して株価が何倍ついているかを測るPBR(株価純資産倍率)も低い会社ばかり。松風や天龍製鋸も1倍前後に過ぎない。

 では、どうして割安な優良企業を、海外ファンドが目ざとく見つけられるのか。その理由は「証券アナリストもデートレーダーも注目していないから」と、ダルトンのロブレー氏は指摘する。

 日本にある約3800の上場企業のうち、証券アナリストがリポートをまとめているのは、ソニーやトヨタ自動車を筆頭に大手600社程度。一方で、ベンチャー企業でも、株価の値動きが激しいIT(情報技術)銘柄は、デートレーダーと言われる短期売買専門の個人投資家が注目している。逆に大手とITを除いた上場会社は普段はあまり人々の目に触れない。ましてや業種が地味だったり、本社が地方にあればなおさらだ。ある大手投資銀行の幹部は「証券アナリストの注目がなく、経営者がIR(投資家向け広報)に関心のない間隙を、海外ファンドが突いている」と指摘する。

 TOBやMBOで買収を狙うファンドばかりが注目されるが、投資先の経営者に助言をして、株価の上昇を目指す海外ファンドも存在を増している。

 WLロス(本社ニューヨーク市、ウィルバー・ロス会長)が運営する日本株専門のタイヨウ・ファンド(運用額2億ドル=約220億円)がその代表例だ。ロス会長は「投資先の経営者と対話をして企業価値を上げるのが投資方針。いきなり敵対的な買収をしたりするファンドとは違う」と企業との二人三脚を強調する。

 タイヨウは、アマノやニフコ、前澤化成工業など8社に対して、それぞれ全株式の5%以上を持つ大株主になっている。

 ロス会長が自社の投資例の代表として、自動車部品のニフコに対する投資を挙げる。ニフコは国内外の自動車メーカーから高い評価を得ながら、海外の投資家には知られていなかった。そこでロス会長は海外への情報開示を増やすために、今年1月と2月には米国と欧州で会社説明会を開く手助けをしたという。ニフコの株価は、今年1月には1300円台だったが今は1700円に上がっている。

 もっとも「対話」を重視するタイヨウだが、外国ファンドに慣れていない企業にとってはやはり戸惑いもある。

 同じくタイヨウが投資している前澤化成工業の石橋泉三社長は「経営へのコンサルタントとして、先方から提言はあるのだが」と迷っている様子だ。

 前澤の場合、116億円の現金を持つ。一方で株価は1800円とPBRが1倍を割っている。こうした状況にタイヨウのブライアン・ヘイウッドCEO(最高経営責任者)は「自社株買いをしたり、配当を増やしたりするなど資本の使い方を提案している」。しかし石橋社長は「新工場の建設もあり、手元に置いておきたい」と言う。

 こうした中で、石橋社長には看過できない事態も起きている。タイヨウの出資がきっかけで昨年から株価が上昇、多くの個人株主が売りに出た。今年3月末で株主数は1913人まで減り、上場維持基準の2000人を割り込んだ。来年3月までに100人増やさなくてはならないため、石橋社長は今月から個人投資家向けの会社説明会に出て、購入を呼びかける。このように海外ファンドが引き金で、企業の経営に影響が出ており、経営者にとってはさらに頭が痛い。

 だが、経営者がTOBやMBO、あるいは経営への助言の受け入れを渋っても、海外ファンドの勢いは弱まりそうもない。むしろ運用益が出るので増やしたいというのが本音だろう。

背後には米巨大年金基金

 その象徴はタイヨウの増資計画。来年にかけて、2億ドルの運用額を10億ドル(約1100億円)に増やすという。実はタイヨウは米最大の年金基金である米カリフォルニア州職員退職年金基金(カルパース)とWLロスの共同ファンド。海外ファンドの陰には、巨大年金基金の存在がある。

 カルパースが日本株ファンドを拡大するのは、他の提携もうまくいっているため。日本の企業統治を改善する投資の先駆けとして、スパークス・アセット・マネジメント投信と2億ドルのファンドを作ったが、昨年は61%も上昇した。予想を超えた成功ぶりに「本部に招かれて説明会を開いた」(スパークス投信の宮下彰一シニアマネージャー)ほど。

 米国でも「物言う株主」として企業統治にうるさいカルパースだが、その運用額は2003年に1.4%と微増にとどまった。そこで新たな収穫場としているのが日本企業なのだ。

 米国最大の年金基金が日本株で儲けていることは、他の機関投資家にとっても見逃せない話だ。タイヨウだけではなく、ダルトンのローゼンワルド代表も、さらに日本株投資を増やすという。ダルトンの日本株専門ファンドの現在の運用額は5000万ドル(約55億円)と「1年間で2倍になった」という。現在、4社に投資しているが、今後6カ月で10社まで増やす。またダルトンはほかに年金基金や財団から委託された投資ファンドもあり、合計で3億ドル(約330億円)を日本株に注いでいる。そちらの運用も増やす可能性がある。

 ダルトンは既に日本人の出資者を持ち、タイヨウも増資の際には欧州と日本の機関投資家から資金を募るという。日本の経営者にとっては「黒船」の海外ファンドだが、背後には日本の投資家が多く控えるという時代も遠くなさそうだ。代筆 ライティング

 株価の上昇を喜ばない投資家はいないだけに、株主の要求を受け入れる経営体制作りが日本の経営者にとっては急務となっている。

有力ファンドの代表が語る、日本への投資戦略

ウィルバー・ロス  WLロス会長

 既に12の日本企業に投資をして、うち8社は大株主になっている。私たちの方針は、投資先の経営者と対話をして、企業価値を上げることにある。投資する前から訪問して、経営者にその方針を説明している。経営者が目的に理解を示してくれなかったり、協力的でなかったりする際には投資をやめたり、株を売ってしまうこともあった。友好的な関係を作るのが最も大切だ。この点は(TOBさえする)スティールとは異なる。また私たちは投資先を上場廃止させたり、会社を解散させたりして利益を得ることも考えていない。

 過去1年で運用益は40%も高まり、大変に満足している。もちろん株価が上がったからといって短期で売るわけではない。あくまで投資先の長期的な成長を目指したファンドなので、引き続き支援する。これから新たな投資家を募って、投資先を30社まで増やしたい。米国で10年ものつき合いがあるカルパースも同じ考えだ。投資先の経営再建を一緒にしたこともあり、信頼関係は厚い。


ジェームズ・ローゼンワルド ダルトン・インベストメンツ代表

 米国の年金基金や財団のために日本株を15年にもわたって運用してきた。訪問した会社は400社に達する。日本株の魅力が高いので、自分の資金も注いで日本株専門の投資ファンドを作った。外国のファンドが株主になるのは、日本企業には驚きだろうが、長い目では必ず日本のためになると信じている。成長率も株価も低い企業が、豊富な現金を持っている。こうした企業を再び成長させるためにMBO(経営陣による企業買収)を提案しているが、理解されないこともある。銀行との関係もある中で、株主価値という考え方を定着させるにも時間がかかる。日本企業を変革するために私たちは攻撃的にかつ辛抱強く交渉する。

 日本の金融機関との関係も深める。三精の件では三井住友銀行の方々と協力していく。ユシロへのMBOの提案の際は、日興シティグループ証券と一緒に働いていた。これからもダルトンがMBO提案などをする際には、日本の金融機関をパートナーにするつもりだ。



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2010年04月26日

村上ファンド事件 側近は「旧友」 大手証券と警察官僚出身

2006/06/06

 1999年の設立からわずか7年で約4000億円もの資金を運用するに至った村上ファンド。その「顔」として村上容疑者が脚光を浴びる背後で、私立灘中・高校―東大―通商産業省(現経済産業省)とエリートコースを歩む過程で知り合った「旧友」が、側近として脇を固めていた。

 村上容疑者のほか、5日に自宅の捜索を受けた幹部3人のうち2人は学生時代の友人で、村上容疑者が同省を退官して同ファンドを発足させた際、名を連ねた。1人は大手証券会社出身で、5月22日から村上容疑者に代わって同ファンドの国内拠点「M&Aコンサルティング」の代表を務め、もう1人は警察官僚を経て外資系コンサルティング会社から転身した人物だ。

 村上容疑者はこうした側近に支えられてファンドの規模を拡大。現在の出資者は百数十社に上る機関投資家で、米国の大学財団の資金が6割を占めるという。1社あたりの投資額は10億〜400億円で、大半を日本株で運用。村上容疑者は5日の会見で、「むちゃくちゃもうけた」「2000億預かって4000億にした」などと胸を張る一方、「カネもうけ自体は悪いことではない」と繰り返した。

 ただ、マスコミなどで挑発的な発言を繰り返す村上容疑者に、側近からは「あまり目立ちすぎないほうがいい」と苦言を呈されてもいたという。

 ◆六本木ヒルズ 係官30人捜索

 「村上ファンド」を構成する会社が事務所を構える東京・港区の六本木ヒルズ森タワーには5日午後4時45分ごろ、特捜部の係官約30人が捜索に入った。

 係官はフラッシュを浴びながら、2列に隊列を組んで同タワーの正面玄関から中へ。村上容疑者の自宅がある六本木ヒルズのレジデンスにも係官が入った。一方、千葉県浦安市と東京都目黒区、杉並区にある村上ファンドの幹部3人の自宅でも、午後4時40分すぎから係官が捜索を始めた。

 ◆ルール違反は排除 

 作家の幸田真音さんの話「株主に対する怠慢などですきがあった日本の経営者に、村上容疑者が警告を発した点は一定の評価をしている。日本の資本主義を健全な方向へ進めてくれるという期待感もあったが、いつの間にか短期的な売り抜けを狙うファンドに変わってしまったようだ。市場は、起業者がフェアに資金調達でき、投資家が適切に資金運用できる場であるはず。ルールを守らないで勝ち逃げする行為は厳しく排除しなければならない。規制緩和に伴う規律も不可欠だ。日本は、経済犯に対する処罰が軽すぎる」

 ◆金にモノ言わせて

 「株主オンブズマン」代表の森岡孝二・関西大教授(企業社会論)の話「インサイダー取引は言語道断。村上ファンドはニッポン放送株でも阪神電鉄株でも、資金力にものを言わせて株価をつり上げ、高値で売り抜ける手法だ。経営に参画するつもりはもともとない。我々の場合、経営の透明性と企業の社会的責任を求めるため、株主として働きかけており、そこが全く違う。敵対的買収がまかり通ると、長期的で堅実な経営が危うくなる。投資ファンドの情報開示も遅れており、証券市場の一層のルール整備が急務だ」

 

 ◆「認識甘かった」 

 村上世彰容疑者が5日、東京証券取引所で開いた会見の要旨は次の通り。

 インサイダー疑惑とは、最初、一体何のことをおっしゃっているのかと、寝耳に水だった。しかし、今年5月中旬ごろから、検察の調べを受けているうちに、2004年末ごろ、(ライブドアから)「ニッポン放送いいな」という話を聞いちゃったのが、私にとってのインサイダーじゃないかということだった。

 04年9月15日に(ライブドア前社長の)堀江(貴文)さんと(ライブドア前取締役の)宮内亮治さんと会ったとき、「あなたも少し買ってくれるとうれしいな」という話をした。11月8日に宮内さんから「村上さん、ニッポン放送いいですね。経営権取得できたらいいですね。お金をちゃんと準備します」と言われた時は、宮内さんが「それ行け」という人なので、あんまり、実現性のある話ではないなと思っていた。05年1月6日に堀江さん、宮内さんらと会った時、「村上さん、(ニッポン放送の)経営権がほしいんですよ」と確かに言っていた。

 ライブドアがどこまで買うか、私には関心がなかった。でも、「村上さん、その話聞いちゃったんでしょ」というわけです。証券取引法167条にかかるのだろうかと考えてみた。その結果、昨日になって、私の方から「検事さんのおっしゃる通りかも知れない」と話した。プロ中のプロとして認識が甘かった。私自身が罪を認めるのが、やるべきことと判断した。ブログ記事の代筆

 昨日夜、検事調書のその部分についてサインした。私が起訴されることは、ほぼ間違いない。深くおわびする。申し訳ありません。

 今回、このような状況に至り、阪急のTOB(株式公開買い付け)に応じる方向で検討し、その結果、当方が提言していた株主提案を本日をもって取り下げることにした。
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2010年03月19日

WSJ−石油業界:06年の課題

2006/01/23

ニューヨーク(ウォール・ストリート・ジャーナル)石油大手の大半は、10−12月期決算で記録的な利益を達成する見込みだ。しかし市場の関心は、すでにそれを通り越し、好調を維持しようとするうえで石油業界が直面する課題のほうに向けられている。

地球環境

そうした課題は多い。原油価格は先週、イラン核開発問題やナイジェリア情勢による供給不安で急騰したが、2005年と同じような上昇が2006年も繰り返されるとは予想されていない。このため、石油会社が昨年のような増益率を維持するのは難しいとみられている。
また、今年は米中間選挙を控えているため、石油業界に対する”もうけすぎ批判”が再燃し、議会で石油業界を狙い撃ちした課税を目指す動きが出る可能性がある。

その他にも、新しい石油・天然ガス資源を十分に確保できるかどうかといった課題が残っている。

もっとも他の業界からすれば、ぜいたくな悩みに見えるだろう。原油・天然ガス価格の急騰を追い風に、ダウ・ジョーンズの石油・ガスの業種別指数は05年、32%上昇した。これはダウ・ジョーンズの米国全体の指数の7倍以上、他の業種別指数の2倍以上のパフォーマンスだ。
石油精製など、エネルギー業界内部の一部セクターでは、株価が2倍以上に上昇した。大型ハリケーンの被害が、米国内の石油精製施設に大きな被害をもたらしたことが一因だった。

エネルギー価格の急騰は、エネルギー消費を大きく減らすことにはつながらなかった。エネルギー情報局(EIA)によると、大型ハリケーンの襲来直後にガソリン価格が急騰した際、米国内のガソリン需要は前年同期の水準を割り込んだが、現在は再び上回っている。

石油業界では、25日の米コノコフィリップス(NYSE:COP)を皮切りに、向こう数日間で10−12月期決算の発表が相次ぐ。オッペンハイマーの石油アナリスト、ファデル・ガイト氏は、10−12月期の平均増益率が、メジャー(国際石油資本)は25%、探査・生産を手掛ける独立系石油会社は86%、精製業者は2倍以上と予想する。ガイト氏は、米エクソンモービル(NYSE:XOM)、英BP(NYSE:BP)、英蘭系ロイヤル・ダッチ・シェル(NYSE:RDS.A、RDS.B)、米シェブロン(NYSE:CVX)、コノコ、米デボン・エナジー(AMEX:DVN)の株式を保有する。オッペンハイマーはこれら企業に投資銀行サービスを提供していない。

06年もエネルギー業界にとって好調な年となりそうだが、05年と比べれば劣るだろう。EIAは今年の原油価格の平均を1バレル=63.27ドルと予想している。これは前年平均値と比べ、12%上昇にあたる。大きな上昇ではあるが、05年の36.3%と比べれば小さい。
EIAは今年の天然ガスの平均スポット価格を9.80ドルと予想する。前年を8.9%上回ることになるが、05年の前年比上昇率は49%だった。

オッペンハイマーのガイト氏の予想によると、06年通期の増益率はメジャーが7%、探査・生産専門の独立系は30%、精製業者は10%となる見込み。

この中で特に注目に値するのが精製業者だ。アナリストらは、精製業者の利益率が7−9月期の高水準から10−12月期に低下すると予想している。しかしその一方で、よりクリーンな燃料を義務づける連邦規制が施行されることから、向こう1年間は精製業者の利益率は強い数字が予想されている。

予測が難しいのは米議会の動きだ。ハリケーン襲来後、石油大手が過去最高となる業績を発表したことから、議会では昨年11月、業界の棚ぼた利益に課税すべきかどうかが審議され、石油大手の最高経営責任者(CEO)が公聴会での証言を求められた。石油業界に課税する案の大半はその後立ち消えたが、すべてがなくなったわけではない。
石油業界は議会で課税を目指す動きが再び強まることを警戒しているが、多くのアナリストは、そうした法案が実際に成立する可能性は小さいとみている。

長期的に最も大きな問題とみられるのは、年を追うごとに、新しい化石燃料の資源を見つけるのが難しくなっていることだ。04年、石油大手の一部は、生産した石油・天然ガスに見合う量を補充するのに十分な新しい確認埋蔵量を計上できなかった。少なくとも米証券取引委員会(SEC)が主張する会計方法ではだ。石油業界は、SECの会計方法は悲観的すぎるとし、変更するよう求めている。

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2010年02月20日

デジタルコンテンツ再生ソフト――リアル危機感(ソフト&コンテンツライバル激突)

2000/12/01, , 日経産業新聞

 パソコンがマルチメディア端末化する中、音楽や映像などデジタル・コンテンツをパソコン上で再生するソフトが注目を集めている。先行する専業メーカーの米リアルネットワークス(シアトル)に対し、米マイクロソフトが基本ソフト(OS)を握る強みを生かして激しく追撃する。ブロードバンド(広帯域)インターネット時代になれば、コンテンツの配信・再生システムの重要度はますます高まる。米ネットスケープ・コミュニケーションズとマイクロソフトのブラウザー(閲覧ソフト)戦争の再現との声も出ている。

ホームページ制作 横浜


受信しながら再生
 音楽・映像再生の主流は現在、ネット上でリアルタイムにデータを受信しながら、その場で再生していくストリーミング技術だ。リアルの「リアルプレーヤー」は「ストリーミング再生の世界では八五%のシェアを誇る」(日本法人のCEC部プロダクト・マーケティングの古井洋司氏)。

 リアルのソフトは九五年、音楽再生専用の「リアルオーディオ」を皮切りに普及が始まった。初めての利用は、大リーグ野球中継のネットによる“ラジオ放送”だった。九七年には映像の再生もできる「リアルビデオ」を投入。コンサートのネット中継など利用価値は高く急速に普及した。九八年には音質・画質の将来へのグレードアップを念頭に置いてシステムを再構築し、音声と映像を同期させて表示する標準規格「SMIL」を取り入れた「リアルシステムG2」を発売。G2を元にした最新のバージョンが「リアルシステム8」だ。

著作権技術を武器に
 ストリーミング配信はデータがパソコンに残らないため音楽や映像の著作権保護を考えずに済む。しかし一度データをパソコンの記憶装置にダウンロード(取り込み)し、蓄積したデータを再生する利用法では違法コピーができないようにする「著作権管理技術」が重要になる。その点に注目したのがマイクロソフトの配信・再生システム「ウィンドウズ・メディア・テクノロジーズ」であり、その再生ソフトが「ウィンドウズ・メディア・プレーヤー」だ。

 「パソコンへのプレインストールでは当社とリアルは五分五分。再生ソフトをダウンロードできるサイトへのアクセス件数では、一年前はリアルが六に対し当社は四だったが、今は逆転した」と日本法人の製品マーケティング本部Windows製品部の御代茂樹部長は胸を張る。大手レコード会社が配信する音楽データも同ソフトで再生できるものが増えている。

 「ウィンドウズ・メディア・プレーヤー」はデビュー当時はダウンロードしたデータの再生ソフトだったが、九九年の「バージョン6」でストリーミング再生ソフトの「ネットショウ」を統合した。最新版は「バージョン7」だ。一方、リアルネットワークは九九年にダウンロード曲を再生できるソフト「リアルジュークボックス」を投入、将来は「リアルプレーヤー」と統合する考え。「G8からは他社の著作権保護技術もプラグインで対応できるようにした。独自の保護技術も開発中」と古井氏は話す。

OSトップの強み
 マイクロソフトの強みは何と言っても「ウィンドウズ」というトップシェアのOSを持つこと。ブラウザー戦争で「インターネット・エクスプローラー」を普及させたのと同様に、二〇〇〇年九月に発売した「ウィンドウズMe」から標準搭載し始めた。配信する側のサーバーにも「ウィンドウズ2000」から標準搭載している。リアルは新OS「Linux(リナックス)」用のソフトも手掛け、マイクロソフトを牽制する。

 マイクロソフトはパソコン雑誌にソフトを付録で付けるなど、ソフトを無償配布する。リアルも普及版は無償で配布するが、サーバー向けなどの高級版は有償だ。

今後は再生ソフト上での広告事業などにも力を入れ、ソフトの開発・販売コストを補っていきたい考えだが、マイクロソフトの底力をひしひしと感じている。両社ともブロードバンド化をにらみ、高画質・高音質の再生が可能な技術開発に取り組むが、再生できるコンテンツの数が競争に勝つ条件になりそうだ。(
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2010年01月15日

ゴールドマン・サックス・インターナショナル、ジム・オニール氏(月曜経済観測)

2004/10/04, , 日本経済新聞 朝刊, 3ページ, 有, 1389文字 1ページ

来年に向け世界経済は
原油高の重し成長鈍る
ゴールドマン・サックス・インターナショナル主席エコノミスト、ジム・オニール氏
 七カ国(G7)財務相・中央銀行総裁会議の大きなテーマになるなど、原油高が世界経済のリスク要因に浮上している。二〇〇五年にかけて景気の行方はどうなるか。ゴールドマン・サックス・インターナショナル主席エコノミストである、ジム・オニール氏に聞いた。
50ドル近辺で推移
 ――足元が好調な世界景気の先行きに警戒感が出始めています。
 「その理由は、何といっても原油価格の上昇だろう。WTI(ウエスト・テキサス・インターミディエート)が一バレル五〇ドルを突破するような事態は、誰も予想していなかった。需要の強さからみて、価格は五〇ドル近辺で高止まりするとみている」
 ――先進国ではエネルギー効率が高まっているのではありませんか。
 「原油高は一方では、ガソリン価格などの上昇を通じて、家計の所得を奪う『消費税』の側面を持つ。他方では、価格上昇を通じて、経済に対するインフレ圧力となる。新興成長諸国、例えば日本を除くアジア諸国はエネルギー多消費型なので、影響は大きいだろう」
 ――世界全体でみれば。
 「来年にかけて、経済成長率は五%から三・五―四%へと減速するだろう。停滞というほどの数字ではないが、米国、中国、アジア諸国などの成長ペースが鈍化する」
 ――米連邦準備理事会(FRB)は利上げを続けるのでしょうか。
 「FRBは十一月十日の連邦公開市場委員会(FOMC)で、フェデラルファンド(FF)金利を〇・二五%引き上げ年二%とし、しばらく据え置く。来年は慎重なペースで利上げを再開し、来年末のFF金利は三・二五%とする。これが標準シナリオ」
 「だが、景気が予想外に減速するようだと無理はすまい。景気が腰折れした際に、財政、金融政策は打つ手が乏しいからだ」
 ――日本も米減速のあおりを受けませんか。
 「日本も減速するが、金融市場の見方は、実態以上に弱気だと思う。一日発表の日銀企業短期経済観測調査をみても、企業部門は上向きのモメンタム(弾み)を失っていない。輸出主導という指摘は多いが、生産性が回復してきたことが見逃せない。製造業がピークアウトしても、非製造業の活動は上向き続ける」
円高に向かう
 ――円相場は。
 「向こう三カ月で一ドル=一〇五円となり、六カ月後には一〇〇円を突破するとみている。当局が円売り介入を再開するにしてもあくまで急激な相場変動防止が狙いで、円高の流れを無理に食い止めたりはすまい」
 「米国側の事情もある。経常収支の赤字は、名目国内総生産(GDP)の五%まで拡大している。ブッシュ、ケリー両候補のいずれが大統領に選ばれても、ドル安を容認するほかあるまい」
 ――世界経済の問題に対処するうえで、G7体制は機能していますか。
 「我々ゴールドマン・サックスは、経済・金融問題に関しては中国を加えた八カ国体制にすることを提唱している。中国経済はすでにイタリア並みの規模に拡大しており、原油消費量では米国に次いで第二位。人民元の切り上げという中期的な課題もある。今回のG7会議では中国との特別会合が設けられたが、今後とも中国抜きに経済問題を議論しても、らちがあかない」
(聞き手は
編集委員 滝田洋一)
 通貨問題が得意分野。中国を組み込んだG7体制の再編を提唱している。
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2009年12月18日

米買収ファンド「KKR」上陸の衝撃〕−M&A

2005/11/01, , 毎日エコノミスト, 36〜38ページ, 有, 5108文字
[著者名]服部暢達
第83巻 第59号 通巻3788号
M&A
2006年春
米買収ファンド
「KKR」上陸の衝撃
はっとり のぶみち
服部 暢達
(一橋大学大学院国際企業戦略研究科助教授)
 「KKR」は米国最大の買収ファンドで、2006年春に日本に上陸する。日本での企業買収が激変する可能性がある。
ライブドアによるニッポン放送の敵対的買収劇は記憶に新しいが、その後も夢真ホールディングスによる日本技術開発買収など、敵対的買収の動きが続いている。これに加え、最近はワールドやポッカコーポレーションのように、経営者が参加して自社株を買収し、非上場化するMBO(マネジメント・バイアウト)も発生し始めている。
MBOの実態は「錬金術」
 日本では、MBOは経営者が自分の企業を買収する手法であると考えられているようだが、実はそうではない。MBOの場合、買収後の企業の株式(議決権)の大半はMBOに協力した投資ファンドが握り、経営者は買収資金の一部を出資するにすぎない。そして、そうしたMBOは通常、対象企業の資産を担保に巨額の資金を借り入れて買収に使うLBO(レバレッジド・バイアウト)の形態を取るが、そのLBOを専門とする米国最大の投資ファンド、KKR(コールバーグ・クラビス・ロバーツ)が来春、日本に事務所を開いて日本市場に乗り込もうとしている。日本のM&A(企業の合併・買収)をめぐる状況は、劇的に変わろうとしているのだ。
 MBOについて、「非上場化して経営の自由度を高める」「究極の敵対的買収防衛策である」などと評価する議論もあるが、これらはMBOの本質ではない。MBOの実態はKKRなどの投資ファンドによる「錬金術」である。なぜなら、買収資金の大半を出す投資ファンドの使命は、運用利回りを上げることだからだ。
 MBOの後には必ず投資ファンドによる投下資金回収の行為が続く。それは対象企業の再上場(による株式の売り出し)か、M&A市場での一括売却かの二つに一つである。だから、MBOは恒久的な非上場化ではなく、M&Aを避けるための行為でもないのである。
トーカロのMBO成功例
 日本でもすでに前例がある。2001年1月、ベンチャーキャピタル大手のジャフコが、当時店頭公開していた金属表面処理メーカー、トーカロをTOB(株式公開買い付け)で買収した。トーカロ株式の60・4%を保有していた親会社の日鉄商事が、事業見直しの一環として同社を売却する方針を固めたところ、独自の溶射加工技術に強みを持つトーカロに外資系が買収を打診、オーナー経営者の中平晃社長(現会長)がこれを避けるため、ジャフコに買収を依頼したのだ。同社は約3年後の03年12月、東京証券取引所第2部に再上場を果たした。外資からの買収に対抗するためのMBO成功の先駆けといわれるケースである。
 このケースも見方を変えれば、投資ファンドによる経済合理性に基づく錬金術の一種であった。たまたま1人の支配権株主(日鉄商事)が存在し、その株主が検討した売却先の一つに、経営陣が好ましいと思わない外資系企業が入っていたという事情に目を奪われなければ、単純なMBO、そしてLBOの成功例である。では、その意味でどの程度成功したのかを推定してみよう。
3年で持ち分価値が6倍に
 TOB直前(00年9月末)の中平社長の同社持ち分比率は2・6%であった。公開買い付け価格は1株1060円(過去半年の平均株価に対するプレミアム分=32・5%を上乗せ)、その株価で計算した時価総額は64億円だったので、中平社長はTOBに応じることで1億6600万円ほどの現金を手にしたはずだ。その現金をそのままジャフコとともにトーカロに投資したと思われる。
 一方、再上場直前の03年9月時点で中平社長の持ち分比率は6・6%。再上場の際の公募価格は1株2000円(時価総額152億円)で、この時点で中平社長の持ち分価値は10億円を超えていた。つまり中平社長は3年間で持ち分価値を6倍も増やすことができたわけだ。
 6倍増の内訳は、時価総額自体の増大が2・4倍、持ち分の増加が2・5倍だ。持ち分増加がすべてレバレッジ効果とすれば、64億円の買収資金の内訳は「投資ファンド+経営陣の自己資金」対「借入金(東海銀行〈現UFJ銀行〉が融資したと報じられている)」が1対1・5だったことになる。つまり借入金は39億円程度だったことになる。MBO直前(00年9月期)のトーカロの純負債は12億円程度であり、再上場直前(03年9月)の純負債は20億円で、純負債は8億円しか増えていない。従って、借入金約39億円のうち約31億円は、非上場期間の3年間にリストラなどで得られたフリーキャッシュフローで返済したものと思われる。
 この取引に法的な問題があるわけではないし、借入金の返済やそれを乗り越えての時価総額の増大は経営陣およびファンドの経営努力のたまものであろう。しかし、敵対的買収防衛策としてのMBOとされた案件が、見方を変えれば、経営陣および投資ファンドがリスクを取って企業をLBOし、3年間で投下資金を6倍に増やした成功例だったといえることも事実である。
 最初のTOBで投資ファンドは時価に対して32・5%のプレミアムを支払い、経営陣はこれを妥当として賛成意見を表明したが、経営陣は投資ファンドとともに買い手側に参加することで、自己の持ち分を2・5倍に増やすことに成功した。これはレバレッジによる株主価値変動を無視すれば150%のプレミアムを受領したことと等しく、経営陣は一般投資家に比べて非常に有利な条件を獲得していたともいえるわけだ。
米国では過去5年間で
50兆円超のLBOが成立
 すでにこうした事例も起きている日本に、いよいよ米国最大のLBOファンド「KKR」が乗り込んでくる。
 KKRは、投資銀行ベア・スターンズでM&Aを手がけていたジェローム・コールバーグら3人が76年に設立した投資ファンド。割安な株価の企業をLBOで買収し、買収先の経営陣と協力して企業価値を上げ、投下資金を回収するという一貫した手法で成長してきた。特に89年のRJRナビスコのLBOは総額250億ドル(KKRの出資額は56億ドル)で、過去最大のLBOとして注目を集めた。KKRの現在までの総投資額は1500億ドルを超え、買収案件数は130件程度。最近の案件では、玩具専門店トイザラスの買収が知られている。利益は公表されていないが、年率30%以上のリターンを生んでいるといわれる。出資者(顧客)は大手金融機関や巨大年金基金など錚々たる顔ぶれだ。
 米国のLBOというと、80年代に格付けの低いジャンク・ボンド(投機的な高リスク債権)市場での強引な資金調達で名を馳せ、証券取引法違反で逮捕されたマイケル・ミルケンなどが有名だが、彼らはいわば時代のあだ花であり、KKRやカーライルなど「きちんとしたLBOファンド」は、ミルケンなどとは違う金融界のエスタブリッシュメント(支配階級)としての地位を確立し、尊敬を集めてきた。過去5年間の世界のLBO総額は4610億ドルに達しており、その波がいよいよ日本にもやってくるわけだ。
日本の変化を
嗅ぎ取ったKKR
 LBOに適した買収対象企業は、(1)低PER(株価収益率)で買収価格が純利益に比べて安く済む、(2)キャッシュフローが潤沢で借入金を積み増しても買収後に利益が大きく下振れして倒産するリスクが低い、(3)借入金が少ないかマイナスで借り入れ余力が大きい、といった条件に該当する企業だ。
 これらの条件は、米投資会社スティールパートナーズや日本の村上ファンドなどがターゲットにする企業と共通する。スティールパートナーズなどは主として「売り抜け」を狙うファンドで、企業再建まで手がけるKKRなどとは異なるが、ターゲットになり得る企業は共通している。
 こうした企業が日本に多数存在することは以前から知られていた。しかし、企業買収というだけで敵視し、従業員や取引先までが一体となって〓防衛〓に回ることが当然という従来の日本の風土の中では、実際に買収に成功する可能性は非常に低いと考えられてきた。しかし、ライブドアのニッポン放送買収劇などを経て、こうした風土は大きく変わりつつあるようだ。
 加えて来春には新会社法が施行され、施行後1年を経て現金合併など「対価の柔軟化」も実現する。現金合併とは、合併の対価として買収側の株式の代わりに現金を使い、少数株主の排除を容易にする手法だ。現金合併が可能になると、1980年代前半に米国で横行した2段階強圧買収やそれに続く企業解体による利ざや稼ぎもやりやすくなる。
 2段階強圧買収とは、まず現金合併を株主総会で決議できるだけの株式(米国では51%、日本では67%)をTOBで買収し、次にTOBより安い価格での現金合併で残る株主を排除する方法だ。こうすると買収コストを安くできるし、不利な条件での現金合併を実行されるリスクが株主を動揺させ、TOBにこぞって応じさせることになる。結果として安い価格で対象会社を100%手にしたファンドが、企業を再建するのではなく、単に解体・ばら売りして短期間に大きな利ざやを稼ごうとする取引が横行した。
 米国ではこれに対抗するため、取締役会に買収者との交渉力を与える目的で、ポイズンピル(毒薬条項=敵対的買収者が一定以上の株式を手に入れた段階で既存株主に新株を発行し、買収者の持ち分を希薄化させる手法)などの敵対的買収防衛策が発達。短期間での企業解体・利ざや稼ぎを制限するため、買収後3年間は合併などの組織再編を制限する法律(デラウェア州会社法203条)や、敵対的買収後の組織再編については株主総会決議要件を加重するスーパーマジョリティー条項なども発達した。さらに、第1段階のTOBに応じながら全株を売却できなかった株主は、残りの株式についてもTOBと同じプレミアムを受領できるとした判例も多数あるなど、今や米国での2段階強圧買収は事実上不可能となっている。
 欧州でもTOB制度を改革し、支配権獲得をめざすTOBは1回目に100%を買収しなければならないとしており、やはり2段階強圧買収は実行できなくなっている。
企業解体屋も上陸
 ところが日本では、こうした点についての議論がほとんどないままM&Aが増え始め、新会社法の登場でさまざまな買収が可能になろうとしている。ポイズンピルは日本でも導入されるが、日本では授権株式数が発行済み株式の4倍までに規制されているため、敵対的買収者が20%を獲得した時点でポイズンピルを発動しても、買収者の持ち分を最大5%に落とすことができるだけで、買収者が再度5%から買い上がってきた場合には打つ手がなくなる。日本のポイズンピルはいわば、1回しか撃てない欠陥商品なのだ。
 KKRなど海外の投資ファンドが日本進出を決めたのは、こうした状況下においてである。KKRはもともと2段階強圧買収や企業解体を行うようなファンドではない。しかし、これまで日本はLBO市場として魅力的ではないと判断し、リップルウッドなど米国ではさほど実績のない外資系投資ファンドが日本で活躍するのを見ながら重い腰を上げなかったKKRがついに日本上陸を決断したのは、日本の状況の明らかな変化を読み取ってのことであろう。
 KKRの上陸は、M&Aによる企業支配権の流動化を促し、経営者の規律を高めるなど、日本経済にとってプラスの効果が大きいだろう。しかし、物事には常に裏がある。KKRのような大手ファンド上陸の裏で、かつて欧米で荒っぽい利ざや稼ぎを得意としたグリーンメーラー(対象企業に株を買い取らせることを目的とした乗っ取り屋)や、最初から企業解体を狙う解体ファンドも、虎視眈々と日本市場を狙っていることだろう。我々に残された時間は多くはない。
*   *   *
 M&A自体は決して悪ではない。多くのM&Aは企業価値を高め、経営者のモラルを向上させる。しかし公正なM&A市場には、公正な市場ルールと、それを公正に運用するレフェリーの存在が不可欠だ。新会社法で可能になるとされる新たな買収防衛策の中には、取締役会が独断で特定株主の議決権を狙い撃ちして無効にできるなど、およそ公正さに欠けると考えざるを得ないような方策も含まれている。敵対的買収をめぐる日本の議論はまだ混乱の極みにあり、LBOの嵐が実際に到来する前に、当局や証券取引所を巻き込んだ真剣な議論が必要だ。
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2009年12月17日

トイザラスやサンガード、非上場、米企業の決断(NewsEdge) 2005/04/20, , 日経産業新聞, 28ページ, 有, 2254文字 2ページ

ニッポン放送問題、決着したが…
市場に縛られず、大胆に経営改革
日本の経営者に「覚悟」問いかけ
 ニッポン放送株を巡る攻防は、経営者に上場会社としての「覚悟」を改めて問いかけた。株式上場が重視されてきた米国でも最近、あえて非上場会社になることを選ぶ企業が増えている。市場の目を気にせず、大胆に経営を再構築したい――。上場のメリットとデメリットを冷徹に天びんにかけ始めた米企業の動きを追う。
「短期」気にせず
 再建中の玩具専門店大手トイザラスは三月、コールバーグ・クラビス・ロバーツ(KKR)など投資会社三社連合への身売りを決めた。売却額は六十六億ドルで七月までに手続きを終える。「長期的視点に立って営業と財務を強化できるのは素晴らしい」。三社連合の一角、ベイン・キャピタルのマネージング・ディレクター、マット・レビン氏は非上場化の利点を強調する。
 トイザラスの非上場化シナリオが浮上したのは今年に入ってから。それまでジョン・アイラー最高経営責任者(CEO)は玩具部門を外部に売却し、ベビー用品部門に特化することで生き残りを目指す戦略を打ち出していた。ところが複数のファンドが会社を丸ごと買収する案を示し、事態が急変した。
 買収合戦に競り勝った三社連合は、会社を丸ごと引き取って再建すれば、再上場か転売で投下資金を十分回収できると読んだ。この案を受け入れたアイラー氏も「買い手同士の競争で魅力的な買収価格となった」と満足げだ。
 トイザラスにとって「四半期決算を公表する義務がなくなるメリットは大きい」(小売りアナリスト)という。玩具店の事業特性から、第三・四半期までの赤字をクリスマス商戦の第四・四半期にばん回する商法を続けてきた。ただ「不安定で非効率なビジネスモデル」と市場の評判は散々だった。今後は短期の評価を気にかける必要がなくなり、一時的に多額の損失が発生する不採算店舗の閉鎖や資産売却を一気に進めることができるようになる。
 非上場化の動きはトイザラスにとどまらない。「ウォール街ではなく、顧客とサービスに集中することができる」。投資ファンドの傘下に入り、非上場会社になることを今月決めたディスカウント店、ショプコの広報担当者はこう話す。
サービスを強化
 ショプコは三百店超を展開する中堅小売りだが、トイザラスと同様、ウォルマート・ストアーズの低価格攻勢で劣勢に立った。四半期ごとに一定の利益を出すには、ウォルマートと同じ土俵でコスト削減競争を迫られる。非上場会社になった後は、店舗運営に人手をかけるなどサービスを強化し、ウォルマートにまねのできない営業政策を進める考え。CEOは辞任するが、他の幹部は会社に一部出資して経営に参画する見通しだ。
 米投資会社カーライル・グループの共同創業者であるデビッド・ルーベンスタイン氏は、非上場化の流れが起きているのは「企業改革法が大きな重しになっているから」と指摘する。
 エンロン事件を受け、二〇〇二年に定められた同法により、米国の上場企業には役員報酬、監査制度、情報公開などの面で厳しい縛りがかけられるようになった。ファンドの支配下に入って非上場になれば、市場経由の多様な資金調達の道は絶たれる。それでも同法の規制を嫌い、経営の自由度を求める経営者が増えている。
長期的投資で
 金融機関向けデータ管理システムを手掛けるサンガード・データ・システムズは経営再建ではなく、積極的な成長戦略のため非上場化に踏み切った。投資ファンド七社が三月、百十三億ドルで買収することを決めた。買収先資産を担保としたレバレッジド・バイアウト(LBO)方式による買収では十六年ぶりの規模だという。
 サンガードのコンデCEOは「短期の利益と長期の投資はなかなか両立しない」と話す。「長期的な投資で成長戦略を進める」には上場企業の名を捨てる必要があると判断した。多額のLBOに伴って、会社の財務内容は悪化するが、非上場化のメリットはそれを十分補えるとみている。
 最近では、年金資金などがより高いリターンを求めてファンドに流れ込み、大型の企業買収が可能になった。複数のファンドが共同で企業を買収する動きも広がり、経営者が非上場化を選択するための「受け皿」も増えている。
 日本ではニッポン放送株を巡る攻防が決着した。フジテレビジョンはニッポン放送を子会社化することになったが、資金負担は当初見込みより九百億円近く拡大。親子で上場しながら、資本のねじれを長年放置したつけを払う形になった。非上場化を選ぶ米企業と、大買収時代に直面する日本企業。海の両側で進む二つの流れは、日本の経営者にこう問いかけている。「上場の意味を突き詰めて考えたことがありますか」――。
(ニューヨーク
=鈴木哲也)
【表】米企業の非上場化の動き        
社名  業種  決定時期  買収側ファンド  買収額
トイザラス  玩具店  05年3月  KKRなど  66億ドル
サンガード  データ管理  05年3月  シルバー・レイク・パートナーズなど  113億ドル
ショプコ  ディスカウント店  05年4月  ゴールドナー・ホーン・ジョンソン・アンド・モリソン  10億ドル
サーキット・シティー  家電店  ―  ハイフィールズ・キャピタル・マネジメント  32億ドル
(注)サーキット・シティー側が買収提案を受け入れず不成立        
【図・写真】上場会社の縛りから思い切ったリストラができなかった(トイザラスのニューヨークの店舗)
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2009年12月16日

米半導体3位のフリースケール、身売り

米半導体3位のフリースケール、身売り検討
2006/09/12, 10:46, 日経速報ニュース, , , 572文字

 【シリコンバレー=田中暁人】米半導体大手のフリースケール・セミコンダクタは11日、自社の売却を検討していると発表した。米主要メディアによると、米投資ファンドなど2グループが買収を提案、買収額は約160億ドル(約1兆8800億円)にのぼる。実現すれば投資ファンドによるハイテク企業のM&A(企業の合併・買収)では過去最大規模になる見通しだ。
 フリースケールは同日、「複数社と協議を進めている」とのコメントを発表した。相手先企業など詳細は明らかにしていない。ロイター通信などによると、米投資ファンドのブラックストーン・グループやカーライル・グループなどの4社連合、コールバーグ・クラビス・ロバーツ(KKR)やエイパックス・パートナーズなど4社の計 2グループが買収を提案しているという。
 フリースケールは2004年4月に米モトローラの半導体事業が分社して設立、同年7月に株式を上場した。携帯電話など通信機器や自動車向け半導体製品に強みを持ち、今年4―6月期の売上高は16億ドルで、米半導体メーカーでは3位。
 KKRなどの投資ファンドは欧州の総合電機大手、フィリップス(オランダ)の半導体事業の買収を発表済み。同じ半導体のフリースケールも買収することで、2社の相乗効果を狙う戦略と見られ、投資ファンド主導による半導体業界の再編につながる可能性もある。
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米フリースケール 身売りを検討、売却額160億ドルでファンド連合へ 米紙報道
2006/09/12, 05:01, 日経速報ニュース, , , 350文字

 【ニューヨーク=清水石珠実】米半導体大手フリースケール・セミコンダクタは11日、同社が身売りの可能性を探っていることを認めた。売却先との話し合いを進めているが、結論については「(合意に至る)保証はない」としている。
 今回の発表は、米ニューヨーク・タイムズ紙がファンド連合が同社の買収に動いていると報道したことを受けたもの。フリースケールは交渉の事実は認めたものの、身売り先や金額についての詳細については言及を避けた。
 ニューヨーク・タイムズ紙の報道によると、交渉が成立すれば買収額が160億ドルを超え、ハイテク事業としては史上最大規模のレバレッジド・バイアウト(LBO)となる見通し。買収先のファンド連合には、テキサス・パシフィック・グループやブラックストーン・グループなどが参加すると報じている。
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米半導体大手フリースケール身売りへ――複数ファンドと交渉、ハイテク買収最大規模。
2006/09/12, , 日本経済新聞 夕刊, 3ページ, , 550文字 1ページ、

1兆8800億円
 【シリコンバレー=田中暁人】米半導体大手のフリースケール・セミコンダクタは十一日、自社の売却を検討していると発表した。米主要メディアによると、米投資ファンドなど二グループが買収を提案、買収額は約百六十億ドル(約一兆八千八百億円)にのぼる。実現すれば投資ファンドによるハイテク企業のM&A(企業の合併・買収)では過去最大規模になる見通しだ。
 フリースケールは同日、「複数社と協議を進めている」とのコメントを発表した。相手先企業など詳細は明らかにしていない。ロイター通信などによると、米投資ファンドのブラックストーン・グループやカーライル・グループなどの四社連合、コールバーグ・クラビス・ロバーツ(KKR)やエイパックス・パートナーズなど四社の計二グループが買収を提案しているという。
 フリースケールは二〇〇四年四月に米モトローラの半導体事業が分社して設立、同年七月に株式を上場した。携帯電話など通信機器や自動車向け半導体製品に強みを持ち、今年四―六月期の売上高は十六億ドルで、米半導体メーカーでは三位。
 KKRなどの投資ファンドは欧州の総合電機大手、フィリップス(オランダ)の半導体事業の買収を発表済み。同じ半導体のフリースケールも買収することで、二社の相乗効果を狙う戦略とみられる。
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ファンド大型買収続々――ペース昨年の倍、「カネ余り」背景に。
2006/09/12, , 日本経済新聞 夕刊, 3ページ, 有, 943文字 1ページ


 米国で企業買収ファンドの大型M&Aが相次いでいる。パイプライン大手のキンダー・モーガンは八月末、米大手証券ゴールドマン・サックスの投資部門からなる投資家連合や現経営陣が同社を買収することで合意。七月末にベイン・キャピタル、コールバーグ・クラビス・ロバーツ(KKR)などの投資家連合が米大手病院チェーンのHCAの買収を決めている。
 ファンドの大型買収が増える最大要因は、「カネ余り」。ファンドの買収手法は、出資と借入金を組み合わせるレバレッジド・バイアウト(LBO)方式を用いる。ファンドには運用難に悩む機関投資家の資金が集まり、借入金も金利低下で貸出先を開拓したい大手銀行が積極的だ。米国でLBOブームだった一九八〇年代よりもM&Aでファンドの存在感は高い。
 今年は特にファンドによる大型買収が目立つ。HCA買収は約二百十二億ドルで、負債を差し引いた株式分の買収額は一九八八年にKKRが米たばこ・食品大手RJRナビスコを買収した二百五十一億ドルに次いで歴代二位の規模となった。
 一月に米カーライル・グループ、米ブラックストーン・グループなどが約九十六億ドルでオランダの大手メディア企業VNUの買収を決めた。
 経営者自身が出資するMBO(経営陣による買収)方式が増えているのも特徴で、今年の買収ファンドによるM&Aは昨年の倍のペースだという。
(ニューヨーク=松浦肇)
【表】ファンドによる大型買収案件    
対象企業  企業買収ファンド  買収金額(千万ドル)
HCA(病院チェーン)  ベイン、KKRなど  2,119
フリースケール(半導体)  ブラックストーンなどの4社連合とKKRなどの4社連合が提案中  1,600
キンダー・モーガン(パイプライン)  GSキャピタル、カーライルなど  1,500
ユニビジョン・コミュニケーションズ(スペイン語メディア)  テキサス・パシフィック・グループなど  1,211
VNU(メディア)  KKR、ブラックストーン、カーライルなど  958
マイケルズ・ストアーズ(手工芸品販売)  ベイン、ブラックストーン  605
(注)フリースケール分は報道などをもとに作成、残りはトムソンファイナンシャル社調べで、買収金額は負債引き受け分を含まない    
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2009年12月12日

UAL、破産法申請、運航は継続――米航空最大の破たん。 2002/12/10, , 日本経済新聞 朝刊, 1ページ,

 【シカゴ=山下真一】米航空業界二位のユナイテッド航空の持ち株会社UALは九日、米連邦破産法一一条に基づく会社更生手続きを申請した。格安運賃の新興航空会社との競争に加え、昨年九月の同時テロ後の旅客減少で大幅な赤字が続いていた。米銀大手バンク・ワンなどから当面の運転資金、計十五億ドル(約千八百億円)の融資を受けて国内外での運航を続ける。(関連記事9面に)
 今年九月末現在のUALの総資産は約二百四十二億ドル。企業破たんを直前の資産規模でランク付けする米国の慣例によるとワールドコム(総資産千三十九億ドル)などに続き過去七番目、航空会社では一九九一年のパン・アメリカン航空を抜き過去最大とみられる。
 UALは全日本空輸や独ルフトハンザ航空などと結成している国際航空連合「スターアライアンス」を維持、マイレージのサービスも継続する方針だ。ティルトン会長兼最高経営責任者(CEO)は「今までと同じサービスを提供していく」と述べた。ただ、日本の金融機関では航空機リースに絡む債権回収などに影響が出る可能性もある。
 UALではかねて高コスト体質の是正が課題だった。しかし、人件費削減で労働組合をまとめきれなかった。四日には政府から十八億ドルの債務保証を拒否され、九日と十二日が期限の合わせて約九億ドルの債務の支払いにメドが立たなくなった。






UAL再建労組説得カギ、破産法を申請、人件費圧縮が急務、米航空業界、厳しさ増す。
2002/12/10, , 日本経済新聞 朝刊, 9ページ, 有, 2154文字

 【シカゴ=山下真一】米連邦破産法一一条の適用を九日申請したUALは今後、裁判所のもとで債務圧縮やコスト削減を進め、再建を目指すことになる。ただ、過去に破産法申請した航空会社はそのまま清算に追い込まれた例も多い。UALの場合、リストラ実施を巡って労働組合の抵抗が続く可能性もあり、名門航空会社の行方は不透明だ。(1面参照)
 UALは今後、債務返済を一時停止したうえで、高コスト体質を是正する再建計画をシカゴの連邦破産裁判所に提出する。債務減免を受けながら、十八カ月で再建プロセスを終了させたい考え。
 再建計画の柱となる人件費削減は波乱含みだ。破たん前に会社側は総額五十二億ドルの削減策を提示したが、整備士組合が受け入れを拒否、結局、お流れとなった。政府からこの案が甘いと批判された経緯もあり、より厳しい内容を盛り込むことは不可欠だ。
 しかも、再建計画のとりまとめに多くの時間は費やせない。社内ではブランドイメージの低下が旅客離れにつながることへの懸念が強い。グレン・ティルトン最高経営責任者(CEO)が破たん前から「運航は続ける」と繰り返し強調していたのもそのためだ。
 先に破たんしたUSエアウェイズでは、再建計画を巡って労使交渉が難航している。同社に大口で融資し、出資も予定しているアラバマ州年金基金はしびれを切らし、「労組が譲歩しない限り融資を引き揚げる」と警告。緊張感が高まっている。
 米国では航空自由化で一九八〇年代以降、航空業界は再編と淘汰(とうた)の繰り返しだった。そして、破たん後の姿も明暗がはっきりと分かれている。パン・アメリカン航空は路線売却で規模を絞り込み、再出発を狙ったが、九一年に運航を停止した。一方でコンチネンタル航空は二度も破産法を申請したが、負債圧縮に加え、正確な運航スケジュールなど基本に徹した運営に努め、再建に成功した。
 UALが破産法の下でもくろみ通りに低コストを実現できた場合、航空業界に脅威となるのは間違いない。最大手でアメリカン航空の持ち株会社AMRは、UAL破たんが確実になった先週末、労組に対し来年の賃上げ凍結を提案した。先行きの競争激化を見込んでコスト削減への取り組みをますます強化しようとしている。
【表】UAL経営危機の経緯    
<2001年>…    
9月  ○  米同時テロの影響で旅客数大幅減
<2002年>…    
2月  ○  2001年12月期に21億ドルの最終赤字計上
6月  ○  政府に18億ドルの債務保証を申請
8月  ○  米6位のUSエアウェイズが米連邦破産法11条の適用申請
9月  ○  新会長にグレン・ティルトン氏就任
10月  ○  7―9月期に8億8900万ドルの最終赤字計上
  ○  政府に18億ドルの債務保証再申請。5年半で52億ドルの人件費削減を盛り込んだ再建計画提出
11月  ○  9000人の追加削減を発表
  ○  整備士組合の一部がリストラ案に反対
〈12月〉…    
2日  ○  3億7500万ドルの債務返済期限。10日間の返済猶予権を行使
4日  ○  政府が18億ドルの債務保証を拒否
【表】米航空会社の2001年売上高ランキング (百万ドル)    
(1)A  M  R    18,963
(2)U  A  L    16,138
(3)デ  ル  タ    13,879
(4)ノースウエスト    9,905
(5)コンチネンタル    8,969
(6)USエアウェイズ    8,288
(7)サウスウエスト    5,555
【表】米国の大型破たん(資産規模ベース)      
社名  年月  資産規模  業種
(1)ワールドコム  02年7月  1039億ドル  通 信
(2)エンロン  01年12月  633億ドル  エネルギー
(3)テキサコ  87年4月  358億ドル  石 油
(4)ファイナンシャル・コープ・オブ・アメリカ  88年9月  338億ドル  金 融
(5)グローバル・クロッシング  02年1月  255億ドル  通 信
(6)アデルフィア・コミュニケーションズ  02年6月  244億ドル  CATV
(7)UAL  02年12月  242億ドル  航 空
(8)パシフィック・ガス・アンド・エレクトリック  01年4月  214億ドル  エネルギー
(9)Mコープ  89年3月  202億ドル  金 融
(10)Kマート  02年1月  170億ドル  小売り
(注)米調査会社バンクラプシーデータ・ドット・コムの資料などで作成。年月は破産法申請時期      
【図・写真】名門航空会社、UAL再建の前途は不透明だ(米シアトル・タコマ空港)=AP
 ▼UAL 米ユナイテッド航空の持ち株会社。前身は一九二六年設立の航空郵便サービス会社。一時期、ボーイングと同じグループに属した。三〇年代に合併を繰り返し、現在の基礎を築いた。
 八〇年代に「ハブ・アンド・スポーク」と呼ばれる拠点空港方式を導入し、急成長。八五年にパン・アメリカン航空から日米間を含む太平洋路線を買収するなど積極的に輸送網を拡張してきた。
 航空機五百四十機を保有し、毎日約千七百便を運航、世界の百十七都市を結んでいる。従業員数は約八万三千人。






ユナイテッド航空が破たん 全日空「影響なし」−−提携連合、イメージ悪化
2002/12/10, , 毎日新聞 朝刊, 9ページ, 有, 1323文字

 米ユナイテッド航空の破たんを受け、提携相手の全日本空輸は9日夜、「ユナイテッド便の運航は予定通り継続するとの連絡を受けており、提携関係に影響はない」とのコメントを発表した。ただ、ユナイテッドは全日空を含む世界14社の連合「スター・アライアンス」の中核で、「イメージ悪化につながる」(幹部)ことが否定できず、路線見直しなど法的手続きのもとで進むリストラ策などを注目している。
 スター・アライアンスは、独ルフトハンザやシンガポール航空などが参加。各社の路線を、それぞれの会社の便名をつけて顧客に販売する「共同運航(コードシェア)便」を展開している。ユナイテッドの米国内の路線網は、全日空など他社には大きなメリットで、共同運航によってきめ細かいネットワークを維持できている。ユナイテッドが今後、路線網を見直すことになれば、提携各社の米国内の足場に影響が及び、顧客離れが起きかねない。
 11月末、ブラジルで開かれたスター・アライアンスの定期会合には全日空の大橋洋治社長も出席したが、UALのティルトン会長兼最高経営責任者もかけつけ、「提携路線の維持などを確約していった」という。また、「連邦破産法11条は経営再建の手段。ユナイテッドの高い人件費などを引き下げるため、申請はやむを得ないのではないか」(全日空幹部)と、再生に向けてのステップとして、冷静に受け止める声もある。【古田信二】
………………………………………………………………………………………………………
 ■解説
 ◇米航空業界、一層苦境に
 米ユナイテッド航空の破たんにもかかわらず、米航空業界の苦境に打ち止め感はない。景気低迷と安売り競争、昨年9月の同時多発テロの影響に加え、米国がイラクと開戦すれば、テロ懸念に伴う旅客減で一層の打撃を受ける。
 業界の競争はここ数年で新次元に突入している。UALや最大手アメリカン航空が全米に路線を張り巡らせる「ハブ・アンド・スポーク」は、コスト高で通用しなくなった。対照的に新規参入組のサウスウエスト航空などは路線を絞り、ネット販売を活用するコスト削減徹底で格安運賃でも黒字を確保。同社の株価はアメリカン航空の数倍も高くなっている。
 UALは法的破たん処理で大規模な事業縮小が避けられない見通し。ティルトン会長は「破産法申請が旅客へのサービスや企業価値を守るのに最善と判断した。今後1年半で強い競争力のある会社に生まれ変わることを目指す」と強調したが、「消滅したパンナム航空の二の舞いの可能性もある」との見方もある。【ワシントン竹川正記】
………………………………………………………………………………………………………
 ■ことば
 ◇ユナイテッド航空
 1931年設立、従業員8万1000人。01年の営業収入でアメリカン航空に次ぎ世界2位。北米や南米、アジアなど26カ国117都市を結び、1日約1800便を運航。国際的航空連合「スター・アライアンス」を主導し、全日空や独ルフトハンザ航空と提携。昨年9月の同時多発テロで1機が世界貿易センター南棟に激突、もう1機はピッツバーグ郊外に墜落した。
■写真説明 破たんした米ユナイテッド航空=サンフランシスコ空港で、ロイター

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2009年10月31日

米M&A、5年ぶりに1兆ドル超す 投資家の余剰資金流入 2005/12/24, 読売新聞

 【ニューヨーク=北山文裕】2005年の米国企業を対象にした合併・買収(M&A)の総額が、5年ぶりに1兆ドル(約116兆円)の大台を超えた。事業規模の拡大や収益力強化が直接の動機だが、買収ファンドによるM&Aも増えている。株、石油、不動産市況が好調で、かつ低金利が続いていることで、企業、年金基金、投資家の巨額の余剰資金がM&A市場に流入している。
 ◎株高が原動力
 調査会社ディーロジック社によると、米企業を対象にしたM&Aによる買収金額などの総額は、12月下旬時点で前年比3割増の1兆1494億ドル(7349件)と、「IT(情報技術)バブル」の2000年(1兆5256億ドル)以来の水準となっている。ITバブルの崩壊、エンロンなどによる不正会計事件、01年9月の同時テロなどで一時落ち込んでいた買収総額は、02年を底に着実に回復している。
 企業がM&Aを積極化させている原動力のひとつが株高だ。株高は買収価格をつり上げ、買収の阻害要因となりそうだが、欧米では株式交換によるM&Aが主流で、買収資金がいらず、株高の方が買収される企業の株主の同意が得やすい。日用品大手プロクター・アンド・ギャンブル(P&G)によるジレットの買収や、金融大手バンク・オブ・アメリカによる独立系カード最大手MBNAの買収も主に株式交換で行われた。
 好況が続いたことで企業の手元資金も潤沢だ。ゴールドマンサックスによると、今年の現金による企業買収は前年比55%増の1500億ドル。米石油3位のコノコフィリップスは、原油高で積み上がった潤沢な資金を使って、現金と株式の組み合わせで天然ガス大手バーリントン・リソーシズを買収する。
 ◎不動産活況も背景
 一方、買収ファンドによる米企業のM&Aも、前年比13%増の2179億ドルに増えた。フォード・モーター傘下のレンタカー最大手ハーツ、データ管理システムのサンガード・データ・システムズなど、100億ドルを超える案件も、ファンド連合が勝ち取った。
 不動産市況の上昇で、買収する企業の資産を担保に資金を借り入れるLBO(レバレッジド・バイアウト)がやりやすくなり、資金の有利な運用先を求める年金基金などが、これに積極的に応じている。段階的な利上げにもかかわらず「米金利は依然として低く、今後も民間資金のファンドへの流入は続く」(米スタンダード・アンド・プアーズのデビッド・ウッド氏)との見方が強く、米国企業のM&Aは来年以降も1兆ドルを大きく上回るとみられる。
 
 〈株式交換〉
 A社がB社を完全子会社化しようとする際に、B社株を買うのではなく、B社株を持つ株主に自社株(A社株)とB社株を交換してもらってB社株を取得する買収方法。


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2009年10月24日

米投資ファンド2社、カジノ買収提案150億ドル――金額、米5番目、LBO方式で。 2006/10/03, , 日本経済新聞 夕刊, 3ページ

 【ニューヨーク】米カジノ最大手ハラーズ・エンターテインメントは二日、米ファンドのアポロ・マネジメントとテキサス・パシフィック・グループ(TPG)から、百五十億五千万ドル(約一兆七千七百億円)の買収提案を受けたと発表した。今年は総額百億ドルを超えるファンドの大型M&A(企業の合併・買収)が相次いでおり、買収対象となる企業の業種も多様化してきた。
 出資と借入金を組み合わせるLBO(レバレッジド・バイアウト)方式を用い、買収金額は五番目の規模になる。ハラーズは今後、取締役会で提案を検討する。
 買い手側が提案した買収価格は一株八十一ドルと先週末終値を二二%上回る水準。TPGは傘下にカジノ運営会社を抱えているうえ、アジアでの投資実績がある。今後、ハラーズのアジア展開を後押しし、同社の企業価値を高める考えだ。
 一九八九年設立のハラーズはラスベガスを本拠地に全米三十九カ所でカジノや関連ホテルを経営し、売り上げでは米最大手。ラスベガスでの競争激化や海外への進出をにらんで、提携先や買い手を探していた。
 調査会社トムソンファイナンシャルによると、今年はファンドによるM&A金額が前年同期の二・三倍となり、米国でのM&Aの四分の一を占める。ファンドには運用難に悩むオイルマネーや年金基金など機関投資家の資金が集まり、米大手病院チェーンのHCAなど、大型のM&Aが目立っている。
 LBOによる買収は借入金返済を迫られるため、キャッシュフロー(現金収支)が安定した製造業に投資するのが一般的。しかしファンド間で買収案件の発掘競争が激しくなり、非製造業やハイテク、カジノなども買収対象になってきた。
【表】LBOによる大型買収案件      
公表時期  被買収企業  金額・億ドル  買収側の投資家・企業
1988年10月  RJRナビスコ  251  KKR
2006年2月  BAA  218  グルポ・フェロビアル、ADIなど
7月  HCA  212  ベイン・キャピタル、KKRなど
9月  フリースケール・セミコンダクタ  176  テキサス・パシフィック、ブラック・ストーンなど
10月  ハラーズ・エンターテインメント 150  アポロ・マネジメント、TPG
(注)トムソンファイナンシャル調べ、公表時期は買収が明らかになった時点、買収金額は債務引受額を含まない      


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2009年10月17日

ワールド・インサイド]米証券市場、再編加速 NY証取→株式会社化 2005/05/09, 読売新聞 朝刊

 ◆NYSE→株式会社化 ナスダック→電子市場買収 
 米証券市場が再編・統合を加速させている。ニューヨーク証券取引所(NYSE)が電子証券市場と経営統合し、非営利の会員組織から株式会社化することを決めたほか、競合するナスダック・ストック・マーケットも大手電子市場を買収する。背景には上場、公開企業数の伸び悩み、電子取引の台頭による取引所の収益低迷がある。(ニューヨーク 北山文裕)
 ■再編の背景
 NYSEは米主要企業の資金調達の場として、米国資本主義を支えてきた。しかし、取引所収入を左右する上場企業数は1998年をピークに減少基調にあり、出来高も伸び悩んでいる。非営利の会員制組織としての「企業価値」も示す会員権価格も、今年1月には100万ドルの節目を割り込む水準まで下落した。ライバルのナスダックはNYSE上場企業の“誘致”を積極的に進め、コンピューター大手ヒューレット・パッカードなど有力企業をNYSEとナスダックに「重複上場」させている。
 「経営統合と株式会社化は国際競争力の強化、優位を確保する第一歩だ」
 NYSEのジョン・セイン最高経営責任者(CEO)は、生き残りのために再編が不可欠なことを強調する。
 有力企業を囲い込むためには、投資家が求めるすばやい決済を実現し、さまざまな取引を一か所で行えるようにする必要がある。NYSEは自ら株式会社となることで、巨額の資金が調達しやすく、迅速な意思決定を行えるようにした。電子証券市場を運営する「アーキペラゴ」との統合も、取引所の「電子化」「多角化」戦略の一環だ。
 ■「電子化」合戦
 NYSEが経営統合するアーキペラゴは96年設立の新興勢力で、立会場を持たず、人手を介さない電子取引で急成長してきた「電子取引ネットワーク」(ECN)の草分け。提携関係にある米西海岸の証券取引所の買収も決め、低コストの市場運営と迅速な取引で機関投資家の支持を集めている。
 アーキペラゴによる電子取引は、ナスダック公開株の取引量の約25%に達している。NYSEはアーキペラゴを介してナスダック公開株のほか、オプションや派生商品の取引にも新規参入する見通しで、ヘッジファンドなど機関投資家の資金を呼び込む。ナスダックも、米大手ECN「インスティネット」の買収で、NYSE・アーキペラゴ連合に対抗する。
 ■変わる取引所
 NYSE、ナスダックによる統合・買収劇は、米証券市場の姿を大きく変えそうだ。
 NYSEは人手を介した伝統的な立会場取引と電子取引を組み合わせた「ハイブリッド市場」(セインCEO)を目指すが、今回の再編は旧来型の取引手法の衰退につながるとの予想が多い。
 NYSEには「スペシャリスト」と呼ばれる値付け業者が取引を円滑に進める独特の制度がある。スぺシャリストは取引が薄い株式に対して自己資金での売買も行い、急激な株価変動を回避する機能も果たす。ただ、こうした取引は電子取引に比べて経費や時間がかかり、取引の匿名性を脅かす恐れもあった。
 NYSEとナスダックの電子化競争が激化すれば「技術革新と市場間競争で取引コストが下落に向かう」(オハイオ州立大のイングリッド・ワーナー教授)。取引の透明化に加え、投資信託などの利回りが向上する効果も期待できる。
 取引所の株式会社化は、日本では東京、大阪の証券取引所がすでにすませ、欧州では国境を超えた取引所の統合・再編が具体化している。経営改革や電子化ではむしろ他の主要取引所より遅れていたNYSEが株式会社化に踏み切ることで、商品、先物市場を巻き込んだ国際的な市場再編・統合の加速を予測する声もある。
 
 〈ECN〉 
 電子コミュニケーション・ネットワーク(Electronic Communications Network)の略。証券取引所と同じ機能を持つが、取引所としては登録せず、コンピューターによる取引を営利目的で行う。
 90年代から「隠れた市場」として取引を拡大してきたが、取引の透明性などへの懸念も指摘され、最近では取引所に近い規制が整備されてきた。

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2009年10月10日

敵対的買収、「先進国」米の事例点検――80年代―乗っ取り屋の時代。 2005/02/27, , 日本経済新聞 朝刊, 5ページ, 有, 1615文字

企業価値巡り攻防
毒薬条項で応戦
 ニッポン放送の支配権を巡ってライブドアがフジテレビジョンと全面対決する状況になった。外国企業による日本企業の買収を容易にする二〇〇六年の改正商法施行を待たず、国内企業同士でも敵対的な買収が相次ぐ可能性がある。敵対的買収「先進国」の米国では一九八〇年代以降、企業価値を巡る攻防が続いてきた。米国での変化を事例を点検しながら振り返った。(編集委員 牧野洋)=1面参照
 教訓 行き過ぎたマネーゲームは企業を破壊
 米国で敵対的買収の嵐が吹き荒れたのは一九八〇年代。現経営陣に敵対する行為であるため、主要メディアでは「野蛮」や「どん欲」といった言葉が頻繁に登場した時代であり、ニッポン放送争奪戦が「マネーゲーム」と呼ばれている現在の日本と酷似している。
 当時の主役は、日本では小糸製作所株の買い占めで有名になったT・ブーン・ピケンズ氏ら乗っ取り屋(コーポレートレイダー)。その中で企業の合併・買収(M&A)史上に大きな痕跡を残した人物がいる。名門化粧品メーカー、レブロンの買収を仕掛けたロナルド・ペレルマン氏だ。
 レブロンの取締役会はペレルマン氏を拒否し、「ホワイトナイト」と呼ばれる友好的な相手を見つけ出して買収を依頼。ペレルマン氏が提示した買収価格がホワイトナイトのそれを上回っていたのに、である。
 同時に、レブロンはポイズンピル(毒薬条項)を導入。これは八二年に原型が編み出された敵対的買収の対抗策で、敵対的買収者の持ち分を大幅に引き下げる効果を持つ。司法の場で合法性を確認された八〇年代半ばごろから、乗っ取り屋対策として米国企業の間で一気に普及し始めた。
 ペレルマン氏は法廷闘争へ持ち込み、米国企業の多くが本社を置くデラウェア州の最高裁で勝利。理由は「会社を身売りすると決めた段階で、取締役会の義務は会社を守ることではなく会社を競売にかけることへ切り替わる」だった。要は、敵対的であっても最も高い買収価格を提示した相手に売らなければならないわけで、これは「レブロン義務」として知られるようになる。
 ペレルマン氏の傘下に入ったレブロンは株式非公開になる過程で大きな負債を抱え込んだ。九六年に再び株式を公開したものの、今も経営状態は改善していない。
【表】米国での主な敵対的買収案件
たばこ・食品大手RJRナビスコ(1988年、290億ドル)
80年代最大のM&Aで、マネーゲームの頂点。投資会社コールバーグ・クラビス・ロバーツ(KKR)に買収され、その過程で多額の負債を抱え込んで経営が悪化。KKRは90年代に友好的なM&Aへシフト
出版大手タイム(1989年、120億ドル)
映画大手との合併で合意していた時にパラマウント・コミュニケーションズから買収提案。企業価値を高められるならば短期的な株主利益を考慮しなくともいいとの司法判断が出て、パラマウントは敗れる
医薬大手ワーナー・ランバート(1999年、900億ドル)
ファイザーからの買収提案を受け入れ、アメリカン・ホーム・プロダクツ(AHP)との合併を白紙撤回。株主がファイザーの傘下入りを望んだため。ヒット医薬品「リピトール」を得たファイザーは世界最強に
ソフトウエア大手ピープルソフト(2003年、100億ドル)
自社を売りに出していない状態でオラクルによる買収提案に見舞われる。1年以上も買収阻止に動いたものの、株主の支持を得られずに敗北。オラクルから徹底批判されたポイズンピルは発動できずに終わる
娯楽大手ウォルト・ディズニー(2004年、660億ドル)
機関投資家からワンマン経営を批判され、経営刷新を求められている弱みを突かれ、ケーブルテレビ大手コムキャストから買収提案を受ける。コムキャストは買収価格を引き上げられず、最終的に撤退
(注)カッコ内は買収発表時期と買収金額。敵対的買収失敗の場合は買収提示額。トムソン・ファイナンシャルのデータなどを参考にした

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米新学期セール、消費動向読めず?――調査2社、対極の結果。 2006/08/18, , 日経流通新聞MJ, 13ページ

 【ニューヨーク】米国の「新学期セール」の消費動向を巡る二つの調査結果が対照的となり、業界の話題を集めている。クリスマス商戦に向けた年後半の消費動向を占うものだが、ガソリン高、金利上昇などの影響で先行きが読みにくくなっている。
 調査会社NPDグループは約三万七千人の消費者を対象にネット上で調査した。「八月一日以前に新学期用品の購入を開始する」との回答は四〇%(前年は四三%)、「八月一日―九月一日」は五六%(同五一%)。
 時期をずらして値下がりを待つ姿勢が読み取れる。これまで若者の消費にはガソリン高は影響しないとされてきたが、NPDは「ガソリン高が購買意欲を奪っている」と分析している。
 支出予定額は「前年と同額」との回答が四三%(同四一%)と増加。四七%が子供一人あたり二百五十ドル以下、二八%が二百五十一―五百ドルと回答。NPDでは「今年の購買を決めるのは“値ごろ感”」と指摘した。
 一方、全米小売業協会(NRF)が実施したネット調査では、新学期セールに向けた一家庭あたりの平均支出予定額は前年比一九%増の五百二十七ドル八セント。全米では前年の百三十四億ドルから百七十六億ドルへと跳ね上がると推定している。
 けん引役は家庭用パソコン、携帯情報端末(PDA)など家電製品。これらの売り上げは前年比八五%増の三十八億二千万ドルになると見込む。

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2009年10月09日

金庫株、持ち株会で活用、三井住友銀が実用化、第1号、ネクシィーズ、買収防衛効果。 2006/05/17, , 日経金融新聞

買収防衛効果も
 三井住友銀行は取引先の上場企業が金庫株として保有する自社株を、従業員持ち株会へ実質的に譲渡する新制度を実用化した。第一号として東証一部上場のテレマーケティング会社、ネクシィーズが二〇〇六年度中に導入することが決まった。米国では似た制度が普及しており、従業員を長期にわたる安定株主にすることで、一定の買収防衛効果も期待できそうだ。
 三井住友銀が開発・実用化したのは「シンセティックESOP(イソップ)」と呼ぶ新制度。金庫株の管理・買い付けのために有限責任中間法人(SPV)を設立、母体企業が匿名組合契約に基づきSPVに出資する。従業員持ち株会はSPVを通じ金庫株を一定限度内で時価で購入する。
 購入限度は、従業員持ち株会が今後二十年で買い付ける見通しの株数などとする。金庫株を購入する資金は母体企業の保証を条件に、三井住友銀がSPVに融資する。従業員持ち株会は従業員の拠出額に応じて毎月、SPVから株式を時価で買い取り、従業員へ割り当てる。
 第一号案件となるネクシィーズは、〇六年度中に約八億五千万円を上限として自社株を市場買い付けし、SPVへ売却する予定。同社は従業員を約五百人抱えている。買い付ける規模は、従業員持ち株会が今後十数年で取得する見込み株数に相当するという。
 〇一年に解禁された金庫株は、企業が自社株を市場などで買い付けた後、消却せずに手元においておく株。金庫株残高は増えており、有効活用できないか悩んでいる企業は多いと三井住友銀はみている。一方、従業員持ち株会が毎月一定の日に市場でまとまった自社株を買うと、需給をゆがませるとの問題があった。三井住友銀はこうした課題を同時に解決する策として新制度を売り込む方針で、長期的には数百社を目標とする。
 米国には、従業員が自らの責任で老後資金を運用する確定拠出年金の一環として、ESOPと呼ばれる従業員持ち株制度があり、約一万一千社が導入している。ESOPが議決権行使したり、買収防衛を担うこともある。三井住友銀の新制度は米国の制度を日本版に作り直したもの。同行は「従業員は中長期の観点から企業経営を考える安定株主になるため、企業統治の充実につながる」という。
 国境を超えた買収が盛んになるなか、日本企業も買収防衛への関心を高めている。三菱UFJフィナンシャル・グループは、安定株主作りを狙う新日本製鉄の要請に応じ、三月末までに同社株を買い増した。買収防衛のための安定株主作りを念頭に、シンセティックESOP導入に動く企業が出てくる可能性もある。
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2009年09月25日

米「産業銀行」拡大に逆風、事業会社の参入承認停止――戦略変更の可能性も。 2007/03/02

米国で一般事業会社の銀行業務への参入が事実上の停止状態に陥っている。米連邦預金保険公社(FDIC)が産業銀行の申請受け付けや承認審査を来年一月まで凍結。州や連邦議会では産業銀行の拡大を阻止する法案づくりも進んでいる。銀行参入を狙う米小売り最大手ウォルマート・ストアーズなどが戦略変更を迫られる可能性がある。

凍結1年延長
 「さらに半年間の延長を」。昨年十二月、超党派の下院議員百七人がFDICに書簡を送った。今年一月に期限切れを迎えるはずだった産業銀行の承認凍結措置を七月まで延期するよう求めるもので、一月にはフランク下院金融サービス委員長(民主党)らが、事業会社の銀行参入を認めない内容の法案を提出。この直後、FDICは凍結措置の一年延長に追い込まれた。




 事態を打開したいFDICは一月、親会社への監督権限を持ち、一般銀行並みに監督を強化することを提案した。これに対し連邦議会は「事業会社が銀行を持てば、関係会社に恣意(しい)的に融資するなど、銀行の独立性にひずみが生じる」との意向を強め、対決姿勢を鮮明にしている。

 銀行業界はウォルマートの銀行参入に反発する。同社は〇五年、四度目の参入申請を提出。早期承認を狙いクレジットカード決済などの後方業務だけを手掛けると宣言したが、淘汰を恐れる地銀は抵抗している。

 実は米連邦準備理事会(FRB)も産業銀行の拡大に懸念を表明し、金融監督当局の間にも温度差がある。
 
「産業銀行の承認方針があいまいなのは問題だ」。バーナンキFRB議長は二月の上院銀行委員会で、産業銀行を預金保険に加入させるなどのFDICの監督機能を評価する一方、ウォルマートやホーム・デポなどの銀行参入をけん制した。

 銀行の親会社を監督するFRBは、産業銀行の親会社に対し、FDICがきちんと監督できるかどうかを懸念しているという。親会社の破綻が子会社を通じて金融システムに打撃となる可能性があるためだ。

 州レベルではすでに産業銀行の拡大を禁止する州法が成立している。〇六年にはメリーランドなど五州が可決。一月にはテキサスなど五州で産業銀行の新規出店を禁止する法案が提出された。
拡大支持の声も

 一方、産業銀行の拡大を支持する声もある。コロンビア大学のカロミリス教授や米エンタープライズ研究所の研究員らは二月に声明を発表し、商業と銀行の分離に対し、「競争力のない銀行をかばうだけ」と指摘。政治的な理由でFDICが承認凍結を延期したことも強く批判した。

 承認凍結が長引くにつれ、申請を取りやめるケースも出ている。当初十四あった申請企業は凍結決定後、八社に減少。米医療保険大手ブルー・クロス・アンド・ブルー・シールド・アソシエーションは貯蓄金融機関(S&L)への参入にくら替えした。

 賛否両論にはさまれてFDICは身動きがとれない状態。結局は政治を巻き込んだ消費者不在の業界の綱引き、と言えそうだ。

 ▼産業銀行 一般事業会社が親会社である金融子会社。ユタ州など一部の州が独自の権限で認めている。商業貸し付けや預金の上限などに制限がある一方、貸出金利の設定に上限がないなど、一般銀行に比べて規制も少ない。
 米連邦預金保険公社(FDIC)の預金保険に加入する必要があるものの、親会社への規制は緩い。銀行の親会社である持ち株会社は米連邦準備理事会(FRB)の監督下に入るのに対し、事業会社は監督対象外。監督局が経営状態などを把握しにくいことを問題視する見方もある。
【表】事業会社の銀行業参入をめぐる意見
【反対派】
○銀行と商業を分離して銀行の独立性を維持すべき
○金融当局が親会社の監督を十分にできず、金融システムのリスク増大
○事業会社の銀行参入を安易に認めれば、地域経済に打撃
【賛成派】
○銀行の競争を促進
○企業のビジネス発展と顧客の利便性向上に貢献
【表】産業銀行をめぐる最近の動き  
<2005年>  
7月  ウォルマート・ストアーズ、決済業務に特化した銀行業参入を申請
<2006年>  
1月  グリーンスパン前FRB議長、産業銀行の参入規制強化を求める書簡を下院議員に送付
4月  FDIC、初の公聴会でウォルマートの銀行参入に関する銀行業界の意見聴取
5月  ホーム・デポ、産業銀行の買収計画をFDICに提出
7月  産業銀行の拡大制限法案が下院に提出
FDIC、07年1月まで産業銀行の承認凍結  
12月  下院議員ら、FDICに承認凍結の延期要請
<2007年>  
1月  下院議員、事業会社の銀行業参入の禁止法案提出
FDIC、承認凍結を08年1月末まで1年延長  
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2009年09月19日

米金融界再編の波 モルガン・スタンレー、D・ウィッター合併。 1997/02/07

 米大手証券会社モルガン・スタンレーとディーン・ウィッター・ディスカバーの合併で、米最大級の総合証券会社が誕生する。業界最大手のメリルリンチと正面から激突するばかりか、銀行や投資信託、クレジットカード業界も巻き込み、業態を超えた金融再編の引き金となる可能性もある。空前の活況に沸くウォール街を舞台に、二十一世紀をにらんだ生き残り競争はさらに激しくなりそうだ。
 五日、ニューヨーク市内の大会議場。大勢のアナリストなどを前に、モルガン・スタンレーのリチャード・フィッシャー会長は「新会社は卓越した金融機関として勝ち残る」と宣言した。この様子を見ていたウォール街関係者は「まるで高級車のベンツと大衆車のフィアットが合体したようだ」と表現した。
 ウォール街の歴史を体現する有力金融財閥のJPモルガン。大恐慌時代に同財閥の分割で誕生したモルガン・スタンレーは、大企業や機関投資家相手のビジネスに徹してきた。「庶民金融機関」ともいえるディーン・ウィッターとの組み合わせは、モルガンにとって百年以上に及ぶ伝統との決別を意味する。
 昨年末、米AT&Tの三分割がコンピューター部門NCRのスピンオフ(分離・独立)で完了した。米史上最大規模といわれるAT&Tのリストラクチャリング(事業の再構築)を一括請け負いし、巨額の手数料を手にしたのがモルガン・スタンレーだ。M&A(企業の合併・買収)の仲介で群を抜くなど、同社が法人ビジネスの分野で大きな力を持っているのは、多くの有力企業と太いパイプを維持しているためだ。
 それにディーン・ウィッターの三百六十一店舗、約九千人に上る米第三位の個人営業部隊が加わり、法人、個人、国内、国外の各分野に強い総合証券会社として、メリルと互角に競い合うことになる。
 投信業界の巨人、フィデリティ・インベストメンツともせめぎ合いを演じる構えだ。ディーン・ウィッターの広範な個人顧客網を使い、昨年買収した大手投信会社の商品を売りさばく。合併後には運用総資産二千七百億ドルを超える資産運用会社としてメリルを上回り、五千億ドルのフィデリティに次ぐ地位に就ける。
 団塊の世代ベビーブーマー(一九四六―六四年生まれ、七千六百万人)が老後の備えに走り、年金マネーの受け皿となる投信の巨大化に拍車がかかっている。投信の資産総額は三兆四千億ドルに上り、銀行の預金総額に匹敵する。今後も拡大すると見られるだけに、米金融界にとって投信の取り込みは死活問題だ。
 新生モルガンは米金融界で第二位のディーン・ウィッターのクレジットカード部門を取り込むのを機に、トップのアメリカン・エキスプレスと正面から激突することにもなる。
 個人分野で安定した収益基盤を広げ、資本力を生かして多様な商品や金融サービスを展開、企業や機関投資家との関係も一段と強化していく戦略は鮮明だ。
 五日のニューヨーク市場で、ダウ工業株三十種平均が一時一〇〇ドルを超える下げを演じる中、AGエドワーズなど証券会社の株価が軒並み跳ね上がった。今回の合併劇が引き金になり、「国内外の有力金融機関が米証券会社に食指を動かす」(業界アナリスト)との思惑が広がったためだ。
 すでにその走りはドイツ銀行やスイス・ユニオン銀行など欧州系の有力金融機関が、豊富な資本力を武器に派手な人材スカウトをウォール街で展開していることに表れている。欧州勢に加え、銀行・証券の垣根撤廃を見据えて、バンカメリカなど米銀勢も証券会社買収に動くとみられる。
 巨額の資本と高度な金融技術が集中しているウォール街を舞台に、国際的な金融地図が塗り替えられようとしている。

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2009年09月17日

米証券モルガン・スタンレー会長辞任 合併2社の内紛で引責 2005/06/15

 ◆個人向け証券苦戦旧モルガン派が反旗
 米証券大手モルガン・スタンレーのフィリップ・パーセル最高経営責任者(CEO)兼会長(61)が13日に辞任を発表した背景には、1997年の合併から続く社内抗争の激化があった。合併から主流派となったパーセル氏ら旧ディーン・ウィッター・ディスカバー出身者と、非主流派に甘んじてきた旧モルガン・スタンレー出身者の対立が激化し、取締役会から混乱の責任を問われた。

合併と融合を指揮したパーセル氏の退任で、「総合証券会社路線を見直して、合併前の姿に再分割すべきだ」といった圧力が社内外から強まる可能性も指摘されている。

 ■統合効果
 多数の一流企業を顧客とし、企業の合併・買収(M&A)など投資銀行業務に強い名門モルガン・スタンレーと、個人向け証券業務とクレジットカード業務を柱とするディーン・ウィッターの経営統合は、金融コングロマリット(複合体)を目指す合併ブームの引き金とも言われる。

 ディーン・ウィッター会長から「新生・モルスタ」の会長兼CEOに就いたパーセル氏は、旧モルガンが引き受けた新規公開株や債券を、旧ディーン・ウィッターの個人向け販売網で売りさばく体制を築き、相乗効果の発揮に成功した。

 ■深まる対立
 ただ、2001年に次期CEOと目されていた旧モルガン出身のジョン・マック社長兼最高執行責任者(COO)がパーセル氏との確執の末に退社に追い込まれるなど、徐々に両陣営の対立が表面化した。

 ネットバブル崩壊などで個人向け部門の苦戦が鮮明になるにつれ、堅調な法人部門を占める旧モルガン出身者の不満が高まり、今年3月上旬には、パーセル氏に冷遇されていた旧モルガンの元幹部ら8人が、株価低迷などを理由にパーセル氏退任を求める書簡を取締役会に提出した。

 パーセル氏が3月下旬に旧モルガン出身の現職社長を事実上更迭する対抗手段に出ると、反発を強めた旧モルガン出身の現職幹部や人気トレーダーらがライバル企業に移籍するなど「泥仕合」に発展した。

 米メディアによると、これまでパーセル氏を擁護していた取締役会も、有力顧客流出への懸念から先週後半には辞任を促す方向に転換したという。

 ■総合路線は?
 モルガン・スタンレーは4月上旬、株価浮揚を狙ってクレジットカード事業を本体から分離すると発表している。ただ、パーセル氏退任運動を主導した元幹部ら「8人組」は法人向け部門と個人向け部門への2分割など抜本的な再編を要求しており、取締役会が今後選ぶ後任CEOの対応が注目される。

 市場では米銀大手などがモルガン・スタンレー買収に動くとの観測が出ている一方で、最大手シティグループが今年1月に生命保険・年金事業の売却を決めるなど、米金融業界では総合化路線を見直す動きもある。モルガン・スタンレーの大合併を巡る長期混乱が明るみに出たことは、金融コングロマリット化への機運が高まる日本の金融界にも微妙な影響を与えそうだ。
 
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2009年09月12日

GE世界最強の秘密 2ケタ成長支える人と組織 2005/07/25

高成長への執念を持ち、有望市場を見極める目を磨く。
イメルト会長は利益を出す緻密な運営手法に磨きをかけた。
技術も人も長期で育てる仕組みは、日本の有力製造業をも凌ぐ。

 ここ数年、GEの中国における攻勢が目立つ。中国市場での売上高は2001年に8億ドルだったが、2005年には4年で6.5倍の52億ドルになる見通し。総額9億ドルのガスタービンを受注するなど、発電設備を中心にインフラ事業を急速に伸ばしてきた。中国における累積の設備投資は15億ドルに達し、現地従業員は1万2000人を数える。2003年には上海に6400万ドルを投じて研究所も建設した。

 中国だけではない。中東やインド、中南米など、イメルト氏が会長になって以降、新市場に貪欲に攻め入る姿が際立っている。

 「日本人には地元志向の人が多いかもしれないが、GEの社員は利益成長のためなら、どこにでも行く」。こう語るのは、6月までGEインフラストラクチャーの社長を務め、現在はGEインダストリアルの戦略担当上級副社長となったビル・ウッドバーン氏だ。

 さらにこう続ける。「日本人が好むのは平穏や安住かもしれない。我々が好むのは変化だ。コップを破壊して、あえて変化を引き起こす。利益成長を得るためなら、摩擦を恐れない」。

 インフラストラクチャー事業は、GEの中でも、特に伸び盛り。過去3年間に利益を22倍伸ばし、2004年は5億6000万ドルを稼いだ。

 中でも水質管理・淡水化事業は、有望と見られている。水不足に悩む地域において、汚水や海水から淡水を生み出す設備を導入する。2025年までに世界人口の約48%が水不足に悩むとの予測があり、特に米国南部やメキシコ、中東、北アフリカ、中国、豪州が深刻になると言われている。ウッドバーン氏は世界地図の赤く塗られた地域を指しながら、「我々の商機は拡大の一途」と強調する。

 こうした利益成長に執着する姿勢はウェルチ前会長の頃からあった。ただ、イメルト会長は成長のための方法論を明確にした。それが総合力の発揮である。「One GE(1つのGE)」。こんなスローガンを掲げて、複数の事業部門にまたがる技術やノウハウを結集しようと呼びかけた。

 水質管理・淡水化事業は、そのモデルケースである。この事業の場合、まず世界各地の営業幹部が地元政府や自治体との商談に入る。それが成立すれば、脱塩設備の建設には、発電、運輸、ヘルスケアなどの技術やノウハウが求められる。さらに巨大プロジェクトに不可欠な融資については、金融部門が支援する。

 GEはトリプルAの格付けを持つため、競合他社よりも有利な融資ができる。こうした途上国向けのプロジェクトでは、日本の総合商社と競合することも多いが、融資能力でGEは圧倒的に優位な立場にある。顧客にとってみれば、GEに頼めば、1社で完結できる便利さがある。

 総合力を生かすのは、口で言うほど、簡単ではない。GEは100カ国以上に30万人以上を抱える巨大企業である。一般的には組織が大きくなるほど、大企業病が生まれ、セクショナリズムがはびこる。そのことは日本企業が経験済みだろう。総合電機や総合商社など、総合と名のつく業種が、コングロマリット(複合企業)ディスカウントに悩んだ。その結果、総合の看板を下ろした企業も多い。だが事業の「選択と集中」の本家と言われるGEは、事業の複合体であることを武器にしている。

 なぜGEはコングロマリットディスカウントを打破できるのか。ウッドバーン氏によれば、それも高い利益成長を目標にしているからだ。「そこそこの利益成長で構わないなら、お互いが独立し、他部門のことに興味を示さなくなる。しかし、高い利益成長を求められていたら、そんなことは言っていられない」。

 日本の大企業の場合、他部門のことに無関心だったり、互いに足を引っ張ったりすることがよくある。これは利益目標に届かなかったり、極端な場合、赤字でも強く責任を問われない風土が依然として残っているからだろう。

 「これを見てほしい」。ウッドバーン氏はそう言って、業績を示したグラフを指した。「売上高、利益、キャッシュフロー、新製品の開発数、M&A(企業の合併・買収)の件数。我々は何でも前の期と比較する。一人ひとりの報酬も成長率が問われる。必死の度合いが違うから、他部門がプラントの受注に成功すれば、自分たちも協力しようとする」。

 総合力を発揮して利益を追い求める姿勢は、今年5月に打ち出した全社方針「エコマジネーション」にも表れている。エコマジネーションとは、エコ(環境)とイマジネーション(想像)をかけ合わせた造語で、想像力を発揮して環境ビジネスを拡大していくという意味。ハイブリッド型エンジン、風力発電、燃料電池などに力を入れ、環境ビジネスで主導権を握るのが狙いだ。

 とかく環境というと、利益を度外視したものに映るが、GEの考えは違う。イメルト会長は、5月9日、ワシントンで開かれたエコマジネーションの発表会で「グリーン・イズ・グリーン」と強調した。「環境は儲かる」という意味だ。ガソリン代の高騰や、世界的な環境規制の強化を踏まえれば、環境ビジネスは、千載一遇の好機との判断が、イメルト会長にはある。

 もっともスローガンを掲げるだけでは、絵空事に終わる。「数字がない会話はただのお話に過ぎない。我々はそんなものを信じない」。発表会の席では、売上高や設備投資の目標など5つのコミットメントを宣言した(38ページ参照)。掲げた目標については、進捗状況を年次報告書で公開する。

 GEはエコマジネーションの準備に1年かけ、世界中の顧客や学者、従業員と対話した。さらに環境コンサルティング会社に委託して、社内にある17の環境ビジネスの実力を精査した。そのうえで高い成長を実現できると見て、コミットメントを掲げた。単に貪欲に成長市場へ入るだけではない。理詰めで市場の特性と自社の強さを分析し、細かい攻略法を作る。その進め方を次章で紹介しよう。

 「買収の一番の理由は市場にある。ヘルスケアの世界市場は4兆ドルと巨大だが、年8%の有機的な利益成長が実現可能だ」

 英バイオサイエンス大手のアマシャムを買収した理由をイメルト会長に問うと、即座にこんな答えが返ってきた。有機的成長とは、買収や譲渡、為替変動の影響を除いた売上高の内部成長率を指す。いわば化粧をしない数字だ。

 イメルト会長には「低成長時代でも、成長を加速できる」という信念がある。そのために重視するのは、有望な“市場”を選び、資金と人材を注ぐこと。そのうえで、さらに経営資源が要れば買収で事業を拡大し、逆に利益が期待できなければ冷徹な目で切り捨てる。

 「世界の平均GDP(国内総生産)成長率の3倍の8%という目標は高成長市場を見つけないと、実現できない」

 買収されたアマシャムの元トップで、現在はGEヘルスケアの会長を務めるサー・ウィリアム・キャステル氏は言い切る。

 キャステル氏によるとGEでは1年の計画を立てる際に、まず15年くらいの長期的な視野から市場に影響を及ぼす要因を調べる。そのうえで今後2〜3年というより短い期間で、自分たちが何をしなければならないかを考える。内部成長が10%以上見込める事業は、参入要件を満たすことになる。

 GEは競合の状況も重視する。「私は32社が競争する携帯電話や15社が競合するノートパソコンのような世界は好きでない」(イメルト会長)。ヘルスケアも航空機エンジンでも競合の数はせいぜい3社か4社。そこで買収をてこにしながら寡占状態を作る。参入障壁を高くしなければ、たとえ短期的に成長できたとしても、長期的な成長は期待できないからだ。

 アマシャム買収は規模の拡大よりも、ヘルスケア事業の成長スピードを速めることが目的だった。「アマシャムの手がける『予防医療』の市場は高成長が予想された」と、イメルト会長は狙いを説明する。予防医療とは病気になる前や早期の段階での発見と治療を目的とした医療のことだ。

 買収前のGEの医療機器事業の売上高は2003年で110億ドル。超音波診断システムや人間ドックで全身検査に使われるMRI(磁気共鳴画像装置)システムなどに強みがあった。

 一方、アマシャムの売上高は30億ドル。生物科学の分野で技術力を持っており、早期の病気発見のために体内の組織や器官の状態を検査する技術などがあった。

 キャステル氏はGEの買収提案を受け入れた理由をこう説明する。「GEの機械装置の競争力と当社の診断技術の組み合わせで、相乗効果が期待できた。イメルト会長にはアマシャムを理解しようという姿勢があり、価値観も共有できた」。売上高の規模では約4分の1にもかかわらず、アマシャム出身のキャステル氏を事業のトップに据えるという配慮もあった。

 新生GEヘルスケアでキャステル会長が狙うのは、両者の強みを生かして予防医療の観点から心臓疾患、ガン、アルツハイマー病に関連する市場で成長することだ。とりわけ原因の幅が広い心臓疾患に力を注ぐ。例えば、糖尿病患者は爆発的な勢いで増えており、今後10年間で2億人になると予測される。うち80%は心臓疾患を併発して治療が必要になると見られている。

 買収から1年で、GEヘルスケアは心臓病の発見と治療に役立つ新製品を続々と発売した。

 「次世代の聴診器」。そう呼ばれているのが、「ビビッドアイ(Vivid i)」である。ノートパソコンのような大きさでどこにでも持ち歩ける超音波検査システムだ。大規模な病院に行かなくても心臓の血管の状態を診察できる。従来、181kgの重量があった高性能な超音波システムを、わずか4.5kgにまで小さくした。さらに遠隔地との情報のやり取りが可能なコンピューターネットワークへの無線接続の機能も付加した。今後3年間にビビッドアイの潜在市場は、1億ドルになるとGEは見込んでいる。

 心臓の断層写真を従来の3分の1以下のわずか5秒という短時間で撮影できる「ライトスピードVCT」という新製品も今年発売した。心臓発作などが起きた場合に、短時間で心臓の状態を正確に把握できる。既にこの製品に対して1億5000万ドルの受注を得ている。

 旧アマシャム製品の販売力の強化は顕著だ。GEの医療機器部門が持っていた世界中の営業拠点を活用することにより、旧アマシャムでは入り込めなかった顧客にも製品を販売できるようになった。例えば、アルツハイマー病の薬があったが、世界的な販売力が弱かった。しかしGE傘下に入って状況は一変した。「最近3カ月で4社の製薬会社と当社のアルツハイマー薬の販売契約を結ぶことができた。小規模なアマシャムでは考えられない大きな顧客ばかりだ」(キャステル氏)。

 GEヘルスケアの躍進は目覚ましい。2004年、GEヘルスケアの利益は前年と比べて34%成長した。2005年の売上高は20%以上増えて170億ドルに達する見込みだ。

 GE傘下の米放送大手のNBCによる仏メディア大手のビベンディ・ユニバーサル・エンターテインメント買収も“成長の加速”という意味ではアマシャムと狙いは同じ(40ページの図)。ただし製品開発など長期的な相乗効果が大きいヘルスケア事業の買収に比べると、「短期的な現金収入の増加が期待できる」(イメルト会長)。ソニーが米映画スタジオのメトロ・ゴールドウィン・メイヤー(MGM)を買収したことが象徴するように映画ビジネスからは安定的な収益が見込みやすい環境が整っている。

 今では、映画1本を製作した場合に入る収入の過半は劇場での興行収入ではなく、DVDソフトの販売などの新しい収益源が占める。つまり過去と同じ水準の製作費をかけて映画を作っても、投資を回収できる場面が増えている。ソニーが近年、映画事業で300億円から400億円の営業利益を継続的に出せる理由はそこにある。

 「当社もMGMの買収を検討したが、結局、ユニバーサルを買収することに決めた。同社の持つ豊富な映像資産を、当社がニュース番組を供給するケーブルテレビに販売していく」(NBCユニバーサルのボブ・ライト会長兼CEO)。

 今後はインターネットの高速化も進み、映画をネット経由でも販売できるようになる。NBCはMSNBCというマイクロソフトと合弁で設立したチャンネルを持ち、ネット分野に積極的だ。2004年、NBCユニバーサルの利益は前年と比べて28%成長した。市場を選別する眼力を磨いて、GEは再び成長へのアクセルを踏み込んでいる。

 日本企業の間でも有名となったGEの業務改革運動、シックスシグマ。これがイメルト会長になってからは、トヨタ流を取り入れた「リーン・シックスシグマ」へと進化した。活動自体は4年ほど前から始まっていたが、拍車がかかったのは1つの出来事がきっかけとなっている。2003年にGEの幹部が訪問団を組んでトヨタの米ケンタッキー工場を視察したことだ。当時は、「GEは何を狙っているのか」とトヨタ社内で話題になった経緯がある。

 「時間の概念を取り入れて、生産性を向上している点が印象的だった」と、この訪問団の1人だったゲリー・ライナー上級副社長は振り返る。CIO(最高情報責任者)を務めるライナー氏は、シックスシグマの旗振り役でもある。

 それまでGEが進めてきたシックスシグマは、コストに焦点を当てたものが多かった。これに対して、トヨタは開発期間や納期などを縮める活動に取り組んでいた。「時間を縮めれば、結果として、コストダウンにつながるばかりでなく、顧客満足の向上にも結びつく」。この点が、GEにとっては新鮮だったようだ。

 他社の良いところは、貪欲に吸収するのがGE流。大きな儲けを追うだけでなく、地道な改善による基盤作りも欠かさない。この訪問がきっかけとなり、全社で「時間革命」が始まった。例えば、子会社であるGEエアクラフト・エンジンは、5年前に60カ月だったエンジンの開発期間を現在、24カ月まで短縮した。「2006年中には18カ月まで縮める」とライナー上級副社長は言う。

 シックスシグマの進化は、日本の事業所にも浸透している。日本GEプラスチックスの新井秀実氏。彼の肩書はコマーシャル・マスターブラックベルトという。GEではシックスシグマの習得レベルに応じて、グリーンベルト、ブラックベルト、そしてマスター・ブラックベルトと段位が上がっていく。マスターがつくと、指導的な立場になる。その新井氏はこう語る。「電話応対の時間を短くするだけでコストは浮く。トヨタはこうしたコストダウンを大事にしている。それがGEに浸透してきた」。

 一方、事業や業務革新で生み出した利益を、次の成長のために継続的に投資する。イメルト会長になってから、鮮明になったのが技術重視の姿勢である。GEの研究開発費は2000年に22億ドルだったが、その後、徐々に拡大し、2004年は31億ドルに達した。

 世界の開発陣の7割以上、2500人が集結するニューヨーク州ニスカユナの研究所、GEグローバル・リサーチ。施設内に入ると、印象的なのはアジア系やインド系の研究者の多さだ。様々な肌の色を持った研究者たちが、最新鋭の施設を使って、デジタルX線画像診断、代替エネルギー、ナノテクノロジーなどの研究に打ち込んでいる。

 この研究所は建物や設備が老朽化していたため、1億ドルを投じて刷新した。また、2003年に中国・上海、2004年にドイツ・ミュンヘンにも拠点を新設し、インド・バンガロールを加えて、4局体制となった。市場に近いところに世界中の優秀な研究者を集めるというのがGEの基本方針である。

 技術重視の姿勢は日本のグループ会社でも見られる。GE東芝シリコーンの熊谷昭彦社長は「イメルト会長は、リスクを取って技術に資金と人材を投下しようという姿勢を鮮明にした」と語る。昨年、静岡県の応用技術開発センターを数億円かけて刷新した。これまでは建築や消費財など様々な用途に用いるシリコーンを幅広く研究していたが、利益率の高い半導体などの電子産業向けに特化した。「電機関連の企業は日本に多い。新技術を開発し、GEの世界の拠点に成果を伝える」と熊谷社長は展望を語る。

 もっとも、基礎研究に力を入れると言っても、そこはGEのこと。将来、製品化できるかどうかが厳しく問われる。研究者は「ビジネスマインドの養成」をテーマに定期的に研修を受ける。また、事業部門の社員とも頻繁に市場動向について意見を交わす。

 そもそもGEグローバル・リサーチは、5〜10年で事業化できる研究内容が全体の7割を占める。また、製品化に10年以上必要な先端技術においても、バイオ、燃料電池、ナノテクなど6分野と明確に定められている。いずれも、高い成長目標を掲げるGEの目で見て、将来有望と判断した分野ばかりだ。

 最近は日本企業の中でも、製品化につながりにくい基礎研究を軽視する傾向がある。中央研究所を廃止する企業も増えている。しかし、GEはそうした風潮とは一線を画す。利益重視で大胆な資産の入れ替えを進める一方で、将来を見越して研究開発にも力を入れ、潜在市場を作り、伸ばす。先端技術がやがて市場拡大と利益にどうつながるかを見据える経営は、特筆すべき点だろう。

 自社の事業と顧客との接点を意識するため、イメルト会長がもう1つ力を入れたのが、営業やマーケティングの強化。2001年以降、全世界で1000人以上も営業部員を増やした。国際化を進め、インドや中東、中国を中心に社員を拡充した。

 GEの考える営業は、単なる「売り子」のイメージとは異なる。CMO(最高マーケティング責任者)を兼務するベス・コムストック副社長は「顧客を知り尽くしたうえで、新しい市場を切り開くのが、GEの営業社員に求められる資質。それを3年越しに世界の営業社員を集めて、啓蒙してきた」と語る。CMOはイメルト会長の肝いりで設けた。コムストック副社長は、顧客志向を全社に根づかせる。エコマジネーションの推進でも、環境技術と顧客のメリットという観点から社員を啓蒙した。

 顧客志向は、同社の人材教育にも反映されている。GE独自のリーダーシップ開発研修所であるクロトンビル(米ニューヨーク州)。多くの日本企業が参考にするこの研修所が今、取り組むのが、成長加速経営下での「リーダー」の育成である。「世界中の成功例を研究し、それを牽引するヒーローを選び、理想的な幹部の役割を再定義した」とコムストック副社長は言う。

 その1つが「市場の尺度で成功を測り、顧客や社会など外からの視点を大切にする」というものだ。外部の視点で新規ビジネスを創出することを、徹底して教える。例えば、前述した水質管理・淡水化事業のように、複数の事業部門が連携してプロジェクトを勝ち取る例を紹介し、成功例を共有する。

 もう1つ重視するのが「専門性の強化」。イメルト会長は「異端の考え方かもしれないが、私はプロフェッショナルマネジメント(経営のプロ)の時代は終わったと考えている」と言う。その意味するところは、優れた経営者ならどんな仕事でもできると考えて、オールラウンドプレーヤーを養成するのには限界があるということだ。ITでも金融でも、より専門性が問われる。また1つのプロジェクトを勝ち取るのに、1人の知識だけでは太刀打ちできないことが背景にある。特定の強い分野を持ちながら、周囲と連携して、会社の高い成長を促進する。それがGEの考える新リーダー像というわけだ。

 「時代環境に応じて、研修内容も進化する」。こう語るイメルト会長は月に3度はクロトンビルを訪れ、幹部候補生を対象にリーダーシップについて、講義する。若手と話すことでイメルト会長自身も自身の経営を客観視する。そして対話から発見もする。

 長期的視点に立つ研究開発、顧客志向の商品開発。生え抜きリーダーの育成。GEはトヨタやキヤノンなど、日本を代表する製造業と共通項がある。中でもGEは高い利益を貪欲に求める軸を持ちながら、どの市場に入るかという高所からの分析と、自社の人材と技術の開発という地道な活動を妥協なく続ける。GEを「しょせん米国の会社」と突き放すと、日本企業はいつまでも追いつけない。

社員は利益のためなら、どこにでも行く

ビル・ウッドバーン氏[GEインダストリアル戦略担当上級副社長]
成長市場で新製品を作り、顧客を増やす
ウィリアム・キャステル氏[取締役会副会長兼GEヘルスケア会長]
世界の営業社員に、顧客志向を訴えてきた
ベス・コムストック氏[副社長兼CMO(最高マーケティング責任者)]

イメルト会長がエコマジネーションの発表会で宣言した
5つのコミットメント

1. 2010年までに、環境関連の研究投資を現在の約2倍の年間15億ドルに拡大する
2. 環境に優しい商品の開発や金融支援などを通じて、顧客の利益に貢献する
3. 2012年までにGEの企業活動によって生み出される排ガスの量を2004年比で1%減らす
4. 環境関連ビジネスの収入を現在の100億ドルから2010年には少なくとも200億ドルに倍増する
5. 上記の目標に対する進捗状況を毎年、年次報告書で外部に公開していく

ワシントンで開いた「エコマジネーション」の発表会。顧客企業とともに、環境ビジネスに注力すると宣言
ニューヨーク州ニスカユナにある研究所は、アジア系の研究員が多く、国際色豊か

GE最強日本人
藤森義明氏[日本GE会長]の働きぶり
 世界100カ国以上に拠点を構え、常に成長を目指すGEは、30万人の社員の激しい働きでも知られる。昇進にはさらに抜きんでたものが求められる。GEの日本人でトップに立つのが、日本GE会長兼GEコンシューマー・ファイナンス・アジア社長兼CEOの藤森義明氏(写真)。

 藤森会長は本社の上級副社長でもあり、イメルト会長ら約30人が集まる経営会議にも出席し、意見を言う。日本、アジア、米国を舞台に活躍している。最も見識が問われるのは、米本社での経営会議だ。担当の金融事業の報告はもちろん、経営会議メンバーでアジア人は藤森会長だけに、アジア全般の意見を求められる。日本やアジアの景気動向から、日中関係の行方、さらにトヨタ自動車からGEが学ぶべき点を伝える。藤森会長の言動が、GEのアジア戦略に大きく影響してくる。

 特にイメルト会長はGEの文化として「多様性」を掲げており、欧州地域幹部やアフリカ系米国人、女性らを上級職に抜擢している。多彩な幹部の中で、どれだけアジアの見方を伝えられるか、まさに人間力が勝負となり、気が抜けない。米本社の会議のためだけで年間9回は出張する。

 一方で、アジア出張も少なくても月1回はある。タイや韓国、インドなどアジア全域を飛び回る。売上高の増加だけではなく「現地の人材の育成と登用も大切な仕事」。藤森会長の年間評価も、利益達成だけでなく、各国でのビジネス開拓、人材育成、さらに社会貢献も加わる。アジア全域への目配りが欠かせない。こうなると「日本にいるのは1カ月に10日間」という。

 藤森会長は大学卒業後、商社勤務を経て、GEに入社し、メディカルやプラスチック部門を経て、昇進してきた。GEの魅力について「人事システムがきちんとしており、働いた人が正しく評価されるところ。ずるができない社風がいい」と分析する。今でも1日の勤務を終えた夜9時からは米国本社との電話会議が週に2〜3回はある。

 「出張が多いので、飛行機の中は思考の時間として使う」と言う。優秀な社員が多いGEでは「私が休めば、後ろから30人くらいがすぐに追い抜いていくはず」と、強いプレッシャーもある。世界中のGE上級幹部の中でも、担当する地理的範囲は広く、市場の潜在需要も大きい。藤森会長は「まだ可能性を試してみたい」と、さらなる飛躍に向けて意欲は満々だ。


一夜にして企業が大変身

GE流の合弁マネジメント

 買収を得意とするGEは傘下に収めた会社をGE流に変えるのも得意としている。

 GE東芝シリコーン(東京都港区、社員500人)はその典型例だろう。1993年まで同社の出資比率は、東芝が51%でGEが49%だった。経営幹部は東芝側から出ていた。ところが、94年にGEが出資比率を上げて51%に高まると、GE流に経営は様変わりした。まず当たり前だが、社長はGE出身者になった。現在の熊谷昭彦社長(写真)はGE出身者の3人目に当たる。熊谷氏は「年功序列がなくなり、実力本位になった」とその社風の変化を挙げる。

 例えば、同社の基幹工場である群馬県の太田工場長には40代前半の社員を抜擢。東芝時代より約10歳は若返ったという。中国事業の統括者も40代のほか、若手の抜擢が増えている。

 若返りだけではない。責任の幅も広く与えている。同社の製造部長と営業本部長らは、日本だけではなく、同社が展開するアジア6カ国を統括する。一方で、熊谷社長が直轄する責任者20人のうち、10人は日本人以外の外国の社員に任せるなど経営の現地化も進んでいる。

 人事交流も盛んだ。笠原豊・取締役アジアパシフィック営業本部長は、東芝時代は工場一筋で過ごしてきた。ところが、GEが経営を握ると「ある日、電話がかかってきて、工場から本社に呼ばれた」(笠原取締役)。

 エンジニア出身だが、今では営業を担当する。「東芝は今も取引先でもあり、尊敬する会社。それとは別にGEになって仕事の幅が広がった」と話す。笠原氏は7月もベトナムでアジア全体の会議を開き、人材育成にも力を注ぐ。

 GEでは自ら企画を立案する社員が評価される。成否も問われるが、まずは挑戦が欠かせない。熊谷社長は「自分が就任してから、社員がさらに前向きになった」と言う。

 それを象徴するのが、研究所の体制変化。熊谷社長はGE本社を説得、日本の研究テーマを半導体関連に特化させた(42ページを参照)。しかも日本だけでなく、GE全体に研究成果を提供する施設へと位置づけも高めた。億円単位の資金をかけて、最新の検査装置も整えた。

 合弁は変わらないのに、資本の持ち分が逆転すると、働き方は変わる。合弁のグループ企業にもGE本社と同じ経営手法を浸透させるのもGEの徹底したやり方なのだ。


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2009年09月10日

外資系出身3氏、投資会社を設立−2003/09/17

日本やアジアの企業にリスクマネーとアドバイスを提供したい―。
UBS証券社長兼CEOのマーク・チバ氏ら外資系金融機関の幹部3人が、企業を対象とした投資会社「ロングリーチグループ」を設立する。

企業へのアドバイザー経験を豊富に持つ3人が実際に投資も行うことで、日本流のウエットな文化特性と欧米流の資本効率を重視したドライな文化を融合させた新しいタイプの投資を行い、日本経済の再生に寄与したい考えだ。

共同代表となるのはマーク・チバ氏のほか、元メリルリンチ日本証券マネージングディレクターの三好康之氏、モルガン・スタンレー証券マネージングディレクターの吉沢正道氏。

日本・アジアにおいてはリスクマネーと経営アドバイスが不足しているという点で3人の意見が一致し、独立を決めた。

「人生をかけて新たな事業に取り組むのだから、意義のあるものに育て上げたい」(三好氏)と意気込む。

投資会社はいわゆるプライベートエクイティ(PE)ファンド。
内外の投資家から資金を集めて日本・アジアの企業または事業を買収。
リストラ・事業再編などをアドバイスして事業価値を高め、株式公開や第三者への転売によって利益を得る。

買収の対象となるのは過剰債務・過剰人員・過剰設備を抱えている不振企業、親会社からのスピンオフを考えている企業など、資金やアドバイスを必要としている企業。

レバレッジド・バイアウト(LBO)、マネジメント・バイアウト(MBO)などの金融技術を駆使してバリューアップのスピードを速める。
9月中にも資金の募集を開始し、当面は500億円程度の規模にする模様。

すでに東京と香港に事務所を設置した。
代表となる3人はアドバイザーとしての経験を豊富に持っており、企業を買収することでより積極的な企業への関与が可能になる。
「企業と一緒の船に乗り、企業価値を共に高めていきたい」(同)という。

「日本の企業はしがらみが多く過度に社会主義化している面がある。
米国流に資本効率を重視し、ガバナンス(企業統治)を効かせるやり方との融和を図るべきだ」(同)と、日本・アジアの文化や理念を尊重しつつ、グローバルスタンダードを取り入れた経営手法を提案していく考えだ。

この数年、事業再生などを担うファンドが急増しているものの投資を終了したものは数少なく、ファンド成功のパターンは描けていない。
アジア・太平洋地域をまたにかけ、アドバイザー経験者が運営するPEという新しい形態が成功するか、注目される。
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2009年09月08日

倒産(国有化)したAIGが元気だったころの中国進出(2005年2月)

 昨年十一月、米アメリカン・インターナショナル・グループ(AIG)に待望の知らせが入った。「資産運用合弁会社の営業を認可する」。中国当局からのゴーサインだ。

 この資産運用事業は実現にこぎ着けるまで足かけ八年かかった。AIGが中国政府に認可申請したのは一九九六年。その後のアジア金融危機で一時は話が宙に浮いたが、ようやく生保と損保を加えた同社の主力三事業が中国で出そろった。

 人口十三億人の中国は保険の普及率が低い一方で、経済成長とともに所得水準が急上昇中。こうした事情を背景に二〇〇三年の損保の保険料収入は一九九八年比で二倍強に膨らんだ。ゴールドマン・サックスは中国の国内総生産(GDP)が十年ほどで日本を上回り、二〇四〇年には米国を追い抜くと見る。これを見越したかのように、AIGは中国市場の開拓で常に先手を打ってきた。

 AIGの総帥、グリーンバーグ会長が中国の地を踏んだのは米中国交正常化から間もない一九七五年。以来、数十回にわたって訪中し、指導部とも会談してきた。パイプの太さを物語るのは九二年に外資として初めて認可を受けた保険営業だ。

 実際、AIGの食い込みはすさまじい。天安門事件で中国が国際社会の批判の矢面に立ったとき、同社はワシントンでの批判を和らげるのに一肌脱いだとされる。米国での最恵国待遇の更新論議でも中国側の代弁者となり奔走した。

 二〇〇二年春。グリーンバーグ会長が会見でライバルの外資系保険会社を痛烈に批判する一幕があった。「中国にはいろいろ提供したし、米中関係のために汗もかいてきた。その間、他社は何をしてきたのだ。泣きたいなら大きなタオルをくれてやる」。他社が不満を募らせていたのはAIGのみに認められた市場参入の優遇措置だった。

日本でも実践
 時には米政府をバックにつけて進出先から有利な条件を引き出す。だが当地の要人に好感を持たせるために時間をかけた根回しもいとわない。市場にいち早く入り込んで種をまき、経済の成長とともに実りを収穫するのがAIGのビジネスモデルだ。これは日本でも実践済み。終戦直後に進出し、今では大手生保に迫る規模まで成長した。

 「この提携はホームランになる」。二〇〇三年十月、決算発表の場でグリーンバーグ氏の声が弾んだ。相手は中国損保市場の六三%のシェアを握る最大手、人民財産保険。傷害保険などに関するノウハウの提供をAIGから受けて商品を開発し、中国全土で販売。引き受けた保険のかなりの部分を再保険の形でAIGへと還元する内容だ。

 外資系損保の中国のシェアは一%にすぎない。自前の市場開拓には限界があり、巨大市場の果実を手に入れるには現地企業との提携が有力な選択肢となる。中国二位の損保の市場シェアは一二%とトップとの間には大きな差がある。最大手をとられたライバルらは、埋めがたい溝を意識せざるにはいられなかった。

次はカード事業
 保険だけではない。AIGは次の一手としてクレジットカード事業も仕込む。「眠らせておけ。中国が目覚めたら世界が揺れる」。約二百年前、ナポレオンはこう予言した。巨竜・中国の目覚めに備えるかのように動いてきたAIGは、長い間に醸成した果実をいま味わおうとしているようにもみえる。

【表】損害保険料収入の国際比較      
〓〓  単位:億ドル。市場拡大率は03年と98年の比較  〓〓
  1998年  2003年  市 場拡大率
中国  60.4  144.7  140%
韓国  110.0  177.6  61%
日本  920.0  975.3  6%
米国  3879.3  5745.7  48%
(注)保険ブローカーのウィリス調べ      
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2009年09月07日

メリルリンチのコマンスキーCEO伝説(2000年1月)

 一九〇センチを超える長身に相撲取りをほうふつさせる堂々たる体躯(たいく)ーー。
 会長兼最高経営責任者(CEO)として、ウォール街を代表する米大手証券メリルリンチのかじ取りを担うデービッド・コマンスキー氏(60)は、どこか恵比寿様を思わせる柔和な笑顔を絶やさず、会う人を魅了せずにはいられない。

 コマンスキー氏はエリートぞろいのウォール街の中でも異色のトップといえるだろう。郵便局員をしていたロシア系ユダヤ人の父とアイルランド人の母との間に生まれた同氏がウォール街人生をスタートさせたのは六八年。「実力主義に魅了されて」マイアミ大学を中退し、メリルリンチのドアをたたいた。

 「電話器を何台壊したか思い出せない」というほどの猛烈営業マンとしてめきめき頭角を現した同氏は、その後も一貫して個人営業畑を歩み、九〇年に初めて株式の引き受けなどを実施する投資銀行部門に移籍。債券や株式などのトレーディング部門のトップなどを経て九五年に社長兼最高業務責任者(COO)に就任した。CEOに上り詰めたのはそれから二年後の九七年のことだ。

 トップの座を射止めてからも猛烈ぶりは変わらない。コネチカット州にある自宅を出るのは午前五時半。午前七時までにマンハッタンのダウンタウンにあるオフィスに顔を出す。

 ニューヨーク・ヤンキースの熱狂的なファンで、趣味はアジアとインディアンアートの収集。ワイン好きのグルメとしても知られ、レストランでメニューにあるすべての料理を注文したという逸話もある。

 メリルは創業以来の戦略の大転換期にある。インターネットの登場によるオンライン取引の急速な普及で、営業マンによる伝統的な個人営業の手法からの事実上の決別を余儀なくされたからだ。すでに大口顧客に無料のオンライン取引サービスを開始、十二月から二九ドル九五セントのオンライン取引の提供を始めた。

 インターネット時代へと大きくカジを切った「巨艦」メリルを率いるコマンスキー氏はそれでも「コンピューターで買い物をするなんて理解できない」という。「バーンズ・アンド・ノーブルに出かけて人がどんな本を読んでいるのかを見るのが好き」という同氏の流儀はどこまでもヒューマン・タッチだ。

 こんなエピソードがある。勤続二十五年を迎えた株式トレーダーに突然、コマンスキー氏から電話がかかってきた。聞こえてきたのは「勤続二十五年おめでとう……」という「ハッピー・バースデー・トゥ・ユー」の替え歌。「どこにこんなことをする経営者がいる?」。このトレーダーは喜ぶよりも驚く方が先にきたという。

 人と会うのを何よりも喜び、ユーモアもたっぷりの同氏だが、冷徹な合理主義者としての顔も併せ持つ。同氏が嫌う電子商取引(EC)をメリルがオンライン取引サービスの一部として展開するのも「それが現実だから」。昨年七月には他の経営陣とのあつれきが増したナンバー2のハーバート・アリソン社長を事実上、解任するという荒業もみせた。

 七〇年代に同社のドナルド・リーガン会長(元財務長官)はメリルをリテール主体から投資銀行業務までも幅広く手掛ける総合証券に脱皮させた。コマンスキー氏が背負う課題は「eメリル」への変身だ。定年まであと五年。コマンスキー氏は鼎(かなえ)の軽重を問われる。

↓米同時テロ以前のアメリカ人の「バブルな浮かれぶり」を痛烈に批判した笑えるドキュメンタリー映画「華氏911」=名作です↓


 
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米HP会長の進退浮上、機密漏洩で加州調査(2006/09/11)

米ヒューレット・パッカード(HP)の報道機関への機密情報の漏洩(ろうえい)問題を巡り、パトリシア・ダン会長の進退問題が浮上してきた。情報源を特定する方法に問題があったと指摘されているためだ。カリフォルニア州当局も違法性の有無など詳しい調査に乗り出した。混乱が長引けばリストラで軌道に乗り始めたHPの経営改革に水を差す恐れもある。

 HP取締役会は十日午前、数時間にわたり同問題への対応を協議した。ダン会長の進退も議論したとみられるが結論は出なかったもよう。十一日午後に再び取締役会を招集する。

 HPなどによると、二〇〇五年初頭、取締役会での協議内容が報道機関に漏れる問題が深刻化し、情報源をつきとめる調査に着手した。その結果、ジョージ・キーワース取締役が情報源と判明。取締役会は今年五月十八日にキーワース氏に辞任を求めたが同氏が拒否したため、来春の株主総会で再選候補に指名しないことを決めている。

 問題化しているのは情報源の特定に使われた方法だ。HPから調査を請け負った外部の専門会社が身分を偽ってHP取締役や、ニューヨーク・タイムズ紙などの九人の記者の通話記録を電話会社から入手していた。カリフォルニア州のビル・ロッキヤー司法長官は違法行為があったかどうか詳しい調査を始めた。

 ダン会長は十日の取締役会以前のインタビューで複数のメディアに対し、「自分から辞任する意思はないが、取締役会が求めれば会長、取締役を辞任する」と語った。通話記録の入手方法については「私自身も調査対象であり詳細は後から知った。驚いている」と釈明した。

 マーク・ハード最高経営責任者(CEO)は従業員あての電子メールで「(今回の問題は)HPの戦略や経営には関係がない。自信をもって業務に集中してほしい」と呼びかけている。しかし問題が刑事事件に発展するなど混乱が続けば、事業面での意思決定の遅れなど経営への影響は避けられない。

 HPは昨年二月に解任したカーリー・フィオリーナ氏の後任として同年四月にハード氏がCEOに就任。人員削減など構造改革が進み、五―七月期の実質純利益が前年同期より四割増えるなど成長軌道に乗り始めた段階にある。

【表】HPの情報漏洩問題を巡る動き    
<2005年>…    
初頭  ○  取締役会での協議内容などが報道機関に漏れる問題が深刻化、情報源を特定する調査に着手
<2006年>…    
5月18日  ○  取締役会が情報源と判明したジョージ・キーワース取締役に辞任を要請、同氏はこれを拒否。調査方法に反発したトーマス・パーキンス取締役が辞任
8月31日  ○  来春の株主総会でキーワース取締役を再選候補に指名しないことを取締役会で決定
9月6日  ○  HPが情報漏洩問題の経緯などを米証券取引委員会(SEC)に報告
8日  ○  マーク・ハード最高経営責任者(CEO)が従業員あてに電子メールを送付、業務への専念を呼びかけ
10日  ○  ダン会長の進退など対応策を取締役会が協議、結論は持ち越し
11日  ○  取締役会を再招集(予定)
(注)HPがSECに提出した資料などをもとに作成    
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2009年09月06日

ミルケン判決を機に気合いを入れなおす米SEC(1990年11月30日)

 ジャンク債(信用度の低い高利回り債)の帝王、マイケル・ミルケン氏に禁固十年の判決が出たことで、米証券界を揺るがせた大規模な不正摘発は一段落する。しかし、これで終わったわけではない。インサイダー取引などに対する捜査能力を一段と増強した証券取引委員会(SEC)は新たな不正摘発に力を入れ始めた。ミルケン氏の捜査協力をテコに、破たんした貯蓄金融機関(S&L)の経営者などに摘発の輪が広がる可能性もある。 

 ミルケン氏に対する刑事裁判で十年の禁固を言い渡したニューヨーク連邦地裁のウッド判事は「被告人が政府に協力すれば刑の調整も可能」と述べた。十年の刑期は証券不正事件では過去最長。予想を上回る厳しい内容だった。インサイダー取引で摘発され、八七年に禁固三年の判決を受けた投機家、ボウスキー氏の弁護士ピット氏は「ミルケン氏が容疑を否定し続けたことが響いた」とボウスキー判決との差を指摘する。

 ミルケン氏は四月に刑事裁判で有罪を認めると同時に、民事訴訟を起こしていたSECとも和解、不正利益の返還・罰金など合計六億ドルの支払いを約束している。同氏が量刑を不服とし控訴する可能性はあるものの、SECや司法省が四年の歳月を費やした事件は終息に向かう。同氏が属したドレクセル・バーナム・ランベールも摘発を受けたあげく、既に倒産している。

 ミルケン氏まで当局がたどりついた端緒はSECによる八六年五月のドレクセル幹部レビン氏の摘発だ。同氏に対する捜査でボウスキー氏が浮かび上がり、摘発されたボウスキー氏はSECに全面協力することを約束した。SEC幹部は「難しかったインサイダー取引の証明を捜査協力が容易にした」と芋づる式摘発の効果を指摘する。

 関係者は今後、量刑との関係でミルケン氏自身がどの程度、関連事件の捜査に協力するかに注目している。ジャンク債の取引を通じ同氏と親交の深かった投資家などに相場操縦などの疑いが持たれているからだ。同氏は四月の和解時点でSECと司法省に協力を約束したが、刑期の短縮は実際に効果的な協力をするかどうかにかかっている。

 SECは二十七日、ドレクセルから大量のジャンク債を購入していた投資顧問業者D・ソロモン氏を摘発した。ミルケン氏と共謀、インサイダー取引や相場操縦を通じ相互の利益を図ったという内容だ。同氏は事実認否抜きで不正利益返還など七百九十五万ドルの支払いに応じた。ミルケン氏の協力が得られればドレクセルの顧客に対する摘発が今後、相次ぐ可能性もある。

 特にSECが注目しているのはS&L関係者の不正だ。経営が破たんした一部S&Lはジャンク債に大量投資していた。ブリーデンSEC委員長は「ミルケン氏の不正は金融機関の経営をも危険にさらした」という。SECは先ごろ、捜査局と企業財務局内にそれぞれ、スタッフ十人からなる金融機関特別班を設置した。ある幹部は「今後さらに人員を増やす」という。

 金融機関への監視強化はミルケン氏との関連だけにとどまらない。一千近いS&Lが整理される見通しのS&L危機について、ブリーデン委員長は「ディスクロージャー(情報開示)のごまかしが大量破たんの一因」とみている。連邦預金保険公社(FDIC)などはS&L経営者を相次ぎ摘発しているが、SECもこの輪に加わるわけだ。

 ミルケン氏摘発に至る一連の「ボウスキー・ドレクセル関連事件」で、SECは不正摘発能力を一段と強化した。七〇年代末から企業買収の増加に伴い増え始めたインサイダー取引に対し、議会は八四年に強力な制裁金を請求する権限をSECに与えた。元SEC法律顧問でもあるピット弁護士は「その後の一連の摘発を通じSECはほぼ円熟の域に達した」と指摘する。

 SEC幹部は「司法省との協力が円滑に機能するようになった」という。八八年九月のSECの提訴に対し違反を否定していたドレクセルが和解に応じたのも、刑事面を担当する連邦検事局が「組織暴力法の適用」を“脅し”に使ったことによる面が大きい。議会は同年、証券不正に対する刑事罰の上限を大幅に引き上げる法律も可決した。

 議会は今年十月、インサイダー取引以外の違反に対するSECの制裁金請求権限や海外政府との摘発に関する協力権限などを定める法律を可決した。こうした法律も一連の事件が明るみに出て摘発ムードが高まる中で可決された。SECはドレクセル事件をてこに法律面でも強力な武器を手にしたといえる。

【参考資料(DVD)】
映画「ウォール街」
マイケル・ミルケンは、80年代のアメリカのバブルを象徴する悪徳金融業者である。ミルケン事件をモデルにし、金融資本主義のインチキぶりを描いたのが、映画「ウォール街」だ。
ミルケンをモデルにした富豪投資家と、その投資家に憧れる新人トレーダーの腐敗が物語の軸だ。富豪投資家を見事に演じたマイケル・ダグラスは、本作でオスカーを受賞している。
バブルの本質は、地道に働くよりも、金を右左に動かして金持ちになることが正しいと錯覚してしまう風潮が広がることであろう。そういう意味では、工場で働き、労働組合の幹部を務める主人公の父親の姿こそ、バブルに踊ったすべてのアメリカ人が見習うべき「労働者像」であろう。
現在、続編となる「ウォール街2」を制作中。







  

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2009年09月05日

米証券の報酬高騰、トップ年収「60億円時代」(2007/02/07)

米証券会社トップの報酬が増え続けている。二〇〇六年度はゴールドマン・サックスのロイド・ブランクファイン最高経営責任者(CEO)が前年度に比べ四割アップの五千四百万ドル、メリルリンチのスタンレー・オニールCEOが三割増の四千八百万ドルを手にした。ウォール街の高額報酬はつとに有名だが、円換算すると「年収六十億円時代」の到来。米議会などからは「もうけすぎ批判」が出始めている。

 米証券の報酬は業績、株価との連動性が高い。昨年度はM&A(企業の合併・買収)仲介やヘッジファンド向けビジネスの拡大が支えとなり、業績は絶好調。ゴールドマンの純利益は九十五億四千万ドルと七〇%増え、株価も年間で六〇%近く上昇した。高収益・高株価が報酬を押し上げた。

 メリルリンチの場合、昨年度の純利益は四七%増の七十五億ドルに拡大。オニールCEOは時価二千八百八十万ドル相当の自社株に加え、現金ボーナス千八百五十万ドルも受け取った。「固定給」は七十万ドルで、大半が業績・株価スライド報酬だ。

 メリルではCEOだけでなく、投資銀行部門の責任者二人がそれぞれ三千七百万ドル、三千四百万ドルの報酬を得た。直接は収益を生まない事務部門のトップである最高管理責任者(CAO)も三千万ドルを手にしている。

 昨年度の純利益が四一%増となったベア・スターンズでは、ジェームズ・ケインCEOが三千三百万ドルの報酬を得た。

 経営トップだけでなく投資銀行の一般社員も破格の待遇を享受している。ゴールドマンでは従業員二万六千人の平均年収が六十二万ドルに達した。純利益が五一%増の七十四億七千万ドルとなったモルガン・スタンレーも、報酬平均は二十六万ドルにのぼった。

 わが世の春を満喫するウォール街だが「もうけすぎ」批判も強まるばかり。IT(情報技術)業界など百を超す上場企業でストックオプション(株式購入権)の権利付与日を不正に操作して利益を水増しした疑惑も浮上しており、米議会では経営者の報酬に上限を設ける法案を提出しようとの動きが出ている。

【表】ウォール街トップの昨年報酬額    
会社名    (単位万ドル)
CEO    
ゴールドマン・サックス    5,400(42)
ロイド・ブランクファイン氏    
メリルリンチ    4,800(30)
スタンレー・オニール氏    
モルガン・スタンレー    4,100(31)
ジョン・マック氏    
(注)カッコ内は前年比増加率%、年率換算

【参考資料(DVD)】
映画「ウォール街」
80年代のバブルにわくウォール街で、
有力投資家に気にいられようと懸命になり、
自分を見失う青年トレーダーの転落を描いた。
金融資本主義のインチキな側面を端的に表現した名作である。
富豪投資家を演じたマイケル・ダグラスがオスカーを受賞。
工場で働き、労働組合の幹部を務める主人公の父親の姿こそ、
バブルに踊ったすべてのアメリカ人が見習うべき「労働者像」であろう。
現在、続編となる「ウォール街2」を制作中。


  

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2009年09月04日

通信バブルの象徴=AT&Tマイケル・アームストロングCEO(2001年1月)

史上空前の買収ブームにわいた1999年の米産業界。中でも話題を呼んだのが、有力ケーブルテレビ(CATV)会社を相次ぎ買収し、「一つの産業を丸ごと買ってしまった」ともいわれた米最大の通信会社AT&Tだ。

同社を率いるのは、九七年に三顧の礼でCEO(最高経営責任者)に迎えられ、強烈なリーダーシップで巨艦企業を引っ張るマイケル・アームストロング会長(61)だ。

 同会長の買収攻勢は「すざまじい」の一言につきる。過去二年の買収総額は千四百億ドルに及び、年商の二倍超に達した。CATVで米首位のタイム・ワーナーと提携したほか、同二位のTCIと同四位のメディアワンの買収を決めた。

 矢継ぎ早の攻勢に世間の見方はおおむね好意的。ニューズウィーク誌は「衰え行く巨人をよみがえらせた男」と紹介した。通信のプロの世界でも評価は高く、NTT(日本電信電話)の宮津純一郎社長は「私が彼の立場だったら同じことをやった」という。

 アームストロング氏以前のAT&Tは、漂流する巨人だった。司法省との係争で八四年に地域通信会社と長距離会社(現AT&T)に分割された。成長戦略として、コンピューター会社NCRを買収したり、海外事業の強化を打ち出したりしたが、いずれも失敗。「AT&Tはビジョン先行で、実行が伴わない」という定評が出来上がった。

 アームストロング会長は就任早々、官僚主義にどっぷりつかった巨艦企業の意識改革に着手した。「今のAT&Tは(氏が在籍した)八〇年代のIBMと同じぐらい官僚的」と述べ、業績連動の給与体系を導入するなど新風を吹き込んだ。人員整理が必要とみると、社員にとってかなり有利な好条件で希望退職を募った。一時的に出費が増えるが、それでも長期的な体質改善を優先したのだ。

 こうした内部固めを「守り」とすると一連の買収は「攻め」。家庭に直結するケーブル回線を活用し、インターネット時代に従来の電話時代以上に支配力を築くのがアームストロング戦略の骨格だ。

 とはいえ、成功の保証はない。「最大の挑戦は時間と規模の両立だ」と同会長は今後の課題を指摘する。ケーブルインフラは手に入れたものの、それに“改良工事”を施し、デジタル時代をリードする先端インフラに衣替えするには、なお膨大な投資と技術面の取り組みが必要だ。

 「我々のユーザーは十万人とか百万人とかの単位ではない。数年以内に千万人規模の顧客に信頼性の高い次世代サービスを届けたい」とアームストロング会長は言う。派手な買収合戦にピリオドを打ち、今後はサービスのコスト低減やインフラの信頼性向上など日々の取り組みが、「規模と時間の両立」のために重要性を持ってくる。

 脚光を浴びるアームストロング会長にとって、試練はこれから。強烈な指導力と何にでも口をはさむトップダウンの姿勢が時に敵を生み、AT&Tの上級幹部の離職が後を絶たない。中でも昨年十月に退任したケーブル部門トップのレオ・ヒンドレー氏はケーブル業界で大きな存在感を持ち、AT&Tのケーブル戦略のかなめとみられただけに、大きな波紋を呼んだ。

 「我が社の定年内規は六十五歳。それまでに精いっぱいのことをやる」とアームストロング会長はいう。残された四年間に、華々しい買収攻勢のリターンを確実に収穫できるかどうか、氏の経営者としての真価がそこで定まる。 


【参考資料(書籍)】
この記事では、AT&Tの買収攻勢が称賛されている。しかし、この数年後、AT&Tは経営が悪化し、他の通信会社に買収されて、今は会社として存続していない。ブランド名だけが他の通信会社に利用されている。すなわち、一連の買収攻勢は、世紀の大失敗だったのです。

失敗だった理由は、買収がお客さんに何のメリットもない単なる「マネーゲーム」にすぎなかったからだ。マネーゲームに手を染めた企業は没落する。その典型例が、日本のライブドアである。ライブドアがいかにおかしくなっていったか、現役の朝日新聞の記者、大鹿靖明が、やや偏った視点と少々の空想を交えながら描いたのが、名著「ヒルズ黙示録」である。



この大鹿記者は、もともと朝日新聞の経済部の記者だったが、現在は朝日の雑誌「アエラ」の看板記者となっている。新聞記者だったころは、見出しを強く意識しすぎたセンセーショナルな記事で腕を鳴らした。とくに電機業界担当だったころは、当時絶好調だったソニーについてのネガティブな記事を連発し、当時の出井伸之社長を激怒させたことで知られる。(しかし、その後、出井社長とは「和解」した)。

松下電器産業や野村証券とも大げんかをした。

彼の「まず見出しありきのスタイル」と「空想を交えた過剰な描写」は明らかに新聞より雑誌向きであり、やはり、その後、アエラに異動になった。アエラでは、ライブドアの堀江社長らヒルズ族にかなり食い込んで、朝日新聞よりもはるかに面白い記事を毎週のように書いていた。

ただ、アエラにおいても、「国家の罠」の著者、佐藤優氏の記事をめぐって、佐藤氏から「めちゃくちゃな記事を書かれた」として公開質問状を出されている。

こんな功罪半ばする大鹿記者が、こんしんの力を込めて書いたのが初の単行本「ヒルズ黙示録」である。とにかく彼の取材量には感心させられるし、筆力もすごい。堀江氏が途中から頭がおかしくなってしまったかのように描かれているのも、興味深い。

堀江氏は、拘置所から出た後に描いた「徹底抗戦」で大鹿氏を「偏りすぎている」と強く批判している。

とにかく、まずは「ヒルズ黙示録」を読んでいただきたい。


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ファンド大型買収続々(2006/09)

アメリカで企業買収ファンドの大型M&Aが相次いでいる。

パイプライン大手のキンダー・モーガンは2006年8月末、米大手証券ゴールドマン・サックスの投資部門からなる投資家連合や現経営陣が同社を買収することで合意した。2006年7月末には、ベイン・キャピタル、コールバーグ・クラビス・ロバーツ(KKR)などの投資家連合が米大手病院チェーンのHCAの買収を決めた。

 ファンドの大型買収が増える最大要因は、「カネ余り」。ファンドの買収手法は、出資と借入金を組み合わせるレバレッジド・バイアウト(LBO)方式を用いる。ファンドには運用難に悩む機関投資家の資金が集まり、借入金も金利低下で貸出先を開拓したい大手銀行が積極的だ。米国でLBOブームだった一九八〇年代よりもM&Aでファンドの存在感は高い。

 今年は特にファンドによる大型買収が目立つ。HCA買収は約二百十二億ドルで、負債を差し引いた株式分の買収額は一九八八年にKKRが米たばこ・食品大手RJRナビスコを買収した二百五十一億ドルに次いで歴代二位の規模となった。

 一月に米カーライル・グループ、米ブラックストーン・グループなどが約九十六億ドルでオランダの大手メディア企業VNUの買収を決めた。

 経営者自身が出資するMBO(経営陣による買収)方式が増えているのも特徴で、今年の買収ファンドによるM&Aは昨年の倍のペースだという。






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2009年09月02日

米企業で「非上場」に戻る動き(2006年10月)

株式を上場している米国の大企業が投資ファンドに買収されて、非公開企業になるケースが増えている。

上場企業に対する厳格な規制を嫌う傾向が大企業の間で強まる一方で、非公開企業への投資を専門とするファンドが規模を拡大し、大型の買収に積極的に乗り出すようになったことが背景にある。

 ■ 案件の巨大化

 調査会社トムソンファイナンシャルによると、2006年に入って米国で上場から非公開企業になった企業の数はすでに昨年の年間104件に並んだ。株価総額は1601億ドル(約18兆8600億円)と、過去最大だった昨年の1・7倍に達した。1件あたりの金額は3年前の約15倍で、案件の大型化が進んだ。

 ニューヨーク証券取引所に上場する米半導体3位のフリースケール・セミコンダクタは9月15日、米ブラックストーン・グループを中心とする投資ファンド連合に身売りすると発表した。買収額は176億ドル(約2兆700億円)で、過去30日の平均株価に36%のプレミアムを上乗せし、1株あたり40ドルとした。

株主総会での承認を経て、来年3月までをめどに投資ファンドがフリースケール株をすべて現金で買い取り、株式非公開企業となる。

「非公開企業になることで経営の柔軟性が一気に高まり、迅速な意思決定ができるようになる」。フリースケールのミシェル・メイヤー最高経営責任者は従業員あての手紙の中で、非公開企業のメリットを強調した。

7月に発表された米病院チェーン最大手「HCA」の米証券大手メリルリンチなどの投資会社連合への身売りは、買収総額が330億ドル(3兆8900億円)。

買収相手の資産を担保に融資を受ける「レバレッジド・バイアウト」(LBO)としては、米史上最大規模となった。今月3日には米カジノ最大手に対して投資ファンドが買収を提案をするなど、業種も広がりを見せている。

 ■ 規制強化と投資ファンド
 米国では、経営破たんしたエネルギー大手エンロンなどの不正会計事件を受けて2002年に企業改革法が成立した。同法では、上場企業に財務諸表の適切さを文書で証明したり、内部統制の整備や運用状況の報告を義務づけた。

この結果、米の財務管理者団体FEIによると、企業改革法対策として米上場企業が2005年度に費やしたコストは、1社当たり平均380万ドル(4億4700万円)に達した。株式を非公開にすれば、こうした負担から逃れられる。

 非公開企業を対象とする投資ファンド(プライベート・エクイティー)は、こうした上場企業側の事情に目をつけ、買収を加速させている。今年は投資ファンドによるM&A金額が前年同期の2・3倍となり、米国でのM&Aの4分の1を占める。

ブラックストーンのステファン・シュワルツマンCEOは米公共放送のインタビュー番組で「企業改革法成立は我々のビジネスにとって最高の出来事となった」と語った。

 また、上場企業は株価や四半期ベースの損益を常に気にしながら経営にあたることが求められるが、非上場ならよる長期的な視野で投資できるのも、投資ファンドへの身売りが増えている理由の1つだ。

 ■ 株主の反対も
 投資ファンドは、割安と判断した企業や事業部門を買収した後、専門家を派遣したりして経営を支援し、数年かけて業績を回復させたうで、同業他社らに売却する。この際、買収時より数倍の価格がつくこともある。

 調査会社トムソンファイナンシャルによると、投資ファンドの運用利回り(今年3月末時点)は過去5年間に年率6・3%に達し、米主要500社(S&P500)を2・2%を上回っている。このため、金余りに悩む年金基金やオイルマネーなどの機関投資家が積極化させている。

 ただ、投資ファンドの買収手法には批判もある。
 投資ファンドと現職経営陣による石油パイプライン大手キンダー・モーガンの買収では、株価が約11か月ぶりの安値水準に下落していた5月に1株あたり100ドルの買収を提案した。これについて株主が「安値になるのを待って不当に買収を提案した」として買収価格引き上げるを求める訴訟を起こし、買収価格は8月に1株あたり107・5ドルに引き上げられた。

 デラウエア大学のチャールズ・エルソン教授(企業統治)は「株式の非公開化にあたっては透明性や株価の妥当性が問題となる。買収する側は株価が下落するタイミングを狙って買収を提案するため、株主側がタイミングに問題があると判断すれば、価格引き上げを求めるべきだ」と指摘する。







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グーグルがテレビ番組の有料配信へ(2006年1月6日)

米インターネット検索最大手のグーグルは2006年1月6日、インターネットを通じたテレビ番組や映画などの有料配信サービスを近く始めると発表した。

米地上波4大ネットワークの1つ、CBSが過去の人気テレビ番組300本を流すほか、現在放送中のドラマやバラエティ番組を放送の翌日から配信する。

 新サービスでは、利用者は、パソコンにダウンロード(情報の取り込み)したり、携帯型音楽・映像再生機「iPod(アイポッド)」など他のデジタル機器に転送して視聴する。

 このほか、ケーブルテレビ専門局や独立系映画会社、米レコード大手ソニーBMGなどの作品も配信する。

米プロバスケットボール協会(NBA)もグーグル経由で試合を中継する。グーグルは今後、他の地上波ネット局や米ハリウッド映画大手などにもコンテンツ供給を働きかける。

 サービスの料金はコンテンツ(情報の中身)を提供する企業が独自に決めるが、CBSの場合、1番組あたり2ドル(約200円)。

 米国の映像配信はこれまで無料サービスが中心だったため、人気テレビ番組はほとんどダウンロードできなかった。

 無料配信市場が順調に立ち上がってきたことを受けて、CBSなどの有力コンテンツ企業と提携し、本格的な映像配信に乗り出すことになった。




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2009年09月01日

日本企業の対米投資ブーム!!(2005年1月)

日本企業による対米投資ブームが起きている。

日本の自動車や化学、電機メーカーによるアメリカでの新規工場建設が相次いでいるのだ。アメリカ景気回復を受けて、一大消費地としての魅力が見直されている。

米企業の海外移転に悩む地元も「雇用拡大につながる」として誘致活動を活発化させている。

 「アメリカの雇用はどんどん海外に移転しまっている中で、日本の企業がアメリカに来るというのはありがたい」

 12月14日、信越化学工業が塩化ビニール樹脂工場の建設候補地ルイジアナ州での地元説明会では、出席した350人が次々と賛同の意見を述べた。

 新工場は、同州またはテキサス州のいずれかに合計約10億ドル(約1040億円)の巨費を投じて、2007年末までに建設する。工場建設だけで二千人の雇用を見込んでいる。

 1998年に新工場を建設した際に行った地元説明会では、環境汚染などへの懸念から建設反対の意見が相次いだ。しかし、今回、反対派は数人にとどまり、既存工場による地元経済への貢献を強調する声が大勢を占めた。

 同社は「米国は堅調な需要拡大が見込まれる一方で、(新興市場や途上国に比べて)社会・政治経済情勢の不安定化や混乱といった国家レベルのリスクが少ない」と説明する。2004年12月には、同社子会社の信越半導体もワシントン州工場の大増設を発表、グループで対米攻勢を仕掛ける。

繊維工場の相次ぐ閉鎖によって過去二十年間に雇用が半分に減ったジョージア州ハラルソン郡。

ここでは地元経済界が、久しぶりに明るいムードに包まれている。ホンダが2004年11月、米国で十か所目となる工場の建設を同郡に建設すると発表したのだ。

 計画では、1億ドル(約104億円)を投し、二〇〇六年までに自動変速機工場を作る計画で、約四百人の雇用を予定する。

日本車の販売増大を受けて、トヨタ自動車や日産自動車など他メーカーも新工場の建設や設備増強を急ピッチで進めており、部品メーカーの進出も活発化している。

米国ホンダの近藤広一社長は「顧客の近くで生産するのが基本戦略だ」として、日米貿易摩擦が沈静化した現状でも生産の現地化を進める構えを強調する。

 自動車など伝統的に日本が強い業種にとどまらず、食品や薬品関連などの分野での進出も増えており、キノコ生産大手のホクト(長野市)は「ダイエットブーム」に乗って2006年までに米ロサンゼルスにブナシメジなどの工場を建設する。

 米商務省が昨年九月に発表した日本企業による対米直接投資の総額は、2003年に前年比5・8%増の1593億ドル(約16兆6000億円)と、二年連続で増え、過去最大だった2000年とほぼ同水準となった。国別順位ではイギリスに次ぐ二位で、投資額は中国の五百倍に達する。

 日本企業の対米投資は、1985年のプラザ合意後の円高・ドル安や九五年の日米自動車・部品協議合意などを受けて拡大を続けた。

しかし、2000年前後には、IT(情報技術)バブル崩壊後や日本企業のリストラによって投資額が頭打ちになり、電機業界などが米での現地生産から撤退する動きも強まった。

 最近の投資機運の回復には、日本企業の業績改善や円高・ドル安の進行も背景にあると見られている。だが、韓国の自動車・電機メーカーなどの対米進出も拡大しており、「日本の製造業が米国で一人勝ちした七〇、八〇年代に比べて競争環境は厳しい」(電機大手)との見方もある。

 各州では、日本企業の誘致合戦も盛り上がっている。日本企業による州別投資額一位のカリフォルニア州のアーノルド・シュワルツェネッガー知事は2004年11月中旬に来日、同州に進出しているトヨタやソニーを訪れて、投資の拡大を訴えた。

同二位のオハイオ州のボブ・タフト知事も九月下旬に来日し、バイオなど成長分野の企業に進出を呼びかけた。

 ジョージア州の地元紙によると、同州政府はホンダ新工場の誘致にあたって、合計1370万ドル(約14億円)の税の減免を提示したという。

工場用地購入費の一部負担や道路整備、労働者の訓練なども引き受けたとされており、日本企業の進出に対する熱意の強さにも注目が集まっている。



       
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グーグルと仏AFPが著作権侵害訴訟で和解(2007年4月)

仏AFP通信は2007年4月6日、米インターネット検索最大手グーグルがAFPのニュースをグーグルのサイトに無断掲載するのは著作権侵害だと訴えた裁判で、グーグル側と和解することで合意したと発表した。

 和解では、AFPは訴えを取り下げ、グーグルはAFPと新たに結んだ契約に基づいて、記事の掲載を再開する。和解の条件は明らかにしていない。

 グーグルは世界中の報道機関がネット上に流す記事の見出しや冒頭部分、写真を無料のニュース用サイトに表示している。

これについて、有料で契約者にニュースを配信するAFPは2005年3月、グーグルを相手取り、損害賠償金など約21億円を求めて米ワシントンの連邦地裁に提訴した。その後、グーグルはAFPの記事の掲載を取りやめていた。





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